この記事を読むのに必要な時間は約 16 分です。


 
『源氏物語』は大長編なので登場人物も多く、話がすすむとともにその官位や暮らしぶりは変化します。
 
 
今回は本作品の女性キャラを厳選し、登場順にご紹介しますよ!
 
 
※紹介にあたり、①光源氏(光る君)と関わりをもった女性 ②光源氏と男女の仲にはなっていない女性 ③光源氏没後「匂宮」以降に描かれた女性 にわけました。

 
 

スポンサーリンク

①光源氏と関わりをもった女性

1.藤壺

 
 
桐壺帝の先代の第4皇女(四宮)。亡き更衣(=光源氏の生母)によく似ているとのうわさを聞いた桐壺帝の言葉に従い、入内する。与えられた局が藤壺で、出産後には中宮となった。
 
 
光源氏が最も慕った高貴な女性。「若紫」に描かれる逢瀬で身ごもり、のちの冷泉帝を生む。その出生にまつわる秘密で生涯悩みつづけた。桐壺院の崩御後に出家するも、宮中のはなやかな催し事を好んだ。「薄雲」の巻で亡くなったので薄雲女院(うすぐもにょいん)とも呼ばれる。

 
 

スポンサーリンク

2.葵の上

 
 
東宮(=朱雀帝)から入内を望まれていたが、光源氏元服のとき、父の左大臣が添い臥し(そいぶし)として差しだした。そのまま光源氏の北の方(正妻)になる。母は、桐壺帝の異母姉妹。
 
 
家柄よし器量よしでとにかく気位が高い。彼との子(=のちの左大臣・夕霧)を生んだあと、六条御息所の生霊が原因で亡くなった。同腹の兄弟に、光源氏の生涯のライバル・「頭中将」がいる。

 
 

3.空蝉 (うつせみ)

 
 
受領の夫(=伊予介)をもつ中流階級の女性。方違えに来たハイティーンの光源氏に襲われる(時代背景的にままあった)。その美しさに心を動かすも、「夫のない頃のわが身であったら」と交流を絶とうとする。2度目の逢瀬から逃げるとき、蝉の抜け殻のように、着ていた衣1枚を残した。
呼び方は「空蝉の 身をかへてける 木の下に なほ人がらの なつかしきかな」の歌による。夫の死後に出家し、六条院で世話を受けた。

 
 

4.軒端の荻(のきばのおぎ)

 
 
空蝉が逃げたので結果的に一夜の相手をつとめる。同じ棟に寝ていただけでとばっちりを受けた(…)。継母の空蝉よりも若く美しい。「ほのかにも 軒端の荻を 結ばずば 露のかごとを 何にかけまし」の、「ほんの仮初めに契りを結んだ者」の意か。
 
 

5.六条御息所

 
 
六条にいた頃、若き光源氏(年下)のターゲットとなる。彼女を軽んじた光源氏を桐壺帝が直々に注意するほど、貴い身分だった。故・東宮に嫁いで子を生んだため御息所と呼ばれる。父は、かつて政争にやぶれた大臣との説あり。
おさえつけた情念が生霊・死霊となって何人もの人を苦しめた。世間から悪く言われること・光源氏が他の女性をほめることが何よりもつらい。

 
 

6.夕顔

 
 
五条の、白い夕顔の花が咲く家に住んでいた。光源氏の乳母のお隣さん。
 
 
高貴な身分ではなく、おっとり系。誰とも知らない男を通わせつづけたためか、現代では娼婦みたいといわれがち(?)。人目のない所に連れていかれても文句を言わない。その家で六条御息所らしき生霊に憑かれ、息絶えた。
 
 
死後、頭中将の正妻(=右大臣家のお嬢)の目から逃れていたこと・娘を1人生んでいたことが、女房の右近から明かされる。頭中将の歌により「常夏(とこなつ)の女」とも呼ばれる。

 
 

7.紫の上

 
 
「若紫」ではまだ10歳余りで、北山の寺にいた。祖母(尼君)と母(側室)亡きあと、父(=藤壺の兄・兵部卿宮)に連れていかれそうだった所を、光源氏が二条院に引き取る。
 
 
高貴な藤壺の身がわりとはいえ、光源氏に最も長く愛された女性。正式な結婚の儀式を経ておらず、世間的にはあくまで葵の上没後の正妻格にとどまる。
 
 
六条院の春の御殿に住み、女三宮が降嫁(こうか)するまで女主人の風格があった。明石の姫君のお世話から皆の衣選びまでこなす、光源氏にとってなくてはならぬ人。夕霧もホレるほど美しく、性格も良く描かれる。弱点は、後ろ見をしてくれる有力な親族と、実の子どもがいなかったこと…。

 
 

8.末摘花

 
 
故・常陸宮(ひたちのみや)の娘。皇族の血をひくが、父の死後は没落し、住まいも荒れていた。
 
 
はにかみ屋で、流行を追うのが苦手。光源氏は頭中将とバトった末に彼女を手に入れるが、赤くてゾウのような鼻にドン引きする。髪の毛はきれい。末摘花は「紅花」の異名で、赤い鼻を意味する。
 
 
「蓬生(よもぎふ)」の巻で生活に困っていたところ、無事引き取られた。気高く辛抱強いのが長所だが、ギャグ要員。

 
 

9.源典侍(げんのないしのすけ)

 
 
桐壺帝の女房で、たしなみ深く蓮っ葉な老女(50代後半)。光源氏にアタックし、ちょっかいをかけられることを喜ぶ。琵琶が上手。頭中将も参戦し、若い貴公子2人にゲーム感覚で取り合われる(…)。出家してからは、朝顔の姫君の弟子となった。
 
 

10.朧月夜 [尚侍(かん)の君]

 
 
春、宴の夜に出会った、右大臣の6番目の娘。初登場シーンで「朧月夜に似るものぞなき…」と口ずさむ。
 
 
朱雀帝に入内する前なのに光源氏と密会を重ね、父と姉(=弘徽殿の女御)を怒らせた。左大臣家のムコ・光源氏にとってもスリル満点の体験で、彼の須磨行きの遠因になったといわれる。あでやか系。
 
 
「若菜下」で光源氏から尻軽だったと回想されるが、朱雀院のあとを追って出家した。

 
 

11.花散里(はなちるさと)

 
 
ひょんなことから関係ができ、最初の方では存在感がうすい。桐壺帝の女御を姉にもつが、帝の崩御後はわびしく暮らしていた。「花散里」の巻に「橘(たちばな)の 香をなつかしみ ほととぎす 花散る里を たづねてぞ訪(と)ふ」の歌がある。
 
 
優しさ・気立てのよさを見込まれ、六条院で子どもや孫の監督をまかされる(夕霧とか)。その夕霧に、見た目はパッとしないと評されている。

 
 

12.明石の君

 
 
へんぴな明石の浦に、父・播磨守(=明石の入道)と母と住んでいた。入道は光源氏と血縁関係があり、お膳立てに奔走した。
 
 
ひかえめで、受領(ずりょう)の娘という身分をわきまえながら、決めるところはキチッと決めるかしこさが魅力。光源氏との子(=明石の姫君)が入内するときに後ろ見をつとめ、宮中にあがるという大出世をとげた。

 
 

13.女三宮

 
 
第二部の「若菜上」で突然登場する、朱雀院の秘蔵娘。母は、院がかつて寵愛した女性(=藤壺の異母妹)だが、更衣のまま亡くなった。朱雀院は、出家する自分にかわって、最も信頼できる光源氏(すでにアラフォー)に娘の庇護を頼んだのだ。
 
 
六条院に降嫁し、紫の上を頂点とする世界の秩序を崩壊させた。内親王という高い身分ゆえなので、本人に悪気はない。幼くぼんやりとした性格で、猫が好き。
 
 
頭中将の長男・柏木に好意を寄せられ、はからずも密通をおかし、男の子(=薫)を生んだ。六条御息所にとりつかれたとき以外、終始ボンヤリしている。

 
 

② 光源氏と関わりのない(男女の仲ではない)女性

1.桐壺の更衣

 
 
光源氏の生みの母。
 
 
父・大納言の言いつけで宮仕えにあがったところ、桐壺帝の寵愛を一身に受けてたくさんの人にねたまれた。光源氏が数え3歳のときに亡くなる。父の身分のせいで生前は更衣どまりだった。描かれない部分が多く、ナゾが残る人。

 
【関連記事】  



 
 

2.朝顔(槿)の姫君

 
 
式部卿宮(しきぶのきょうのみや)の娘で、光源氏の従妹にあたる。
 
 
父の死後、光源氏に言い寄られても、文(手紙)のやりとりだけでとどまろうと決意している。斎院(賀茂神社にお仕え)をつとめたので、朝顔の斎院・朝顔宮ともいう。

 
 

3.秋好中宮(あきこのむちゅうぐう)

 
 
伊勢の斎宮(さいぐう)をつとめた姫。故・東宮と六条御息所の娘。じつは朱雀院に想いをよせられていた。
 
 
光源氏の後ろ見のもと、冷泉帝の中宮となるが、子は生まれなかった。秋の草花を好む。

 
 

4.明石の姫君

 
 
光源氏唯一の娘。生母(=明石の君)の身分が今一つなため、後ろ見もかねて、正妻格なのに子がいない紫の上の御殿で育てられた。
 
 
光源氏の支持のもと、東宮(=朱雀帝と承香殿の女御の子・冷泉帝の次に即位)元服の際に入内し、桐壺に住む。匂宮など多くの子を生み、第三部にも中宮として登場する。

 
 

5.玉鬘(たまかずら) [尚侍の君]

 
 
権力者・頭中将(内大臣に出世)を父に、亡き夕顔を母にもつ姫。
 
 
4歳から20歳頃まで、夕顔の乳母たちと筑紫や肥前(九州)に住んでいた。都に戻り、六条院の夏の御殿に一時引き取られる。
 
 
夕顔の面影をもとめる光源氏の求愛をかわし、右大将(=髭黒・東宮の叔父)の正妻におさまる。冷泉帝からも所望されたが、自分の名誉を守るための立ち回りが上手かった。玉鬘十帖のヒロイン。

 
 

6.雲居雁(くもいのかり)

 
 
玉鬘と同じく、頭中将の娘。「雲居の雁もわがごとや」の歌からこう呼ばれる。生母が再婚したあと、大宮(=葵の上の母)のもとにあずけられた。
 
 
夕霧とは幼馴染。父親同士(=頭中将と光源氏)が意地をはりあっていたが、「藤裏葉」の巻で結ばれる。それからは子育てに忙しくなった。

 
 

7.藤典侍(とうのないしのすけ)

 
 
光源氏のお供・惟光(これみつ)の娘。
 
 
五節(ごせち)の舞姫をつとめていた頃、夕霧にアタックされる。夕霧との間にもうけた姫(=六の姫君)は、匂宮の正妻になった。

 
 

8.近江の君

 
 
頭中将の娘…?
 
 
近江の国で育っており、おせじにも教養があるとはいえない。異母姉妹・弘徽殿の女御(=冷泉帝の女御)に仕える。早口なのがたまにキズ。ギャグ要員。

 
 

9.女二宮 [落葉の宮]

 
 
女三宮の異母姉。母は、身分の低い更衣。
 
 
柏木に申し込まれて縁組みをしたが、内親王としてのプライドが高く、彼の死後は身の振り方に困った。
 
 
夕霧からお世話をしましょうと申し出られたときも、煮え切らない態度をつらぬいた。

 
 

③ 『源氏物語』第三部に描かれた女性

1.八宮の長女 [大姫君]

 
 
父は、桐壺帝の弟親王(=宇治の八宮)で、一時は東宮になるかもとウワサされていた人。母は大臣家の娘だが、早くに亡くなる。
 
 
政治の表舞台には出れない父と、宇治の山荘に移り住んだ。八宮と仲良しのに見そめられるが、さかりを過ぎた自分の身をあきらめ、ひたすら妹の将来を心配する。気高く、しっかりした性格。不器用な薫に悩まされ、スレ違いがつづくうちに病気になり、亡くなった。

 
 

2.八宮の次女 [中の君]

 
 
姉とともに、父・八宮の手で育てられた。
 
 
宇治にいる間、なんやかんやあって匂宮と契り、都の二条院に引き取られる。彼の浮気な性質にハラハラしながらも男子を出産し、手厚くお世話されるまでにのし上がった。

 
 

3.浮舟

 
 
『源氏物語』至上、最も薄幸な女性。大姫君と中の君の異母妹。美しいが、父に見放され、母の身分も低いため、どこに行ってもあつかいが悪い。
 
 
評判を聞きつけた薫と匂宮の双方から言い寄られる。そのじつ、薫にとっては亡き大姫君の身がわりであり、身分違いの匂宮からはもともと軽んじられていた。苦悩のすえ宇治川に身投げしたが死にきれず、仏門に入ってしずかに生きることを決意する。
 
 
呼び方は、「たちばなの 小島は色も 変はらじを この浮舟ぞ ゆくへ知られぬ」で、自身をはかない浮舟にたとえたことによる。

 
 

おわりに


 
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
 
 
個人同士の関係というよりも、両親や仕事(?)のツテで、男女の縁を結ぶ例が多かったようですね。
 
 
本作は、平安中期の王朝を舞台にしているからこそ成り立つ物語。
 
 
現代の価値観にもとづいて解釈してしまうことには、慎重でありたいものです。