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こんにちは。
 
 
9月9日は五節句の1つ「重陽の節供」、別名「菊の節句」と呼ばれる日です。
 
 
あとの4つは、1月7日の七草の節句、3月3日の桃の節句、5月5日の菖蒲の節句、7月7日の笹の節句です。
 
 
七草、桃、菖蒲(しょうぶ)、笹(ささ)、菊、これらの植物はみんな古くからとても縁起のよいもの、厄除けになるものと考えられてきました。
 
 
菊は古代中国で「千代見草(ちよみくさ)」などとと言われ、邪気を祓い長寿の効能があると信じられていたのです。それが日本に伝わり、同じように、厄払いや長寿祈願に用いられたのでした。
 
 
生け花ではこの時期、様々な大きさや色の「菊の一種活け」をするんですよ。
 
 
菊は法事やお葬式に用いられることが多いので、一般的に避けられることもありますが、本来とてもおめでたい花なのです。
 
 
今回は、そんな「菊」を詠んだ俳句をご紹介します。

 
 

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「菊」は長寿を願う重陽の節句の象徴

 

 
江戸時代中期になると、菊の栽培・品種改良が盛んになりました。大きな菊を育てて美しさを競うようになったのです。
 
 
でも、蕪村の子狐と野菊の俳句や嵐雪の最後にあげた俳句のように、素朴な「菊」を好む人も多かったでしょう。
 
 
「秋」の風情だけでなく、重陽の節句を詠んだ俳句が多いのも特徴です。

 
 

(1)松尾芭蕉の「菊」の俳句

 

 
言わずと知れた「俳聖」松尾芭蕉。
「寂び」の俳句がすごく好き・・・・なのです。
 
 
芭蕉については、⇒★こちらでいろいろお伝えしています。
 
 
草の戸や 日暮れてくれし 菊の酒
 
十六夜の いづれか今朝に 残る菊
 
山中や 菊は手折らぬ 湯の匂ひ
 
菊の香や 奈良には 古き仏たち
 
早く咲け 九日も近し 菊の花

   ↑
9月9日の「重陽の節句」までもうあと少し。早く咲かないと菊の節句に間に合わないよとあせる気持ちが伝わりますね。
 
「奥の細道」の旅の道中、大垣藩士の浅井左柳亭で開いた歌仙発句です。
 
 
芭蕉や蕪村の俳句(俳諧)はやはり素敵ですね。雅です。

 
 

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(2)与謝蕪村の「菊」の俳句

 

 
江戸三大俳諧師の1人与謝蕪村は、享保年間(18世紀前半)に大阪で生まれた芸術家です。
 
 
俳諧(俳句)はもちろんのこと、絵画の才能があり「俳画」を確立した人としても知られます。
 
 
いでさらば 投壺まいらせん 菊の花
 
子狐の 隠れ顔なる 野菊かな

     ↑
すごくかわいい好きな俳句です。
 
 
蕪村らしいまるでその光景が目に浮かぶような一句です。視点が写実的ですね。俳画を描いてほしいです。

 
 

(3)服部嵐雪の「菊」の俳句

 

 
「梅一輪 一輪ほどの あたたかさ」
このあまりにも有名な俳句で知られる服部嵐雪。
 
 
彼は芭蕉の弟子の中でも特に優れた「蕉門十哲(しょうもんじってつ)」の1人でした。
 
 
かくれ家や よめ菜の中に 残る菊
 
初菊や ほじろの頬の 白き程
 
山路経る こゝちや菊に えのき茸
 
黄菊白きく 其他の名は なくもかな

 
 

(4)文豪の「菊」の俳句

 

 
明治から昭和にかけての文豪たちも「菊」の俳句を残しています。
その中からいくつかご紹介します。
 
 
怪しさや 夕まぐれ来る 菊人形
(芥川龍之介)
 
菊の香や 故郷遠き 国ながら
(夏目漱石)
 
うは露も 御覧を経たり 今日の菊
(尾崎紅葉)
 
其中に 淵明と銘す 白き菊
(寺田寅彦)
 
吉日を えらむ弘めや 菊日和
(永井荷風)
 
たそがれて なまめく菊の けはひかな
(宮沢賢治)
 
 

(5)正岡子規の「菊」の俳句

 

 
近現代俳句の祖・正岡子規は生涯にたくさん俳句や短歌を残しています。
 
 
子規についてはこちらをどうぞ⇒正岡子規はこんな人♪
 
 
燈心の 如き白菊 咲きにけり
 
こともなげに 菊咲かせたる 小家哉
 
旗立てて 菊人形の 日和かな
 
かやふきの 細殿あれて 菊の花 菊
 
菊を見ず 菊人形を 見る人よ
 
しくるゝや 隣の小松 庵の菊
 
しくれして ねぢけぬ菊の 枝もなし
 
せわしなや 桔梗に来り 菊に去る
 
たまはるや 大盃の 菊の酒

 
 

(6)水原秋櫻子の「菊」の俳句

 

 
水原秋櫻子(しゅうおうし)、名前に「秋桜(コスモス)」が入って美しいですが、本名は水原豊という男性の俳人です。
 
 
高浜虚子に俳句を学んでいましたが、後に離反しました。
 
 
ホトトギス派の代表といわれた「ホトトギス四S(シイエス)」の1人です。「ホトトギス四S」は、水原秋櫻子、山口誓子、阿波野青畝、高野素十の4人ですよ。
 
 
わがいのち さびしく菊は 麗はしき
 
わがいのち 菊にむかひて しづかなる
 
嵯峨菊の 暮光も天に のぼりけり
 
菊日より 夜はまどかなる 月照りぬ
 
 
 

(7)飯田蛇笏の「菊」の俳句

 

 
飯田蛇笏は山梨県出身で、本名は飯田武治といいます。同じく俳人の飯田龍太は蛇笏の息子です。
 
 
白菊の しづくつめたし 花鋏
 
白菊の あしたゆふべに 古色あり
 
しほしほと かざられにけり 菊雛
 
夜風たつ 菊人形の からにしき
 
俳諧に つぐ闘菊や 西鶴忌
 
はつ菊や 大原女より 雁の文

 

 

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