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日本最古の長編小説といわれる『源氏物語』。
この話は平安中期に、宮中で勤めていた紫式部の作品です。
 
紫式部は、一条天皇の中宮・彰子付きの女房(女官のようなもの)でした。
書いたのは、ちょうど藤原道長が摂政になる摂関政治の全盛期です。
 
スゴく有名なお話なのですが、54巻から成る長い長い話なので、一言でこんな話だよと言い表すのが難しい作品です。
 
『源氏物語』は、全部で3部に分かれていて、主人公・光源氏の生涯と彼の子供や孫の時代まで合わせると、約70年間にも渡る物語です。すごいですね。
 
登場人物は約500人!
和歌はそれ以上にたくさんたくさん詠まれています。( ̄▽ ̄)
 
恋愛長編なのですが、なぜか当時から男性陣からも人気が高く、後の時代にも、藤原定家や本居宣長など多くの作家・学者に研究されています。
 
現代語訳も、谷崎潤一郎・円地文子・瀬戸内寂聴・橋本治・田辺聖子など多くの人が書いています。
 
管理人のおすすめは、田辺聖子の『新・源氏物語』ですよ。
分かりやすくまとまっていると思います。
 
でも、一番のおススメは、漫画の『あさきゆめみし』です!
とにかく、入門者は、これから始めましょう(*’▽’)
 ↓↓

 
 
古典が苦手な人にお勧め!漫画「あさきゆめみし」で源氏物語がわかる
 
 
更級日記の作者は、平安の文学オタクです♪
今も昔も萌えは同じって事が、分かりますよ( ̄▽ ̄)

 ↓
「更級日記」の作者・菅原孝標女の「源氏物語」オタクを極めた少女時代
 

 
 
 

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主人公・光源氏のモデル


 
簡単に言うと、第1部は、主人公・光源氏の「女性遍歴」と「出世」を軸にした大長編宮廷絵巻になっています。
 
「光源氏」は帝の子なのに、生母「桐壺の更衣」の身分が低く、後ろ盾がいなかったので、「源」という姓を賜って臣下になります。
 
しかし、その後、煌びやかな女性遍歴を重ねながら、自らの才覚でのし上がり、最後には太政天皇という天皇に准ずる位につきます(娘を帝の后に!)。
 
要するに、モテモテ男の出世物語なんですね~♪
 
この最終的な立場が、藤原道長に似ているので、藤原道長がモデルじゃないかといわれることが多いです。
 
でも、この話は1人の人をモデルにしたような単純な話ではないんですよ。
 
紫式部は、それまでに生きた多くの人々の生き方を参考にして書いています。
 
例えば、「光源氏」は、権力と財力を得て「六条院」という御殿を建てます。
 
この六条院は、源融(=河原左大臣)の豪邸「河原院」によく似ているのです。
ほぼ同じ場所で、一般的な貴族の邸宅の約4倍という大きさも同じです。
 
融は嵯峨天皇の皇子で「源」という姓を賜り臣下になりました。
源融も光源氏のモデルの1人だったのは、間違いないでしょうね。
 
「河原院」は、融の死後荒れ果てて、夜になると融の幽霊が出るといううわさが立ちます。宇多天皇がある夜、そこで京極御息所と密会しているとき、源融の霊が出て御息所を失神させたという怪談が残っているのです。
 
「光源氏」が恋人の1人「夕顔」と寂れた屋敷で密会したとき、別の恋人(六条御息所)の生霊に「夕顔」が襲われて亡くなるというエピソードがあります。それは、この融の幽霊話をモデルにしています。
 
また、「朧月夜」(政敵の娘)との密会がばれて、「光源氏」が須磨に下ったときの描写は、在原行平(在原業平の兄)が一時期、須磨に左遷されたときに、その地を詠んだ多くの和歌の影響を受けているといわれます。
 
他にも、それまでにあった様々な出来事を参考にしながら、紫式部はこの長編小説を書いたようですよ。
 
『源氏物語』は、発刊(?)当初から大ベストセラーで、女房だけでなく、藤原道長・四納言を始めとする多くの男性官吏も回し読みしていたといわれます。(*^^)v

 

『源氏物語』の構成と内容

 
構成は、全3部・54巻から成ります。
 
第1部と第2部の主人公は「光源氏」です。
物語の中心は、「光源氏」の出世と女性遍歴!
いわゆる「紫のゆかり」の女性たちとの物語です。
 
第3部は、後伝のような位置づけで、「光源氏」亡き後の息子・「薫」(と孫の「匂宮」)が主人公の物語になります。
 
舞台も宇治に移り、宇治に住む「大君(おおいぎみ)」・「中君(なかのきみ」)・「浮船(うきふね)」を中心とした物語展開になります。
 
弟3部は、1部・2部と区別して「宇治十帖」とよばれます。

 

第1部

 

<1~33帖>

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●光源氏 誕生から39歳まで
華麗なる青春時代を得て、太政天皇に准ぜられ栄華を極めるまで。
この第1部のラストが、光源氏の人生の頂点です。

 
ときの帝「桐壺帝」に愛された「桐壺の更衣」が、美しい第2皇子を生みます。
その子が、この壮大な物語の主人公「光源氏」です。兄は後の「朱雀帝」です。
 
若い頃の光源氏は、珠のように美しく、文武両道。
よきライバルで義兄(正室「葵の上」の兄)の「頭中将(とうのちゅうじょう)」と、切磋琢磨しながら成長します。
 
この第1部の女性遍歴を軸にとらえて、現代人の倫理をそのまま持ち込んでしまうと、「光源氏って、ちょっとハイスペックだからって、マザコンでロリコンで浮気性のとんでもない男じゃない?( `ー´)ノ」となります。
 
でもね、この煌びやかさがあるから、2部・3部の苦悩が浮き上がってくるのですよ。
 
<主な登場人物>
 
女性 :「藤壺」「葵の上」「六条御息所」「空蝉」「夕顔」
「紫の上」「末摘花」「源内侍」「朧月夜」「花散里」
「明石の方」「朝顔の姫君」「玉鬘」
 
「夕霧」:「光源氏」と正室「葵の上」の息子
「雲居の雁」:「夕霧」の幼なじみで妻となる女性

 

第2部

<34~41帖>

 
●光源氏 39~52歳で出家するまで
光源氏の、因果応報による晩年の苦悩の物語です。
(41帖「幻」の巻の後、「雲隠」という巻名だけで本文のない巻があります。この巻で世を去ったと暗示。)

 
出家する兄・「朱雀院」に頼まれ13歳の皇女「女三宮(おんなさんのみや)」を正室に迎えることで、「光源氏」とその周囲の人々が様々な苦悩に襲われます。
 
始めは断るつもりだったのですが、「女三宮」が光源氏の初恋にして永遠の恋人「藤壺」のゆかりの人だということで、つい承諾してしまうのです。
いい年して、まだ母親に激似の継母「藤壺」にこだわっているところが、なんとも未練がましいですね。( ̄▽ ̄)
 
そもそも「紫の上」を少女の頃、強引に自分の屋敷に引き取ったのも「藤壺」の姪だったというのが、大きいですからね。すごい執着です。
 
「女三宮」の降嫁により、晩年になって「光源氏の正室」の座を若い娘に奪われた「紫の上」は、失望し体調がすぐれなくなります。(「女三宮」と「紫の上」では身分に大きな差があるので、当然「女三宮」が正室になります。)
 
その後、「紫の上」は体調がどんどん悪くなり出家させてほしいと光源氏に頼みますが、聞き入れてもらえません。そして、出家できないまま亡くなります。
 
一方の「女三宮」は、恋愛感情の乏しい(多分、他人にあまり関心がない)ぼんやりした女性で、光源氏にも特になつかず、流されるまま彼女に恋する「柏木」という若者との間に、不義の子をもうけてしまいます。
 
「柏木」は光源氏への怖れと罪の意識で病死、「女三宮」は15歳で出家します。
このときの「光源氏」の「柏木」への仕打ちは、ネチネチしていてうっとおしいオッサンそのものです。
 
その2人の間に生まれた息子(名目上は光源氏の息子)が、第3部の主人公・「薫」です。

 

第3部・「宇治十帖」

<42~54帖帖>

 
●薫(かおる)14~28歳まで
「薫」と「匂宮」が宇治を訪れ、八宮の遺児・美しい三姉妹と出会う恋物語。
きれいなハッピーエンドではないです。

 
<主な登場人物>
 
「薫 (かおる)」:光源氏(実父は「柏木」)」と「女三宮」の息子。
自分が光源氏の子でないことを、45巻「橋姫」で知らされる
「匂宮(におうのみや)」:「今上帝」と光源氏の一人娘「明石中宮」の息子。
つまり、光源氏の孫。 薫と同世代。
八宮の遺した三姉妹・「大君」・「中君」・「浮舟」
 
舞台は宇治。
源氏の異母弟・「八宮」の娘・三姉妹と「薫」・「匂宮」の物語です。
 
いろいろ込みいった恋愛事情があるのですが、最終的に「薫」の想い人だった「大君(おおいぎみ)」は病死(虚弱体質で心労で死去)してしまいます。
 
「中君(なかのきみ)」は「匂宮」に二条院に迎えられなんとか側室に収まる形になります。
 
そして、2人の男性に求婚されどうしようもなくなった「浮舟」は宇治川に身を投げて自殺を図ります。
 
でも、とおしすがりの僧に助けられて一命を取りとめ、実は助かっていました。
そして、そのまま出家しています。
 
かなり暗い話ですよ。
 
ずっと、2人の男性に振り回されていた「浮舟」でしたが、出家後に会いたいとやっていた「薫」に取り合わず、心安らかに仏の道を進むラストが印象的でした。(*’▽’)
 
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