この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。


 
こんにちは。
 
 
夏の風物詩の中に「金魚」があります。
 
 
水の中で涼やかに泳ぐ金魚は、夏のイラストによく使われますね。暑中見舞いのハガキや扇子に描かれることも多いです。
 
 
今回は、金魚がテーマの有名な俳人の俳句をお伝えします。

 
 

スポンサーリンク

金魚は夏の季語

 

 
金魚は1500年ほど前に中国から日本にやって来ました。今はたくさん種類がありますが、ひらひら華やかな「流金」タイプと金魚すくいでおなじみのシャープな「和金」に大きく分かれます。
 
 
「和金」は上手に育てるとフナのように30cm以上に育つそうですよ。そうなると、もはや金魚とは呼べないような気もしますが・・・。
 
 
季語は金魚の他に「金魚鉢」「金魚玉」「金魚売」などの派生がありますよ。最近では、「熱帯魚」も夏の季語です。
 
 
「夏の季語」の「魚」は、他に、鮎、カツオ、ハモ、カニ、クラゲなどがあります。
 
 
「季語」はこの歳時記をを参考にしてます。
   ↓
⇒今はじめる人のための俳句歳時記 新版 (角川ソフィア文庫)
(クリックでAmazonに飛びます)

 
 

正岡子規の金魚の俳句

 
 
近現代俳句の祖・正岡子規は生涯にた~っくさんの俳句や短歌を残しています。
 
 
子規についてはコチラを⇒正岡子規はこんな人♪
 
 
正岡子規の俳句は最後が「・・・哉」が多いです。
 
 
読み方をとまどう人が多いと思うので、あえて「・・・かな」と平仮名で表記しました。
 
 
・寒さうに 金魚の浮きし 日向かな
 
・浮くや金魚 唐紅の 薄氷
 
・海棠の 雫にそだつ 金魚かな
 
・永き日を 麩(ふ)に隠れたる 金魚かな
 
・古井戸や 金魚ものくふ 秋の水
 
・古壺に 金魚飼ふたり 青簾 (すだれ)
 
・夕立や 宿屋の庭の 金魚池
 
・ささやかな 金魚の波や 山つつじ

 

スポンサーリンク

山口誓子(せいし)の金魚の俳句

 

 
山口誓子は京都の俳人で、本名は山口新比古(ちかひこ)という男性です。
 
 
ホトトギス派を代表する「ホトトギス四S(シイエス)」の1人でしたが、後に水原秋桜子についてホトトギスを離脱しました。
 
 
「ホトトギス四S」は、水原秋櫻子、山口誓子、阿波野青畝、高野素十です。
 
 
山口誓子の「金魚」の俳句は、現代風でアレンジしやすいと思いますよ。
   ↓
・かすかなる ふなも金魚と ともに群れ
 
・じつとして 金魚は眼のみ 動かせり
 
・ガラス越し 冬の金魚と 顔合す
 
・金鱗を 光らすこれが 金魚なり
 
・水底に 接吻金魚 逆立ちす
 
・水槽の 金魚の 真正面の顔
 
・友の金魚 死なんとするを 吻つつく
 
・口出して 金魚水面の 空気吸ふ
 
・口開けて 金魚冷たき 空気吸ふ
 
・水槽の 金魚黄金の 腹を見す
 
・水郷の 彼方金魚の 紅気立つ
 
・出目金魚 のみ水槽を 別にされ
 
・和金とて 他の金魚と 隔離され

   ↑
出目金(デメキン)と和金が他の金魚と隔離??
なんで?と言いたい不思議な2つの句。
 
どういうシチュエーションだったんでしょうね。
 
・尾のひれの 扇を金魚 全開す
 
・尾ひれまで 黒き喪服の 黒金魚
 
・貴婦人の 黒スカートの 黒金魚

    ↑
金魚、特にひらひらした「流金」は、ドレスアップした女性にたとえられることが多いです。句作で挑戦すると面白そうですよ。
 
 
そういえば室生犀星の小説の「金魚」も、妙齢の女子っぽい感じです。知的なおじさんは、そういう連想をするのかとつくづく思う次第なのでした。
 
 

種田山頭火(たねださんとうか)の俳句

 

 
自由過ぎる俳句で知られる種田山頭火。
 
 
有名なのは、教科書でもおなじみのこちら。
   ↓
「分け入っても分け入っても青い山」
 
 
自由律俳句と言えば聞こえがよいですが、「つぶやき」か「一行日記」かというような自由奔放ぶりで笑える俳句満載です。
 
 
それはまた別の機会にお伝えするとして、今回のテーマ金魚は、死んでるのが多いですね。( ̄▽ ̄)
 
 
子供のころに買ってもらったお盆の夜店の金魚を思い出します。秋まで育てられたことがなく、死骸を庭に埋めました。
 
 
・きぬぎぬの 金魚が死んで 浮いてゐる
 
・つと起きし 児が金魚の 死骸つかみたり
 
・夜店の金魚 すくはるるときの かがやき

 
 

日野草城の俳句

 

 
日野 草城(そうじょう)は東京都出身の俳人で、本名は克修(よしのぶ)といいます。
 
 
エロ系俳句(と言っても当時の俳壇が厳しかっただけで大したことないです)と無季俳句という季語のない俳句の代表的俳人です。
 
 
・夜の金魚 しづかに游ぐ まくれなゐ
 
・易き鉢に 飼はるる 金魚かな
 
・金魚飼ふ 母に童心 ありにけり
 
・灯ともりて 愕然赤き 金魚かな
 
・月させば さざれ波あり 金魚池

    ↑
この俳句、「月」「さざれ波」が美しい表現で素敵じゃないですか?
 
・べろべろと 金魚遊べり 玻璃の鉢
   ↑
瑠璃の鉢、深いブルーの陶器の鉢の中に入っているのは、おそらく赤い金魚でしょう。
 
色のコントラストが効いていて、瑠璃色の涼しさもあらわれていて美しいです。
 
そこに加えて「べろべろと」な表現がおもしろいです。
 

 
 

山口青邨(せいそん)の俳句

 

 
山口 青邨は岩手県出身の俳人で本名は吉朗といいます。本職は鉱山学者で、師匠は高浜虚子でした。
 
 
・読みつかれ 書きつかれ 金魚とともに
 
・金魚一鱗 末枯の庭 わが愛す
 
・水澄めば 鯉も金魚も 陶となる
 
・初日さす 金魚一鱗の 庭の甕
 
・女だち おしやべり金魚 浮き沈み
 
・客間の卓 金魚泳がし 孤島春
 
・人退屈 金魚退屈 藻をつつく

   ↑
この俳句は、アレンジが効きそうですよ。
「人退屈 ○○退屈 ○○○○す」(´・ω・)

 
 

おわりに


 
金魚は、魚の中でもペットのような身近な生き物なので作りやすい題材です。
 
 
金魚「き・ん・ぎょ」で3文字だから「金魚鉢」が5文字、「金魚すくいの」で7文字になります。
 
 
中学生以上の人は、「擬人化」にチャレンジしてほしいテーマですよ~。
 
 
赤いドレスのコケティッシュな少女、ドレッシーな黒いドレスの貴婦人、山口誓子は喪服姿にもたとえていますね。
 
 
いろいろ連想・妄想してみてください。

 
 

【関連記事】
   ↓