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今の日本では、明治時代からを近代といいます。
 
 
今回は近代~現代の文学史の流れと、代表作を紹介していきますよ。

 
 

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近現代文学史の流れ&代表作

①明治初期:近代のあけぼの

 

 
江戸時代(近世)は、滑稽本(こっけいぼん)や談義本、人情本など大衆向けの通俗小説、いわゆる戯作文学(げさくぶんがく)がまだ人気のある時代でした。
古典のマネやダジャレ、権力への風刺がさかんで、大衆的な作品が多く書かれます。分かりやすさはピカイチかもしれません。
仮名垣魯文(かながき ろぶん)……『安愚楽鍋』(あぐらなべ) 1871年
 
 
これに対し、明治維新の文明開化の風潮のなか、海外の思想・文化が紹介される啓蒙思想がおこりました。
福沢諭吉……『学問のすすめ』1873年
 
 
日本近代小説の実質的なはじまりといわれるのが、坪内逍遥(つぼうち しょうよう)の評論です。
 
彼はそれまでの小説のありかたに反抗し、世の中のことを客観的にかこうという写実主義を主張しました。
坪内逍遥……『小説神髄』(『しょうせつしんずい』) 1885年
 
 
この理論を上手にとりこんで、現実の奥にひそむ人間の心理をあばいたのが二葉亭四迷(ふたばてい しめい)です。
言文一致体(=話し言葉と書き言葉を統一する)の作品を書いたのは、彼がはじめてでした。
二葉亭四迷……『浮雲』1887年

 
 

②明治中期:森鷗外&樋口一葉らの登場

 

 
 
ドイツ留学から帰ってきた森鴎外が、浪漫(ろうまん)主義文学者として活動をはじめます。外国作品の翻訳もしました。
森鷗外……『即興詩人』『舞姫』1890年~
 
 
樋口一葉は多くの文豪に認められた美しき女性作家ですが、若くして結核で世を去りました。
樋口一葉……『たけくらべ』『にごりえ』1895年~
 
 
尾崎紅葉は戯作の再評価をこころみ、女性的なやさしい文章をかきました。彼のつくった硯友社(けんゆうしゃ)は、文壇形成のきっかけになります。
尾崎紅葉……『多情多恨』『金色夜叉』1896年~
 
 
それに対して、幸田露伴(こうだ ろはん)は漢語をつかった力強い文体で人気を得ます。2人まとめて「紅露」(「こうろ」)と称されました。
幸田露伴……『五重塔』1891年
 
 
※これらの作品は、まだ私たちにとって読みにくい文章でかかれています……。
 
 言文一致への道のりは意外に遠かったのです。
 
 
その他に、押さえておきたい作家と代表作は以下のとおりです。
泉鏡花……『外科室』1895年 『高野聖』1900年
国木田独歩……『武蔵野』1901年
与謝野晶子……『みだれ髪』1901年
 
 
与謝野晶子は歌人です。日露戦争に出兵する弟を想って「君死に給ふことなかれ」と詠んだのも有名です。
 
 
【俳句編】
正岡子規ら「ホトトギス」派 「写生」重視
VS
与謝野鉄幹・斎藤茂吉ら「明星」・「アララギ」派 浪漫主義

 
 

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③明治後期:夏目漱石&自然主義&耽美主義の登場

 

 
日露戦争(1904年~)のあと、現実を尊ぶ自然主義が大流行しました。
自己の内面を告白(ほとんど暴露…)する私小説にもつながります。
 
島崎藤村……『破戒』1906年、『春』1908年
田山花袋……『蒲団』1907年、『田舎教師』1909年

 
 
イギリス留学を終えた夏目漱石はこの動きに同調せず、小説をあくまでフィクションととらえました。
 
漱石と鴎外は、高踏派(こうとうは)もしくは余裕派の文学といわれます。
 
夏目漱石……『吾輩は猫である』1905年、『坊っちゃん』、『草枕』1906年、『三四郎』、『それから』1908年~
森鷗外……『青年』1910年、『雁』1911年

 
 
彼らの影響をうけ、自然主義にも反抗したあたらしい作家たちが、永井荷風を祖とする耽美派です。
永井荷風……『あめりか物語』1908年
谷崎潤一郎……『刺青(しせい)』1910年

 
 
詩や短歌で活躍した人は以下のとおりです。
 
北原白秋……『邪宗門(『じゃしゅうもん)』1909年
石川啄木……『一握の砂』1910年

 
 

④大正期:白樺派&新思潮派の登場

 

 
大正時代は、1912年から1926年までの14年という短い期間でした。しかし、文壇における動きはめまぐるしいです。
なかでも芥川龍之介は、大正期を象徴する作家といえるでしょう。
 
 
夏目漱石と森鴎外は大正時代になってからも活躍しています。
 
夏目漱石……『こころ』1913年、『明暗』1916年
森鷗外 ……『阿部一族』1913年、『高瀬舟』1916年
 
 
そして、反自然主義の若い作家たちが、耽美派・白樺派(しらかばは)・新思潮派をつくりました。
 
 
《耽美派➔美を追求した芸術家たち》
佐藤春夫……『田園の憂鬱』1918年
 
《白樺派➔自己肯定の文学,お坊ちゃんの集まり》
志賀直哉……『和解』1917年、『暗夜行路』1921年
武者小路実篤……『友情』1919年
有島武郎……『或る女』1919年

 
《新思潮派➔小説を入念に構想する知性派たち》
芥川龍之介……『羅生門』1915年、『鼻』1916年
菊池寛……『恩讐の彼方に』1919年

 
 
また、広津和郎(ひろつ かずお)、葛西善三(かさい ぜんぞう)などは、彼らとは真逆の方向をいく私小説作家でした。
 
 
 
1923年に起こった関東大震災は、文学にも大きな影響を与えました。社会への不安や不景気の苦しさが、「社会の革命」をめざすプロレタリア文学(⑤で紹介)につながるのです。
 
 
「文学の革命」をめざした新感覚派も登場しました。
 
《新感覚派➔あたらしい表現方法をとりいれたグループ》
横光利一(よこみつ りいち)……『蠅』1923年
川端康成……『伊豆の踊子』1926年

 
 
【詩・短歌編】
口語自由詩
高村光太郎(たかむら こうたろう)……『道程』1915年
萩原朔太郎(はぎわら さくたろう)……『月に吠える』1917年
室生犀星(むろう さいせい)……『抒情小曲集』1918年

 
 
その他、詩や童話で独特な世界観を示したのが宮沢賢治です。
宮沢賢治……『春と修羅』1924年
 
 
【俳句編】
正岡子規の弟子だった、河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)と、高浜虚子(たかはま きょし)がこの時代を代表する俳人です。
 
 
他には、それまでの俳句のルールを破る自由律俳句が出てきました(自由な人たち)。
荻原井泉水 (おぎわら せいせんすい)、 尾崎放哉(おざき ほうさい)

 
 

⑤昭和初期:プロレタリア文学&心境小説&新感覚派

 

 
昭和初期に1番大きな盛り上がりをみせたのが、プロレタリア文学です。
 
当時の不景気や経済恐慌のなか、労働者のきびしい現実と革命への意識がえがかれました。
小林多喜二(こばやし たきじ)……『蟹工船』1929年
葉山嘉樹(はやま よしき)……『セメント樽の中の手紙』1926年

 
 
このプロレタリア文学に共感できない作家もいました。
井伏鱒二(いぶせ ますじ)……『山椒魚』1929年
 
 
見たものをそのままかき、作者の心境をおりこんだ心境小説もあります。
志賀直哉 ……『城の崎にて』1917年
梶井基次郎……『冬の蠅』1928年

 
 

⑥昭和中期:戦時下の文学と無頼派

 

 
1931年の満州事変以来、戦意をあげるための戦争文学(国策文学)が登場します。
火野葦平(ひの あしへい)……『麦と兵隊』 1938年
 
 
しかし、もちろんそれに異をとなえ、小説を芸術として大事にする作家たちもいました。
太宰治……『富嶽百景』1939年、『走れメロス』1940年
中島敦……『山月記』1942年
谷崎潤一郎……『細雪』1943年~

 
 
戦争が終わると、混乱状態のなかで無頼派(ぶらいは)が生まれ、既成のモラルや権力への反抗を示しました。
太宰治……『斜陽』1947年 『人間失格』1948年
織田作之助……『可能性の文学』1946年
坂口安吾……『堕落論』1946年

 
 
戦争終結から少し後になると、多くの新人たちが登場します。戦場で死と向きあったり、戦後すぐの暗い状況を生きていた作家たちです。
彼らは第二次戦後派と呼ばれます。
大岡昇平……『俘虜紀(ふりょき)』、『野火(のび)』1948年
安部公房 ……『壁』1951年
三島由紀夫……『潮騒』1954年、『金閣寺』1956年

 
 

⑦昭和後期~:第三の新人,あたらしい文学

 

 
戦後の混乱が落ち着いたころに活動した作家は、戦後派とは異なる性質を持っていました。
 
第三の新人といわれた、安岡章太郎(やすおか しょうたろう),吉行淳之介(よしゆき じゅんのすけ),遠藤周作らが、これにあたります。
 
 
また、戦争を知らない世代の若者による活動もはじまりました。
石原慎太郎……『太陽の季節』1955年
大江健三郎……『死者の驕り』1957年

 
 
1960年代になると、出版ジャーナリズムが発達し、大衆文学の質があがります。
 
純文学の大衆化がすすんだと同時に、松本清張らが社会派推理小説というジャンルをつくりました。
井上靖(いのうえ やすし)……『天平の甍』1957年
水上勉(みずかみ つとむ)……『越前竹人形』1963年
司馬遼太郎……『竜馬がゆく』1962年
松本清張……『点と線』1957年

 
 
 
★この後、筒井康隆村上春樹らが登場します。
 
 
時代は平成,そして令和へと変わりましたね。
 
明治時代からの流れが、こうして今につながっているのです。
 
そう思うと、昔の作家たちをより身近に感じることができそうですね。
 
 
以上、日本近代文学史でした♪

 
 
【 ライター:百華 】