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こんにちは。
 
日本は、春夏秋冬、四季折々の美を楽しめる国ですね。
でもでも、なぜか和歌の世界では、夏と冬の扱いが小さいです。
 
特に「夏」は、抒情的になりにくい季節なのか、和歌がとても少ないです。
 
「小倉百人一首」では、100首中4首、
「古今和歌集」でも、「夏」の歌は34首
しかありません。
 
今回は、その中でも、キラリと光るよく知られている和歌を10首紹介します。

 

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夏の和歌

 
「小倉百人一首」に選ばれた夏の歌は、100首中たった「4首」です。
ぱっと思い浮かぶ歌があるでしょうか。
 
それでは、順に見ていきましょう。

 

百人一首の夏の和歌


 

1.春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山

 
持統天皇 「新古今和歌集」「百人一首」2番
 
(訳)いつの間にか、春が過ぎて夏がやってきましたね。夏になると真っ白な衣を干すといいますから、あの天の香具山に。(白い衣を干してあるのが見えている)
 
持統天皇は、天智天皇の娘で天武天皇の后。
第41代天皇です。
 
持統天皇は、万葉の歌人としても、よく知られています。
 
初夏の山の緑と衣の白のコントラストが鮮やかに目に浮かびますね。
美しい爽やかな歌ですね。

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2.夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ

 
清原深養父 「古今和歌集」 「百人一首」36番
 
(訳)夏の夜はまだ夜が始まったばかりだと思っているうちに明るくなってきてしまった。今頃どの雲を宿にして眠っているのだろう、あの美しいお月様は。
 
清原深養父は、清少納言の曾祖父にあたる人です。
 
彼の和歌は、「古今和歌集」「後撰和歌集」に多く選ばれています。
 
琴の名手としても名高く、芸術を愛した人といわれます。
紀貫之の友人でもあります。
 
夏の夜の風情の感じますが、非常に理知的な歌でもあります。
あ、紀貫之も一緒に載ってます。(´・ω・)
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3.風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける

 
藤原家隆(従二位家隆)「新勅撰和歌集」「百人一首」98番
 
(訳)「楢の」木の葉が風にそよぐ上賀茂神社を流れる「ならの」小川の夕暮れは、もう秋のような風情がしているけれど、この「夏越しの祓」をしていることが、まだ夏である証拠なのだ。
 
藤原家隆は、「新古今和歌集」の選者の1人です。
藤原定家(97番)とは従兄弟であり友人です。
 
この歌は、後堀川天皇のもとに中宮が入内されるとき、屏風に合わせた歌をと依頼されて詠んだものです。
「夏越の祓」の屏風絵の下に書かれた歌です。
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ホトトギスを詠んだ歌

 
万葉集から古今和歌集にかけて、「ホトトギス」を詠んだ歌が、非常に多いです。特に古今和歌集には、たくさん選ばれています。
 
「ホトトギス=時鳥=郭公」です。
 
「蛍」や「天の川」も夏らしいですが、「恋の歌」に選別されることが多いです。
 
「ホトトギス」は、夏を知らせる鳥だというだけでなく、抒情的な鳴き声が思慕の念をかき立てるとされていました。

 
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4.ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残るたれ

 
藤原実定(後徳大寺左大臣)「千載和歌集」「百人一首」81番
 
(訳)ホトトギスが鳴いたと思ってそちらを眺めてみると、鳥の姿はなく、ただ有明の月が残っているだけでしたよ。
 
「百人一首」81番の歌は、ホトトギスを詠んだ「夏」の和歌です。
 
藤原実定は、詩歌だけでなく、今様・神楽・管絃の名手であり、蔵書家としても知られる才能豊かな人でした。
 
ホトトギスの最初の声を聴くために、何人かで夜通し待ったという風流な歌です。
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5.五月山 こずゑをたかみ 時鳥 なくね空なる 恋もするかな

 
紀貫之 「古今和歌集」
 
(訳)五月の山の梢は高く、そこにいるホトトギスも遠い空に鳴いているなあ。いくら泣いても空しく報われない恋をしている私と同じように。
 
紀貫之は、「古今和歌」の選者の1人で、有名な歌人です。
古典文学史上、最大の敬意を払われてきた人物でもあります。
 
遠い空に鳴くホトトギスの声の寂しく「虚しい」声に、自分自身の「空しさ」を掛け合わせた技巧的な歌です。

 
 

6.音羽山 こだかく鳴きて 郭公 君が別れを 惜しむべらなり

 
紀貫之 「古今和歌集」
 
(訳)音羽山の梢高く鳴くホトトギスも、あなたとの別れを惜しんでいるようです。
 
紀貫之の和歌をもう1首。
こちらも、よく知られた夏の和歌です。
 
「こだかく鳴きて」の「こだかく」に、位置の高さの「小高い」と声の高さの「小高い」を掛けています。
また「鳴く声」は「ホトトギス」と「女性(の泣く声)」を表しています。
 
恋しい人との別れに泣く女性の心情を、ホトトギスの鳴き声になぞらえて表現しているのですね。
 
紀貫之は、女性目線の和歌を多く残しています。
史上初の日記作品である『土佐日記』も、そうでした。
 
紀貫之の紹介と「百人一首」の歌は、こちらにあります。
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7.暮るるかと みればあけぬる 夏の夜を あかずとやなく 山郭公

 
壬生忠岑 「古今和歌集」
 
(訳)日が暮れるかと思えば、たちまち明けていく夏の夜を、飽き足りないと鳴いているのだろうか、あの山のホトトギスは。
 
壬生忠岑は、「古今和歌集」の選者の1人です。
身分は低いですが、優れた歌人として多くの歌人に称賛されています。
 
「あかず」は「飽かず」(飽きない)と「明かず」(夜が明けない)の掛詞です。
 
壬生忠岑の「百人一首」の歌はこちらです。
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8.いそのかみ ふるき都の 郭公 声ばかりこそ 昔なりけれ

 
素性法師 「古今和歌集」
 
(訳)石上の古き都で鳴くホトトギスよ。昔から変わらないのは、その鳴く声ばかりだなあ。
 
変わらない自然界と、変化していく人の世を対比させて、その無常観を詠んだ歌です。
 
素性法師は、三十六歌仙の一人で、僧正遍照の息子です。
父の命により若くして出家しましたが、和歌の才能があり、出家後も宮廷で重用されました。
 
素性法師の「百人一首」の歌はこちらです♪
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『伊勢物語』より「夏」の和歌

 
『伊勢物語』は、作者不明でありながら、当時から話題となったことで知られる作品です。高校の古典の教科書にも、よく取り上げられます。
 
主人公の「ある男」が、平安きってのプレーボーイ「在原業平」だということでも有名です。
 
物語の中で使われたストーリー性の高い和歌を紹介します。

 

 

9.暮れがたき 夏の日ぐらし ながむれば そのこととなく 物ぞ悲しき

 
『伊勢物語』第四十五段「ゆく蛍」
 
(訳)日が長くなかなか暮れない夏の日。物思いに耽り、ぼんやりと眺めていると、あらゆることが無性に悲しく感じられるものだなあ。
 
この歌は、伊勢物語の主人公の「男」に恋し、打ち明けないまま死んでしまった娘の存在を、「男」が聞いた後に詠んだものです。
 
女性の存在も、想いも知らなかった「男」が急いで女性の元へ駆けつけたとき、既に女性は亡くなった後でした。
 
そのことを思い出し、物思いに沈んでいく心情を表現している歌です。

 

10.彦星に 恋はまさりぬ 天の河 へだつる関を 今はやめてよ

 
『伊勢物語』第九十五段「彦星」
 
(訳)あの一年に一度しか恋人に会えないという 彦星の想いにも、私のあなたへの思いは勝っています。 ふたりの間を隔てている、天の川の関のような簾や机帳を、取り除いてください。
 
こちらも『伊勢物語』に収録されている、「夏」の有名な和歌です。
 
『伊勢物語』の主人公の「男」が、愛しい女性に向けて詠んだ歌です。
 
同じ宮中で仕えているにもかかわらず、「男」は意中の女性になかなか会うことができません。
 
そして、ようやく仕切り越しに会うことが許されたき、詠んだのがこの歌です。
 
『伊勢物語』のモデル在原業平の歌はこちらにもあります。
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有名な「春」の和歌15首は、こちらです。(*^^)v
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