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こんにちは。
 
 
『吾輩は猫である』は、夏目漱石の作品の中でも題名のインパクトが強いので、題名だけはよく知られている作品ですね。
 
 
「読んだことある?」と聞くと、
 
「いや~・・・。」という感じの答えが多かったりします。
 
 
それも、よく分かります。
 
 
文章がつめつめで、改行とかあまりなくって、かなり、読みにくんですよ、この話。540ページほどありますから、結構長い話ですしね。
 
 
でも、明治時代は、現代文がようやく今の形に統一された時期ですから、仕方のないことなのです。
 
 
そして、この作品は、作家・夏目漱石が生まれた記念すべき第1作目です!
 
 
それまで、漱石先生は、英語の教師でした。
 
 
今回は、『吾輩は猫である』のあらすじと楽しみ方をお伝えします。

 

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『吾輩は猫である』

 
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夏目漱石は、文部省留学生として、ロンドンへ留学します。
 
 
そこでの生活は、彼にとってストレスだらけで、帰国したときには、神経も胃も弱り疲れ果てていました。
 
 
そんなとき、漱石は、俳句を載せていた雑誌「ホトトギス」の編集・高浜虚子に、「小説でも書いてみない?」とすすめられます。
 
 
高浜虚子は、俳人として知られた人です。漱石の俳句の師で親友でもある正岡子規の紹介で、知り合ったそうですよ。
 
 
ちょうどその頃、漱石の家に、1匹の「のら猫」が迷い込んできました。その「猫」を題材にして書き始めたのが、この作品なのです。
 
 
夏目漱石の特徴と生涯は、こちらでお伝えしています。↓


 
 
この話は、全部で11話あるのですが、始めは短編の予定だったのだそうです。でも、第1話を雑誌に載せたところ、すごく反響があって人気が出たので、続きを書き足すことになったのです。
 
 
ちなみに、始めに漱石がつけたタイトルは『吾輩は猫である』ではなく『猫』でした。
 
 
ただの『猫』・・・(´▽`*)
 
すごく漱石先生らしいなあと思うのですけど、いかがでしょう?
高浜虚子の助言があって、『吾輩は猫である』と変えたのだそうですよ。
 
 
虚子のアドバイスは、的確ですね。
読み手の関心を誘う題名だと思います。
 
 
『吾輩は猫である』青空文庫

 

『吾輩は猫である』・冒頭

 
『吾輩は猫である』の冒頭は、とっても有名ですね。
ユーモラスな雰囲気が、冒頭からも伝わります。

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吾輩は猫である。名前はまだ無い。
どこで生まれたかとんと見当けんとうがつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

『吾輩は猫である』の登場人物

 
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主な登場人物を紹介します。
 
 
この作品は、登場人物の「談話」が多くを占めているため、かなり多くの人が登場します。

 
 

 
吾輩 ー主人公。珍野家の飼い猫。名前はまだない。
三毛子 ー 隣宅に住む二絃琴の御師匠さんの家の雌猫。
車屋の黒 ー 大柄な雄の黒猫。べらんめえ口調の乱暴猫。

 

人間

 
珍野苦沙弥(くしゃみ)ー 猫の飼い主。中学の英語教師。妻と3人の娘がいる。
迷亭(めいてい)ー美学者。苦沙弥の友人。ホラ話ばかり言っている。
水島寒月(かんげつ)ー理学者。苦沙弥の元教え子。好青年。
越智東風(とうふう)ー自称詩人。寒月の友人。「オチコチ」
八木独仙(どくせん)ー哲学者。髭を生やし意味不明な自論を持つ。
おさんー珍野家の下女。
甘木先生 ー苦沙弥の主治医、温厚な性格。
金田(かねだ)ー近所の実業家。苦沙弥は嫌っている。
鼻子(はなこ)ー金田の妻。巨大な鼻の持ち主。
富子(とみこ)- 金田の娘。ワガママ娘。
多々良三平(たたら さんぺい)-実業家。苦沙弥の元教え子。

 
 

簡単なあらすじ

 
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この話は、「吾輩」(猫)の飼い主・陳野家のたわいない日常風景を描いた作品です。
 
 
登場人物の会話(論談)を楽しむのがメインなので、ストーリーらしきものはあまりないんですね。大筋としてしっかり話になっているのは、「寒月と富子の結婚話」や「家に泥棒が入った事」です。
 
 
とにかく「論談」がやたらと長くて、会話文だらけ!!
 
 
哲学的なうんちく話も多いので、なんだか意味不明な難解さを感じてしまいます。(*´Д`)
 
 
でも、苦沙弥と仲間たちの会話のやり取りが、猫の「吾輩」目線で語られるところがおもしろいのです。
 
 
「人間社会の風刺」と「ユーモラスな語り口」が、際立った特徴だと思います。
 
 

第一話・第二話

 
生まれて間もなく捨てられた猫が、陳野家に迷い込みます。そして、その猫は、主人の承諾を得て、陳野家で飼われるようになりました。
 
 
この猫の「吾輩」という一人称が、威張った感じでおもしろいんですねー♪
 
 
「吾輩」は、近所の猫・黒の助言を受けて、人間観察にいそしみます。(笑)
 
 
主人の苦沙弥(くしゃみ)は、中学校の英語教師で、絵やバイオリンなど何にでも手を出しながら、何ひとつものにできないという中途半端なインテリ趣味人です。(←いますね、こういう人。)
 
 
そして、この陳野家に、友達や元教え子などいろんな人が遊びに来ます。
 
 
元教え子で理学者の寒月、
ホラ話ばかりしている美学者の迷亭、
詩人の東風・・・。
 
 
来客たちも一筋縄ではいかない、変人たちばかりです。
 
「吾輩」は、彼らのことを「太平の逸民(いつみん)」というヒマ人で、知的な笑いを誘う勝手な論談にふける者たちだと考えます。
 
 
また、「吾輩」は、隣家の琴の師匠の飼い猫「三毛子」と話をすると、心が晴れ晴れする気がします。
 
 
これは恋の予感かな?と、ときめいたのですが、「三毛子」ちゃんは、あっけなく病死してしまいました。
 
 
恋に破れた「吾輩」は、ますます主人の苦沙弥のように無精な猫になってしまいます。

 
 

第三話・第四話

 
ある日、実業家の金田の夫人「鼻子」が苦沙弥を訪ねて来ます。
(夫人は、巨大な鼻をしているので、「鼻子」とあだ名されています。)
 
 
なんと、金田夫妻の娘・富子と理学者の寒月との間に結婚話が持ち上がっているのです。
 
 
鼻子は鼻持ちならない女性で、寒月が博士になれば娘と結婚させてやるとえらそうに言うので、苦沙弥が怒ってしまい、結婚話は決裂してしまいます。(寒月君は不在です)
 
 
金田夫妻は、その後もいろいろと苦沙弥に嫌がらせをするようになり、「吾輩」は金田家に忍び込んで偵察することにしました。

 
 

第五話・第六話・第七話

 
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ある日、陳野家に泥棒が入ります。
「吾輩」は、泥棒に気づきますが、何もせずに見守るだけ・・・。Σ( ̄□ ̄|||)
 
 
泥棒が寒月に似ているなあ(別人)とか、のんきに観察しています。
 
 
先だってから、日本はロシアと大戦争をしているそうなので、「吾輩」も「猫中の東郷大将」として戦略的にネズミを取ろうと試みたりしますが、なかなかうまくいきません。(←日露戦争のことを他人事のように言っていておもしろいです。)
 
 
泥棒騒動は、泥棒が捕まって一件落着しました!
 
 
また、その後、「吾輩」は運動することにし、公衆浴場を覗きます。その公衆浴場で、「吾輩」はある「奇観」を目にしてしまいます。
 
 
猫の目から見た「口にするのをはばかる程の奇観」というのは、【裸体の人間がうじゃうじゃいること】でした。
 
 
「吾輩」は「20世紀のアダムだ!」と思います。(*´Д`)

 
 

第八話・第九話・第十話

 
近くの落雲館中学校の生徒が、陳野家の庭に野球ボールを打ち込んだため、苦沙弥が激高します。
 
実は、この事件も、金田が画策したものでした。
 
 
古井と浜田と遠藤の3人が、金田の娘が生意気だからと、からかうつもりで、艶書(恋文)を送りました。
 
 
その艶書(恋文)の差出人に自分の名を貸してしまった古井は、退学処分にならないか後で不安になって、苦沙弥に相談に来ます。
 
 
その返答に、もったいぶって「そうさな。」を繰り返す苦沙弥を見て、「吾輩」はなかなかおもしろいなと思います。
 
 

第十一話

 
迷亭と独仙は、碁盤を間に据えて対峙しています。碁を打ち、そのまま、独仙、苦沙弥、寒月、東風らが、女性論、夫婦論を展開することになりました。
 
 
珠磨をやめた寒月は、いつの間にか、故郷で親の決めた女性と結婚していました。富子は、苦沙弥の元教え子で現在実業家の多々良との結婚が決まったそうです。
 
 
客たちが帰ったあと、「吾輩」はしばし考えます。
 
 
そして、みんなが飲み残したビールを飲んで酩酊し、なんと!水がめの中に転落してしまいます!
 
「吾輩」は、水カメの中で、もう無駄な抵抗をやめ自然に任せようと思いました。

吾輩は死ぬ。死んでこの太平を得る。太平は死ななければ得られぬ。
南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏。ありがたいありがたい。

 
 

おわりに

 
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『吾輩は猫である』のおもしろいところは、なにより、皮肉っぽくユーモアのある猫・「吾輩」の語り口にあります。
 
 
そして、苦沙弥たちのウィットに富む無駄話も楽しいです。
 
 
日常生活の中の、本当にたわいのない話が多いです。
 
 
苦沙弥の抜いた鼻毛が白髪だったとか、奥さんの頭に禿があるとかで悪口を言い合ったり、みんなでつらつらと無駄話を続ける様は、まるで落語か漫談のようなノリです。
 
 
とん子、すん子、めん子(坊ば)という名の、苦沙弥の娘たちも、なかなか変わった娘たちで、名前も変わっていますね。(笑)
 
 
そして、最期は、語り手(吾輩)が死亡するというオチでした。
 
 
この作品のおもしろさは、やはり読んでいただかなければ味わえないなあと思うのでした。(´・ω・)

 
 
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