この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。


 
こんにちは、このかです。
 
 
芥川龍之介の作品は、短編が多いですね。
ほぼ短編で、なんとか中編ぐらいまでの作品ばかりです。
 
 
これは、短編にこそ作家の才能が表れるものだと芥川自身が思っていたというもあるのですが、短い割には、深ーい話が多いです。
 
 
『羅生門』にしろ『鼻』にしろ『地獄変』にしろ、
どこまで深読みするのが正しいのか・・・・・
 
 
この『トロッコ』もそんな作品です。

 
 

スポンサーリンク

『トロッコ』の簡単なあらすじ

 
舞台はトロッコを使う鉄道工事現場です。
「トロッコ」って一体どんなの?と思う世代の人も多いはずですね。
こんなのです。↓

線路の上を走らせて、採掘した石や土砂を運ぶ乗り物です。
 
 
この話では、小田原ー熱海間に鉄道をひくため、あたりの山合いの村はずれで、鉄道工事が行われていたのでした。
 
 
主人公の良平(8歳)は、その工事の様子が気になって、毎日のように見学しに行っていました。

 
 

(1)トロッコを押してもいいといわれて喜ぶ良平

 
 
工事現場では、毎日、土工たちがトロッコを使って土を運ぶ仕事をしています。
 
 
良平は、やってみたいと好奇心にかられ、弟とその友だちと一緒にトロッコに乗って、そのまま押したりして調子にのって遊びました。
 
 
そのとき、「この野郎!」と怒鳴り声がかかります。背の高い土工が現れて、良平たちは叱られてしまったのです。
 
 
10日ほど経ったある日、いつものようにトロッコを押す土工を見学していた良平は、優しそうな雰囲気の土工を見かけます。
 
 
この人ならいけるかもと思い、「おじさん。押してやろうか?」と言ってみると、「おお、押してくよう」と快い返事が返ってきました。
 
 
そうして、良平はトロッコを押し始めました。
 
 
線路が下り坂になると、土工にトロッコに乗れと言われたので乗りました。、すると、押すより乗る方がずっと快適でした。(当たり前ですけど)
 
 
良平は、行きに押すことが多いと、帰りは乗れることが多くなるななどと考えます。

 
 

(2)遠くまで行き過ぎて不安になる良平


トロッコに乗ったり押したりしながら、トロッコは山の中をずんずん進みます。
 
 
土工たちは、途中で茶屋に入り、ゆっくり休憩をはさみました。
 
 
やがて日が暮れ始めると、良平は明るいうちに家に帰れるだろうかと不安になりました。
 
 
土工たちは、2度目の茶店に入り、またゆっくり休憩しています。
良平は、もう帰ることばかり考えていました。

 
 

(3)泣きながら1人で帰る

 
 
その茶屋で、土工がこう言いました。
 
 
「われはもう帰んな。おれたちは今日は向う泊りだから」
「あんまり帰りが遅くなるとわれの家(うち)でも心配するずら」
 
 
良平は、呆然とします。
(多分、みんな一緒にその日のうちに元の場所に戻ると思っていたのでしょう。)
 
 
「ひ、ひとりで来た道のりを帰るんかい!」
そう思ったでしょう。
 
 
そうして、良平は、泣きそうになりながら、取ってつけたように土工たちにお辞儀をすると、今来た線路を走り始めました。
 
 
辺りは暗くなる一方で、だんだん恐怖心が高まり、「命さえ助かれば――」良平はそう思いました。
 
 
村に着くと、「おいどうしたね?」などと声をかけてくれる村人がいましたが、良平はそれには答えず、家の門口へ駆け込んで、とうとう大声で泣き叫びました。

 
 

(4)大人になって振り返る良平

 

 
良平は26歳のとき、妻子と一緒に東京に出ました。
 
 
東京の雑誌社で校正の仕事をしているのですが、今でも突然、理由もなくその時の自分を思い出すのです。
 
 
塵労(社会の中での日々の苦労)に疲れた彼の前には、今でもやはりその時のように、薄暗い藪(やぶ)や坂のある路が、細々と一筋、断続しているのでした・・・・・。

 
 

『トロッコ』感想のポイント


この話の主題は、一番最後の文ですね。
 
 
26歳になった良平のことが書かれていなければ、単なる「子供のころの心細かった思い出」でおしまいです。
 
 
それを、こんな短い作品の中で「おしまい」で終わらせないところが、芥川龍之介の構成力のすごいところですね。
 
 
ここで、ずんと深みを出しておりますよ。
 
 
良平は、大人になった26歳の今でも、8歳の「あの時」と同じような心細さに襲われているのです。
 
 
人生の先行きを考えると、いくつになっても心細く不安なのは変わらないのだなと思うと、人間って・・・と考えてしまいます。

 
 

スポンサーリンク