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こんにちは、このかです。
 
今回は、【京都の俳句】シリーズ、場所は京都市北部の大原と鞍馬で作られた俳句を、ご紹介します。
 
私の大原の印象は、「田舎だなあー。」なのですが、三千院、寂光院など見どころもあります。田舎らしさが「わびさび」に通じるのか、歌人・俳人たちが、たくさん歌や俳句を詠んでいます。
 
鞍馬は、その奥の貴船を含めて、強力なパワースポットです。
趣き満点、魔界への入り口ですよ。(._.)
そして、石段が多いので、運動不足解消になります。
 

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「大原」を詠んだ京の俳句

 
 
大原は、京都駅からバスで1時間ほどの、京都北部にあります。
あ、でも、実際に行く場合は、京都駅から地下鉄で国際会館駅まで北上して、そこからバスに乗るのがおススメです。
 
大原は寂光院三千院で有名な、紅葉の名所です。
 
昔から残る日本の自然の趣が感じられて、素敵ですよ。
どれぐらいのどかかと言いますと、こんな感じです。
京都市街とは全く違う、まるで日本昔話の里山のような風景ですね。

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「わびさび」を感じる場所なので、歌人・俳人には人気です。
古くは、私の大好きな西行法師や源実朝も、和歌に詠んでいます。

 

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(1)大原や 蝶の出て舞ふ 朧月(おぼろづき)

 
内藤丈草
 
【季語】朧月(おぼろづき)
 
 
内藤丈草(じょうそう)は、松尾芭蕉の門人の1人で、素晴らしい俳人です。
 
彼は、もともと尾張の下級藩士の子として生まれたのですが、病弱だったため家督を弟に譲り、芭蕉の弟子になりました。
 
向井去来、服部嵐雪らとともに、芭蕉の弟子の中で最も優秀な10人「蕉門十哲」に選ばれています。
 
彼は、芭蕉の「寂び(さび)」を最もよく受け継ぐ門人といわれています。
 
この俳句は、朧月夜に蝶がひらひら舞う美しい様子を詠んでいますが、おそらく辺りに人の気配はありません。見ているのは、丈草のみですね。
 
この「寂び」の表現が、たまらなく素敵なのでした!

(2)大原や 躑躅(つつじ)の中に 蔵建て

 
与謝蕪村
 
【季語】躑躅(つつじ)・夏
 

 
 

(3)大原や 小町が果の 夏花つみ

 
小林一茶
 
【季語】夏花・夏
 
この俳句は、一見、かわいらしい娘が夏花を摘んでいるのかしらと思いますが、なんと前書は「題老婆」です。
意外と深い意味があったのですね。
 
この大原は、絶世の美女・小野小町が晩年を過ごした地といわれているのです。
小野小町は、謎のベールに包まれた人なので、真実はわかりません。
「能」などでは、最後は貧しい哀れな老婆になり果てた、というストーリーが主流です。
 
その言い伝えを踏まえて、一茶が大原に来たとき、夏花をつんでいる老婆を見て、思いついた俳句なのでした。
 
「小町が果て」というのが、「なれの果て」という感じで、ひどいなーとも思えます。( ̄▽ ̄)
 

 

(4)大原や 黒木の中の 梅の花

 
正岡子規
 
【季語】梅・春

 

(5)大原や 雨の中より 時鳥

 
正岡子規
 
【季語】時鳥(ホトトギス)・夏

 

 

(6)ひろひたる 寂光院の 紅葉かな

 
山口青邨(やまぐち せいそん)
 
【季語】紅葉・秋

 

 
「みちのくの俳人」山口青邨(せいそん)
 
岩手県出身の彼は、高浜虚子の弟子でした。
 
そして、東京帝国大学を卒業した鉱山学者でした。
工学博士として東大教授を勤めながら、俳人をしていたというユニークな経歴の人なのです。
 
理系なんだか、文系なんだか、よくわからん、すごい兼業ですね。
しかも、どちらも一流です。
 
「岩手出身で鉱物好き」というところが、宮沢賢治に似ていて面白いです。
 
ホトトギス派を代表する俳人として、俳句の才能も高く評価されていました。


 

「鞍馬」を詠んだ京の俳句

 

 

(1)苗代(なわしろ)や 鞍馬の桜 ちりにけり

 
与謝蕪村
 
【季語】苗代(なわしろ)・春
 
「季語は桜じゃないの?」と思いますが、この俳句の季語は「苗代」(なわしろ)なのです。
 
春といっても晩春ですね。
苗代に切れ字がついていることから、ここを強調したいのがわかります。

 

 

(2)牛若の 鞍馬上るや 五月雨

 
正岡子規
 
【季語】五月雨・夏

 


 

(3)夕焼けて 空の三日月 鞍馬路

 
飯田 蛇笏
 
【季語】秋の宿・秋
 
 
飯田 蛇笏(いいだ だこつ)は、高浜虚子に師事した山梨県の俳人です。
 
「格調の高い」というのが彼の俳句の特徴で、大正時代「ホトトギス」隆盛期に活躍しました。
 
芥川龍之介が彼の句を好み、交流があったと知られています。

 

(4)火祭や 鞍馬も奥の 鉾の宿

 
山本青瓢
 
【季語】火祭り・秋
 
 
山本青瓢は、そんなに名は知られていませんが、鞍馬出身でこの地を愛した俳人でした。
 
鞍馬にある「由岐神社」の境内を出てすぐ左手に、この句が書かれた山本青瓢の句碑が立てられています。
 
碑面は苔むしていて、はっきり読めなくなっていますが、かたわらに駒札が設置されています。この句碑は、彼の名声を称えて後世に残すために「有志一同」で建立されたものです。
 
地元民にも愛されていた俳人ということで、紹介させていただきました。

 
 

 

おわりに

 

 
大原や鞍馬のような場所では、自然の情景をそのまま(写実的に)詠んだり、「寂び」を表現すると素敵だと思います。
 
俳句の「寂び」とは、芭蕉の「奥の細道」に集録されている句のような物静かな状態を指します。
 
「寂びれた空間に動く題材が一つ、それを自分一人が孤独(静まり返った)の中で見ている瞬間」をとらえた俳句です。
 
場所を句に入れる場合は、
 
大原・寂光院・三千院
鞍馬・鞍馬寺・鞍馬山・由岐神社・魔王殿・貴船・貴船神社・・・

 
貴船からの連想で、夏は「川床」を季語に入れるのもおススメです。
 
いろいろ考えられそうですね。(*’▽’)
 
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