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こんにちは。
 
先日、久しぶりにスタバに行って、ふと思ったのですが、スターバックスのオリジナルロゴは、ギリシャ神話の人魚・セイレーンなんですね~。
 
 
伝説の生き物の中でも、人魚はひときわ美しく神秘的なイメージがあります。
 
 
美しい歌声で惑わせるライン川のローレライ
アンデルセン童話の人魚姫などなど
 
 
西欧の人魚は、美女のイメージが強いです。
 
 
でも、日本の人魚は、ちょっと違いますね。
恐ろしくて半魚のような妖怪風に描かれることが多いです。
 
 
日本人は、魚をよく食べる民族です。
なので、なぜか、人魚も「食の対象」になっているのでした。
 
 
そして、人魚のお肉はとろけるほど美味しいと伝わります。
 
 
今回は、日本の人魚伝説、八百比丘尼(やおびくに)についてお伝えします。

 
 

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八百比丘尼伝説

 

 

八百比丘尼は、どんな人だった?

 
 
昔々、人魚の肉を食べて不老不死の力を得たという娘がいました。
 
 
その娘は、たいそう美しく若い女性の姿のまま年を取らないので、一カ所に定住することができませんでした。娘は「八百比丘尼」と呼ばれる尼僧になって日本各地を渡り歩いたのです。そうしていろいろな地方に、その伝説が残っているのでした。
 
 
その八百比丘尼の民話は、今も全国各地に残っています。
 
 
その中で一番有名なのは、八百比丘尼が最後にこもったといわれる洞窟のある場所です。それは、の洞窟は福井県小浜市の空印寺というお寺の近くにあります。
 
 
八百比丘尼の「比丘尼」というのは、仏教に帰依して出家して具足戒を受けた女性を称したもの、つまり、尼とか尼僧と同じ意味の言葉なんですよ。
 
 
だから、八百比丘尼というのは「八百歳の比丘尼」ということなのです。
彼女は、800年以上生きたといわれます。また、一説ではまだ生き続けているともいわれるのですよ。

 

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八百比丘尼の伝承

 

 
ときは、654年、斉明天皇の時代にさかのぼります。
 
 
若狭の国の高橋長者というお金持ちの家に、玉のように美しい娘が生まれました。娘が16歳のとき、父親の高橋長者はある男から夕食に招かれます。その男は素性はよく分からないよそ者なのですが、いつの間にか村に住みついてなじんでいた不思議な人だったのです。
 
 
高橋長者が他の村人たちと一緒に男の家に行くと、彼の家はものすごい大豪邸でした。ビックリしながらも高橋長者たちは、男に案内されて屋敷を見物しました。
 
 
そして、調理場に行ったとき、不思議なものを目にしたのです。
 
 
そこには、2人の調理人がいてまな板の前で何やら相談していました。まな板の上には、見たこともない不気味な生き物が乗っています。それは、肩から下が魚で、白い2本の腕が生えていて、人間の子供のような頭部をしていたのです。
 
 
料理人の手には包丁が握られていました。高橋長者たちは、驚愕します。
 
 
今日のごちそうは、まさか・・・!?
 
 
やがて、宴の席に着くと、ごちそうが運ばれてきました。
 
 
豪邸の主人は「竜宮の土産なので、ぜひ食べてください」と言いますが、招待された高橋長者たちは気味が悪くて、誰も箸をつけることができませんでした。
 
そして、早々に立ち去ろうとする長者たちに、男はその不気味な生き物のお肉をとても美味しいものだからとお土産に手渡したのです。
 
 
家に帰ると、高橋長者は、それを戸棚の上にそっと隠しました。
 
 
でも、それを娘が見ていたのです。
娘は、気になってその包みをこっそり隠れて開けてしまいました。
 
 
するとそこには、美味しそうなお肉が!
 
 
思わず口に運ぶと、ほっぺたが落ちそうな美味しさです。
 
 
「こんな美味しいお肉、いままで食べたことがないわ!」と、とうとう全部食べきってしまいました。
 
 
それ以降、この娘はまったく年を取ることはなく、いつまでも老いることがなかったのでした。
 
 
こうして不老不死となった娘は、「八百比丘尼」という尼になって、人びとに神仏への信仰を説きながら、全国行脚したといわれます。

 
 
 

人魚は存在するの?全国にある人魚伝説

 

 
人魚は、通信手段がほどんどなかった古代から、世界中のいろんな地域で目撃されています。
 
 
今では、ジュゴンやマナティを見間違って人魚と思いこんだのだというのが、有力説になっています。
 
 
でも、これ、本当でしょうか?
「ジュゴンが人魚ってどうよ」って思うのですが、いがかでしょう。
 
 
八百比丘尼の伝説だって、電話や郵便どころか飛脚さえなかった600年代から、全国各地に残っているのですよ。(所によっては、「浦島太郎」と合体した話になっているといわれます。)
 
 
ちなみに、人魚に関する一番古い記録は619年で、『日本書紀』に、摂津国の漁師の網に人魚が捕らえられたと書かれています。
 
 
滋賀県のあるお寺には、聖徳太子が人魚に会ったという伝説が残っています。その人魚は、生前の悪行で人魚に姿を変えられたと言ったそうなのです。(元は人だった?)
 
 
まったく謎の多い生き物ですね。

 

「不老不死」は恐ろしいことかもしれない

 

 
日本の人魚伝説は、人が人魚の肉を食べるかどうか、試されることが多いです。(浦島太郎が玉手箱を開けるかどうかと同じです。)
 
 
人魚の肉はものすごく美味しくて、しかも食べると不老不死になるもの。
 
 
不老不死は人類の「夢」の一つかもしれないけれど、もしも自分だけがそうなったら、本当に幸せなのか・・・?
 
 
八百比丘尼の伝説は、それを物語っています。
 
 
親しくなった人、愛した人が、年を取って一生を終えるのに、自分だけが永遠の時の中に取り残されたまま・・・
 
 
それは、耐えられないほどの怖ろさだと思います。
 
 
人魚を描いた作品で、私が一番印象に残っているのは、高橋留美子さんの漫画「人魚の森」です。
 
 
この話、かなりホラーで怖いのです。創作している人魚の設定が、なんかもうすごく怖くて悲しいです。
 
 
アニメ化もされています。おすすめですよ。

 

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