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こんにちは。
ひな人形の7段飾りの場合、3段目にくるのは「五人囃子(ごにんばやし)」ですね。一番並べるとき、ややこしくてイラっとする人たちです。
これまでみてきた「親王・内親王」と「三人官女」は、京都の公家(天皇家)の婚礼を設定にして作られたものでした。でも、ひな人形が今の形になったのは、江戸時代に入ってからです。
「江戸庶民」が「ひな人形」を作ったとき、京都式の官女や随身たちに、なぜか江戸式の五人囃子(ばやし)を加えて1セットにしたのです。
つまり、いわゆる「十五人揃い」、(内裏雛,官女,五人囃子,随身,衛士)の内、五人囃子だけは、江戸式のものなのです。
関西では、全て京都式のひな人形もあります。その場合は。「五人囃子」はなく、代わりに「五楽人」が雅楽器をたずさせて、雅楽を奏でる形になっています。
五人囃子(ごにんばやし)とは
五人囃子とは、少年たちによる楽師隊のことです。まだ元服前の男子なので、髪を結ばずに少年の髪型をしています。
彼らは、お内裏様とお雛様の 「結婚式の祭り囃子」を演奏し、宴の盛り上げ役なのです。
ですから、五人とも、選りすぐりの「楽の名手」で、しかも「秀才」でした。
この五人が奏でているのは、「能楽」です。
「能楽」は無形文化遺産に登録されている日本の伝統的な音楽ですが、室町時代に始まったといわれます。そして、江戸時代には「武家の式楽」として確立したのです。
能楽は、「シテ方」「ワキ方」「地謠」「囃子方」で構成されています。このうちの「地謠」1人、「囃子方」4人で構成されるのが、五人囃子です。
一方、公家中心の京都では雅楽に使用する楽器が好まれました。
ですから、京都式の場合は「雅楽の楽人」(五楽人)となるんですよ。ちょっと違う構成なのです。「五楽人」は、雅楽器をそれぞれ持っています。
五人囃子の並べ方
「五人囃子」は、演奏を担当する囃子方(はやしかた)4人と、声楽を担当する謡い手(うたいて)1人に分かれています。
★「五人囃子」の持ち物は、向かって左から、こうなります。
「太鼓(たいこ)」
「大鼓(おおつづみ)」
「小鼓(こつづみ)」
「笛(ふえ)」
「謡い手」
★「五楽人」の場合、並び方は、向かって左からこちらです。
「横笛(よこぶえ)」
「篳篥(ひちりき」)
「火焔太鼓(かえんだいこ)」
「笙(しょう」)
「羯鼓(かっこ)」
五楽人のほうがメロディー楽器が多いので、演奏がより華やかになりそうですね。
「七楽人」となる場合もあって、その際は「琴(こと)」と「琵琶(びわ)」が加わります。
※京都式の「五楽人」や「七楽人」は元服前の少年ではなく、風格ある大人の男性の場合が多いです。
五人囃子それぞれの担当楽器
(1)「太鼓」
太鼓(たいこ)は、いわゆる「締太鼓」のことで、構造は基本的に鼓(つづみ)と同じです。四拍子のリズムを主導する役割を担っています。
能楽では、神、霊、鬼畜といった、非人間的なものが登場する場面、怪異的な内容の曲のみに使われます。
座っている人形で、両手にばちを持つ形になっています。
(2)「大鼓(おおつづみ)」
大鼓(おおつづみ)は、材質や構がはほぼ「小鼓」と同じで、ひとまわり大きい太鼓です。音色の種類は、右手の打ち方によって分けます。
立っている人形です。
左手で持ち、右手で叩く楽器なので、右の掌が横を向いています。
(3)「小鼓(こつづみ)」
小鼓(こつづみ)は、小ぶりの太鼓で、肩に担いで叩きます。
大鼓よりも柔らかい音を出します。
立っている人形で、左肩のほうに向け、右手を上げています。
(4)「笛・能管(のうかん)」
「笛・能管(のうかん)」は、竹でできています。笛はメロディ楽器ですが、能楽では主にリズムを刻む奏法で使われます。
また管内に細い竹を1本はめ込んでいるので、「ヒシギ」と呼ばれる鋭い最高音を出すことができます。
座っている人形で、両手を前に出しています。
(5)扇
「謠(うたい)」とよびます。声楽担当なので、楽器を持たず扇を持っています。
座っている人形で、両手を膝の上に置いています。
まとめ
「五人囃子」は、親王の結婚式の盛り上げ役です。それにしては、太鼓が多いなと不思議に思っていたのですが、謎が解けました。
ひな人形は、江戸時代に、主に「江戸」で成立したものなので、「五人囃子」だけ江戸の文化が混ざったということなのです。
成立時期や場所の影響が、後々まで文化として残るというのが、とても興味深いです。(´・ω・)
★五人囃子は「能楽」を囃(はや)している。
★ひな人形の中で五人囃子だけ、京都式(公家文化)ではなく江戸式。
★京都式の場合は、五楽人や七楽人で雅楽器を持っている。
★五人囃子は元服前の少年、五楽人は成人男性。
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