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こんにちは、百華です。
 
近現代に活躍した日本の詩人・歌人および俳人を、代表作品とともに一挙紹介していきます!
 
 
詩や短歌,俳句は韻文(いんぶん)芸術といって、一定の韻律をもつ文章です。
 
ちなみに、これに対する散文は韻律や定型にとらわれずに書かれた文章のことで、小説や評論などが含まれます。

 

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詩人編


 
「詩」というと、明治時代までは漢詩を指していました。
 
日本独自の韻文としては、すでに和歌(5・7・5・7・7)や俳句(5・7・5)などがありました。
 
明治のはじめ、「詩」=漢詩に対して、日本語による詩=「新体詩」をつくろうという動きがおこり、エリート層の間に定着します。現代の私たちが「詩」と聞いてイメージするものはおそらくこれです。
 
以降、「詩」は新体詩のことを指すようになりました。

 

・森鷗外(1862~1922年)

ドイツ留学から帰ったのち、西洋の詩を翻訳
浪漫的な作風
『於母影(おもかげ)』(1889年)
『即興詩人』(1902年)

 
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・北村透谷(きたむら とうこく)(1868~1894年)

「恋愛」の定義に一役買った評論家
『蓬莱曲(ほうらいきょく)』(1891年)

 

・島崎藤村(しまざき とうそん)(1872~1943年)

小説家でもある
『若菜集』(1897年)

「初恋」(『若菜集』)
 
まだあげ初(そ)めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛(はなぐし)の
花ある君と思ひけり

 

・蒲原有明(かんばら ありあけ)(1876~1952年)

浪漫的な作風
象徴詩…はっきりと詠うのではなく、暗示的な手法をつかう
『有明集』(1908年)

 

・上田敏(うえだ びん)(1874~1916年)

象徴詩のさきがけ
『海潮音(かいちょうおん)』(1905年)

 

・北原白秋(きたはら はくしゅう)(1885~1942年)

異国趣味の詩
『邪宗門(じゃしゅうもん)』(1909年)

「空に真赤な」(『邪宗門』)
 
空に真赤な雲のいろ。
玻璃に真赤な酒のいろ。
なんでこの身が悲しかろ。
空に真赤な雲のいろ。

 

・高村光太郎(たかむら こうたろう)(1883~1956年)

智恵子と結婚後、人道主義的な作風に
『道程』(1914年)
『智恵子抄』(1941年)
 

「道程」(『道程』)
 
僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る

 

・萩原朔太郎(はぎわら さくたろう)(1886~1942年)

口語自由詩…日常の話し言葉を用いた詩
近代詩の完成!
『月に吠える』(1917年)
『青猫』(1923年)

「猫」(『月に吠える』)
 
まつくろけの猫が二疋、
なやましいよるの家根のうへで、
ぴんとたてた尻尾のさきから、
糸のやうなみかづきがかすんでゐる。
『おわあ、こんばんは』
『おわあ、こんばんは』
『おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ』
『おわああ、ここの家の主人は病気です』

 

・室生犀星(むろう さいせい)(1889~1962年)

朔太郎の親友
『抒情小曲集』(1918年)

「小景異情」(『抒情小曲集』)
 
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの

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・佐藤春夫(1892~1964年)

のちに小説を手がける
『殉情詩集』(1921年)

「秋刀魚の歌」(『殉情詩集』)
 
さんま、さんま、
さんま苦いか塩つぱいか

 

・宮沢賢治(1896~1933年)

童話作家としても有名
『春と修羅』(1924年)
「雨ニモ負ケズ」(1931年)

【関連記事】  

・三好達治(みよし たつじ)(1900~1964年)

萩原朔太郎の弟子
新散文詩をめざす
『測量船』(1930年)

 

・中原中也(なかはら ちゅうや)(1907~1937年)

フランスの詩人・ランボーに心酔
『山羊(やぎ)の歌』(1934年)
『在りし日の歌』(1938年)

「汚れつちまつた悲しみに……」(『山羊の歌』)
 
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

 

・立原道造(たちはら みちぞう)(1914~1939年)

中原中也の同人仲間
十四行詩=ソネットの形式で詠む
『萱草(わすれぐさ)に寄す』(1937年)

 

・草野心平(くさの しんぺい)(1903~1988年)

蛙をうたった作品が多い
『第百階級』(1928年)
『蛙』(1938年)

 

・金子光晴(かねこ みつはる)(1895~1975年)

戦時下に弾圧を受けた
『落下傘(らっかさん)』(1948年)

 

・小野十三郎(おの とおざぶろう)(1903~1996年)

戦争批判を主題とする
『大阪』(1939年)

 

谷川俊太郎(1931年~)

読みやすくリズムの良い詩
『二十億光年の孤独』(1952年)

 

・石垣りん(1920~2004年)

生活に根ざした詩
『表札など』(1968年)

 

・相田みつを(1924~1991年)

シンプルで温かい詩
『にんげんだもの』(1984年)

 

歌人編


 
現在、5・7・5・7・7の型をもつ韻文のなかでも明治時代以前のものは和歌と呼ばれ、短歌とは区別されています。
 
短歌の革新運動は、落合直文(おちあい なおぶみ)が浅香社(あさかしゃ)をつくった明治中期頃に始まったとされます。
 
新しい近代短歌を確立させたのは、彼の門下生である与謝野鉄幹・晶子夫妻でした。

【関連記事】  

・与謝野鉄幹(よさの てっかん)(1873~1935年)

新詩社(しんししゃ)を結成
進歩的・浪漫的な文学雑誌『明星(みょうじょう)』を創刊
『東西南北』(1896年)

 

・与謝野晶子(よさの あきこ)(1878~1942年)

官能的かつ大胆な恋愛歌が多い
『みだれ髪』(1901年)

清水へ 祇園をよぎる 桜月夜 こよひ逢ふ人 みなうつくしき
 
その子二十(はたち) 櫛(くし)にながるる 黒髪の おごりの春の うつくしきかな

 

・正岡子規(まさおか しき)(1867~1902年)

「歌よみに与ふる書」で『古今集』を批判し、『万葉集』の素朴さを愛する
『竹の里歌(たけのさとうた)』(1904年)

くれなゐの 二尺伸びたる 薔薇の芽の 針やはらかに 春雨のふる

 

・伊藤左千夫(いとう さちお)(1864~1913年)

正岡子規の門下生
写実的な短歌をめざし、雑誌『アララギ』を創刊
小説『菊の墓』(1906年)の作者

 

・長塚節(ながつか たかし)(1879~1915年)

子規の門下生
『鍼(はり)の如く』(1914年)

 

・窪田空穂(くぼた うつぼ)(1877~1967年)

元『明星』の歌人
『まひる野』(1905年)

 

・石川啄木(いしかわ たくぼく)(1886~1912年)

元『明星』の生活派歌人
借金をふみたおす常習犯
『一握の砂』(1910年)
『悲しき玩具』(1912年)

たはむれに 母を背負ひて そのあまり 軽きに泣きて 三歩あゆまず
 
はたらけど はたらけど猶 わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る

 

・若山牧水(わかやま ぼくすい)(1885~1928年)

旅と海と酒を愛した歌人
『海の声』(1908年)

白鳥(しらとり)は 哀(かな)しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ

 

・前田夕暮(まえだ ゆうぐれ)(1883~1951年)

牧水とならぶ自然主義歌人
『収穫』(1910年)

向日葵(ひまわり)は 金の油を 身にあびて ゆらりと高し 日のちひささよ

 

・吉井勇(よしい いさむ)(1886~1960年)

享楽的な作風
『酒ほがひ』(1910年)

かにかくに 祇園は恋し 寝(ぬ)るときも 枕の下を 水のながるる

 

・北原白秋(1885~1942年)

耽美主義のシティボーイ
『桐の花』(1913年)

春の鳥 な鳴きそ鳴きそ あかあかと 外(と)の面(も)の草に 日の入る夕(ゆふべ)

 

・斎藤茂吉(さいとう もきち)(1882~1953年)

『アララギ』の歌人で写生を重んじる
対象と自己との一体化をめざす=「実相観入(じっそうかんにゅう)」
『赤光(しゃっこう)』(1913年)
『あらたま』(1921年)

 

・木下利玄(きのした りげん)(1886~1925年)

反アララギ派
雑誌『日光』の同人
『一路』(1924年)

 

・釈迢空(しゃく ちょうくう)(1887~1953年)

本名は折口信夫(おりくち しのぶ)
アララギ派歌人
『古代感愛集(こだいかんあいしゅう)』(1947年)

 

・馬場あき子(1928年~)

戦後に活躍
『早笛(はやぶえ)』(1955年)

 

・俵万智(たわら まち)(1962年~)

若者の支持を得る
『サラダ記念日』(1987年)

 

俳人編


 

・正岡子規(1867~1902年)

旧派の俳句を批判し、写実を重んじる
雑誌『ホトトギス』を創刊
『病牀六尺(びょうしょうろくしゃく)』(1902年)

いくたびも雪の深さを尋ねけり

【関連記事】  

・河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)(1873~1937年)

子規の門下生
新傾向俳句運動をおこした

赤い椿白い椿と落ちにけり

 

・高浜虚子(たかはま きょし)(1874~1959年)

『ホトトギス』の継承者
碧梧桐たちと論争し、定型句を守ろうとする

桐一葉日当たりながら落ちにけり

 

・荻原井泉水(おぎわら せいせんすい)(1884~1976年)

自由律俳句をうみだした

月光ほろほろ風鈴にたはむれ

 

・種田山頭火(たねだ さんとうか)(1882~1940年)

禅僧になり、放浪の旅に出る
自由律俳句をうけつぐ

分け入つても分け入つても青い山

 

・尾崎放哉(おざき ほうさい)(1885~1926年)

孤高の俳人
口語の自由律俳句を詠む

こんなよい月を一人で見て寝る
 
咳をしても一人

 

・水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)(1892~1981年)

虚子に反発し、新興俳句運動をおこす
叙情性を重視した
『葛飾』(1930年)

 

・山口誓子(やまぐち せいし)(1901~1994年)

新興俳句運動をおこした一人

海に出て木枯し帰るところなし

 

・川端茅舎(かわばた ぼうしゃ)(1897~1941年)

虚子に師事する
美意識の高い作品で有名

ひらひらと月光降りぬ貝割菜(かひわりな)

 

おわりに


 
以上、近現代の日本で活躍した詩人・歌人・俳人たちでした。
 
ここで紹介した作品はほんの一部なので、気になったものがあればぜひ本文全てに目を通してみてください。
 
作品の時代背景を探ったり、声に出して響きを味わったりすることで、韻文芸術をより身近に感じられると思いますよ(^_-)