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こんにちは。
日本の文学史はとても長い歴史を誇りますね。
長すぎて、何が何やらわかりにくくなることも……。
ですから、時代区分を知っておくことはとても役に立ちます。
今回は日本文学史の時代区分とそれぞれの特徴,代表作品を紹介します。
目次
簡単な時代区分
①上代(じょうだい):飛鳥・奈良時代(文学の誕生~794年頃)
②中古(ちゅうこ):平安時代 (794年~1192年)
③中世:鎌倉・南北朝・室町・戦国時代(1192年~1603年頃)
④近世:江戸時代(1603年~1867年)
⑤近代:明治・大正時代~戦争終結(1868年~1945年)
⑥現代:戦後~今(1945年~)
※①と②をあわせて古代(飛鳥時代~平安時代)ということがあります。
また、⑤と⑥をあわせて近現代とよぶこともあります。
①上代:飛鳥時代・奈良時代 (文学の誕生~794年頃)
有史から平安京に遷都される前までの文学を上代文学といいます。
神々を祭る場で発展した神話や伝承・祝詞(のりと)は、人々の口から口へ語り継がれてきたもの(=口承文学)だったので、きちんとしたかたちで残っていません。
しかし、日本が律令国家となった飛鳥時代(592年~)後期、はじめて神話や歴史が書物となりました!
◆特徴
統一国家ができるなかで誕生し、中央政府のもとにまとめられた作品が多いです。
◆代表作品
・『古事記』
712(和銅五)年成立。
時の女帝・元明天皇(げんめいてんのう)の命をうけて、太安万侶(おおのやすまろ)が記録。
天地創造から推古天皇までの記事があり、物語としても楽しめそうな内容です。
地方の伝承もとりいれつつ、皇室の正統性が強められています。
・『日本書紀』
720(養老四)年成立。
美貌の女帝・元正天皇(げんしょうてんのう)の命で編集されました。
神代から持統天皇までの記事があります。
大国だった唐に対抗すべく、日本がきちんとした国家だとアピールする歴史書で、編年体(「〇〇年、~~~」というかたち)&漢文体で書かれています。
・『風土記』
713年、編纂の命がくだりました。
諸国の地名の由来・産物・伝承などの記録で、『出雲国風土記』をふくめた5つが今にのこっています。
・『万葉集』
8世紀後半に成立した日本最古の歌集で、のちの世に絶大な影響をあたえました。
天皇から庶民までの多くの歌がおさまっています。歌風も様々ですが、自然をうたった素朴さが人気のヒケツらしいです。
②中古(ちゅうこ):平安時代 (794年~1192年)
平安京に都が移ってから鎌倉幕府ができるまでの約400年間を中古といいます。
◆特徴
中古文学をリードしたのは宮中の貴族や女房たちです。
400年の間には、ブームの移り変わりやかな文字(平仮名)の出現もありました。
◆代表作品
<漢詩集>
・『凌雲集(りょううんしゅう)』
漢文化の全盛期(国風暗黒時代)にできた、勅撰の漢詩集。
作者に嵯峨天皇・空海・菅原道真らがいます。
<和歌>
・『古今和歌集』
905(延喜五)年に成立した日本最古の勅撰和歌集。
紀貫之による「仮名序」が冒頭にあります。
和歌が漢詩にならぶ文化になれたのは『古今和歌集』のおかげです。
<物語>
・『竹取物語』
作者不明(エリート男性という説あり)。
現存する最古の物語作品です。
かな文字の登場により、こうした物語作品がうみだされました。今読んでもファンタジックで面白いです。
・『伊勢物語』
作者不明。10世紀中頃までに成立。
在原業平(在五中将)とおぼしき男性が主人公の歌物語。
「昔、男ありけり。」の書きだしからはじまります。
・『源氏物語』
紫式部による王朝文学。1008年頃にはほとんど完成していたようです(?)。
スケールの大きさ,リアリティともにピカイチで、後世に大きな影響をあたえました。
<日記・随筆>
・『土佐日記』
紀貫之作。
かな文字で書かれ、日記文学のさきがけといわれます。
・『蜻蛉日記(かげろうにっき)』
藤原道綱の母作。藤原兼家(=道長のパパ)の妻でもある女性です。
21年間にわたる結婚生活を記録したもので、兼家の愚痴(?)を書くだけでなく、自分の体験から真実をみちびこうとする姿勢がうかがえます。
・『枕草子』
清少納言による随筆で、1001年頃に成立。
はなやかな内容ですが、仕えていた中宮・定子の没落後に書かれたと考えるとせつないです。
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③中世:鎌倉・南北朝・室町・戦国時代 (1192年~1603年頃)
鎌倉幕府がひらかれてから徳川家康が天下統一するまでの約400年間を、中世とよびます。
◆特徴
武士の台頭と庶民社会の成長にともなって、様々なジャンルの文芸がさかえました。
◆代表作品
<和歌>
・『新古今和歌集』
1201年、後鳥羽院が藤原定家・家隆ら6名に勅命を出し、4年後に完成しました。
実際には、院も編纂にガッツリたずさわっていたようです。
<随筆>
・『方丈記』
鴨長明作,1212年に成立。
自身の人生やせわしない世の中の様子をとらえ、無常観をうたいあげます。
・『徒然草』
吉田兼好(兼好法師)作,1331年頃に成立。
作者の高い観察力がうかがえる作品です。『方丈記』とならんで優れた隠者文学と称されます。
<日記文学>
・『とはずがたり』
作者は、後深草院(1243~1304年)の後宮にいた二条という女性。1313年までに成立。
宮中での愛欲生活が赤裸々に(?)描かれますが、後半では修行の旅に出ます。罪の意識があまりなく、なんやかんやモテモテなヒロインにびっくり。
<軍記物語>
・『平家物語』
13世紀半ばに成立(諸説あり)。
無常観にもとづきながら、平家一門の栄華と没落を描きます。迫力ある戦のシーンや様々な人間ドラマがみどころ。
たくさんの諸本があり、琵琶法師による語りもそのひとつです。
・『太平記』
14世紀半ばに成立。作者不明。
南北朝の争乱などが取りあげられています。
<能>
庶民のくらしと結びつく猿楽・田楽を発達させ、世阿弥によって完成した芸能。
古典文学や民間伝承をもとにした優美なものが多いです。
<連歌>
和歌の上の句と下の句をそれぞれ別の人が詠んで楽しむ文芸。
鎌倉時代、和歌の余興として貴族たちに広まりました。
<御伽草子>
中世後期、広い読者層を意識してつくられた物語。
『一寸法師』『物くさ太郎』などの話があり、のちの仮名草子や浮世草子につながります。
④近世:江戸時代 (1603年~1867年)
江戸幕府がひらかれてから大政奉還までの泰平の時代が近世です。
◆特徴
教育の質があがり印刷術(出版業)も発達して、庶民(町人)による文学が目立ってきました。
また、上方(京都・大阪)だけでなく江戸も繁栄し、それぞれの地方で文化が爛熟しました。
18世紀半ば(1750年~)頃を境に、上方中心の元禄文学と、江戸中心の化政文学にわけると理解しやすいでしょう。
元禄の代表は井原西鶴・近松門左衛門ら,
化政の代表は十返舎一九・式亭三馬・曲亭馬琴・為永春水らです。
◆代表作品
<浮世草子>……当時の風俗・人情を描く
・『好色一代男』
井原西鶴作,1682年刊。
古典のパロディをもりこみつつ、町人の享楽的な生活を描きました。
<紀行文>
・『奥の細道』
1689年、松尾芭蕉が東北・北陸地方を旅したときの作品。
<読本(よみほん)>……絵本や芝居に対し、文を読ませるのを目的とした本
・『南総里見八犬伝』
19世紀前半、曲亭馬琴が28年かけてつくった大長編。
波乱万丈なストーリーで多くの読者を獲得。
<人情本>……ちょっと写実的な恋愛小説
・『春色梅児誉美(しゅんしょくうめごよみ)』
為永春水作。
なかなかきわどい描写があります(´艸`)。
<浄瑠璃>
語り・三味線・人形遣いによって成り立つ芸能。
大坂の近松門左衛門が『曾根崎心中』など多くの脚本を書きました。
<歌舞伎>
出雲の阿国(おくに)がはじめたとされます。
元禄期に発展し、対照的な名優として江戸の市川団十郎と上方の坂田藤十郎が人気でした。
<俳諧>
連歌から派生した文芸で、庶民の間にさかえました。
松尾芭蕉・与謝蕪村・小林一茶らが有名です。
<国学>……古代日本の精神を探求
・『古事記伝』
1798年、本居宣長作の注釈書。
⑤近代:明治・大正時代~戦争終結まで(1868年~1945年)
明治新政府がうまれた1868年からを近代といいます。
◆特徴
近世後期の文芸のなごりや、西洋思想の影響が大きいです。
日本文化史史上でもっとも小説がさかえた時期といえます。
近代になって小説の概念・地位も変わったのです。
【代表作家&作品】
森鷗外
・『舞姫』 1890年
・『山椒大夫』 1915年
与謝野晶子
・『みだれ髪』 1901年
夏目漱石
・『吾輩は猫である』 1905~06年
・『こころ』 1914年
島崎藤村
・『破戒』 1906年
・『夜明け前』 1929~35年
谷崎潤一郎
・『刺青』 1910年
・『細雪』 1943~48年
芥川龍之介
・『羅生門』 1915年
・『鼻』 1916年
萩原朔太郎
・『月に吠える』 1917年
志賀直哉
・『暗夜行路』 1921~37年
川端康成
・『伊豆の踊子』 1926年
・『雪国』 1935~37年
小林多喜二
・『蟹工船』 1929年
中島敦
・『山月記』 1942年
太宰治
・『人間失格』 1948年
三島由紀夫
・『金閣寺』 1956年
などなど……
⑥現代:戦後~
1989年、元号は平成,そして2019年からは令和となりました。
これからも、メディアの多様化にともなって新しい文学がでてきそうですね。
以上、時代区分や代表作品でした。
時期ごとに雰囲気が違っていて面白いです!
(参考文献:三好行雄 他編『原色 新日本文学史[増補版]』、文英堂、2018年)
【ライター:百華】
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