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これぞ秋の風物詩という「紅葉」。
毎年紅葉狩りに出かける方も多いのではないでしょうか。
私はできるだけ穴場の京都の神社仏閣を狙って行きますよ。
今回はそんな「紅葉」をテーマにした有名な俳人の俳句をご紹介します。
目次
「紅葉」といえば「紅葉狩り」
日本の紅葉の鮮やかさ、色の奥深さは世界に誇れるものですね!
それはもう、秋になるとわんさか外国人観光客が京都に押し寄せるのを目にして実感するのです。
紅葉は古い神社・仏閣にもっとも映えると思います。
そんな紅葉を、日本人は万葉の時代から愛でてきました。今でも桜と紅葉は天気予報でお知らせがあるほどですから。
「紅葉狩り(もみじがり)」という言葉も、なんだか古風で素敵なのです。
花見は「見る」のに、紅葉はなぜ「狩る」のか?
おもしろいですね。
「紅葉狩り」由来はいろいろあって、おそらくいくつが組み合わさっていると思われます。
長野県戸隠の「紅葉伝説」で「鬼女」退治をした「紅葉狩」という題材があります。能や歌舞伎の演目にもなっているのですが、これは平安時代の平維茂の話なので、紅葉狩りの言葉より後にできたものです。
「紅葉狩り」という言葉は、もっと前の「万葉集」の歌の中にも登場しているのですよ。
実は、万葉集の時代は、桜の「花見」のことも「桜狩り」と言っていたそうなのです。
でも、なんだか平安時代の日本人の感性にしっくりこなかったのでしょう。
しだいに花(桜)は月や雪と同じく「見る」(見て想う)もの、紅葉は鑑賞するという意味で「狩る」ものと定着していったようです。
(1)与謝蕪村の「紅葉」の俳句
与謝蕪村は、松尾芭蕉・小林一茶とならんで称される江戸三大俳人の1人で、「江戸俳諧中興の祖」といわれます。
彼は、写実的で絵画的な発句が得意でした。また、絵心があり「俳画」を確立した人でもあります。素朴なかわいらしい俳画を残していますよ。
蕪村は、明治時代の正岡子規に絶賛されて、一気に知名度があがりました。代表作に「菜の花や 月は東に 日は西に」などがあります。
山暮れて 紅葉の朱を 奪うけり
よらで過る 藤沢寺の もみぢ哉
西行の 夜具も出て有 紅葉哉
山くれて 紅葉の朱を うばひけり
このもより かのも色こき 紅葉かな
(2)小林一茶の「紅葉」の俳句
小林一茶の俳句は、小学生の子供にとても人気があります。身近な動物や子供を題材にした俳句が多いので、覚えやすくで共感しやすいのでしょう。
作風は素朴てとても庶民的、庶民の日常の暮らしと想いを切り取って作ったような俳句が多いです。
真間寺で 斯う拾ひしよ 散紅葉
日の暮の 背中淋しき 紅葉哉
夜神楽や 焚火の中へ ちる紅葉
渋柿も 紅葉しにけり 朝寝坊
夕紅葉 谷残虹の 消かかる
(3)正岡子規の「紅葉」の俳句
現代俳句・短歌の祖と呼ばれる明治時代の俳人です。
万葉集のような写実的な作風を好みました。「俳句」「短歌」という名称を作ったのは、この正岡子規です。
正岡子規と俳句・短歌については、こちらで詳しく説明しています。ご参考にどうぞ♪
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古寺に 灯のともりたる 紅葉かな
千山の 紅葉一すぢの 流れかな
ちる紅葉 ちらぬ紅葉は まだ青し
奥深き 杉の木の間の 紅葉かな
ともし火の 見えて紅葉の 奥深し
山に倚つて 家まばらなり むら紅葉
山鳥の しだり尾動く 紅葉哉かな
源氏画の 車もかもな 夕紅葉
むら雨や 車をいそぐ 紅葉狩
紅葉狩 鬼すむ方を 見つけたり
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「紅葉狩(もみじがり)」を季語に用いると、一気に古風なイメージになりますね。
子規の俳句は、写実的で素朴な雰囲気なので、句作の参考に使いやすいと思います。
(4)高浜虚子の「紅葉」の俳句
高浜虚子は愛媛県出身ですが、長く神奈川県鎌倉市で暮らした俳人です。
柳原極堂が創刊した俳誌「ホトトギス」を引き継いで、俳句だけでなく和歌、散文などを加えて俳句文芸誌として発展させました。夏目漱石など小説家からも寄稿をうけています。
ゆくりなく 旅の一日を 紅葉狩
真青なる 紅葉の端の 薄紅葉
一枚の 紅葉旦つ散る 静かさよ
夕紅葉 色失ふ を見つつあり
大紅葉 燃え上らんと しつゝあり
かがやける 白雲ありて 照紅葉
(5)水原秋櫻子の「紅葉」の俳句
水原秋櫻子、名前に「秋桜(コスモス)」が入って美しいですが、本名は水原豊という男性の俳人です。高浜虚子に俳句を学んでいましたが、後に離反しました。
ホトトギス派の代表といわれた「ホトトギス四S(シイエス)」の1人です。ちなみに、「ホトトギス四S」は、水原秋櫻子、山口誓子、阿波野青畝、高野素十の4人です。
夜の塔を 風音越ゆる 散紅葉
蔦もみぢ 濡れしは今か しぐれけむ
立ちまじる 松真青なり 山紅葉
紅葉して 葡萄熟れたる 色深し
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秋の風景のこってりした色合いが伝わりますね。とても写実的で秋らしい素敵な作品です。
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