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「花祭り」という言葉を、聞いたことがありますか?
 
 
仏教系の学校は学校行事の1つになっているのでご存知でしょう。
 
 
「花祭り」はお釈迦様の誕生日の記念日です。このような「仏教行事」はクリスマスのようなキリスト教行事と比べると、「イベント」として軽いノリで取り上げられることが少ないです。
 
 
もしかしたら日本人は仏教徒が多いので、イベントのように軽いノリで遊びにしてはいけない、もっと厳かなものだと思っている人が多いのかもしれません。確かに、ぞんざいに扱うと罰当たりな気もします。
 
 
やはり日本人の多くは、仏教に対して真摯(しんし)な気持ちで向き合っているのだと思います。
 
 
今回は、仏教行事の「花祭り」についてお伝えします。

 
 

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花祭りは、仏陀の誕生日


「花祭り」は、仏教の開祖、お釈迦様(仏陀)の誕生日をお祝いする日です。ですから、毎年、決まった日に行われます。
 
 
そのお釈迦様の誕生日は、4月8日です。
 
 
「花祭り」は、もともと「灌仏会(かんぶつえ)」と呼ばれていました。その別名なのです。他にも
 
 
「降誕会(ごうたんえ)」
「仏生会(ぶっしょうえ)」
「浴仏会(よくぶつえ)」「龍華会(りゅうげえ)」
「花会式(はなえしき)」
 
などと呼ばれることもあります。「花祭り」が一番覚えやすくきれいな感じがします。
 
 
「花祭り」はお釈迦様の誕生日なので、日本だけではなくインドや中国など他の仏教国でも、古くから行われています。
 
 
日本で初めて行われたのは、記録によると、推古天皇の時代(606年)です。聖徳太子が摂政だった飛鳥時代ですね。仏教が日本に伝来して広まった時期と重なります。なんとなく納得ですね。

 
 

釈迦(仏陀)の誕生


「釈迦」は、「お釈迦様」と親しみを込めて呼ばれることが多いです。
 
 
お釈迦様のインド名は「ゴータマ・シッダッタ(シッダールタ)」、中国に渡って「仏陀(ブッダ)」「釈迦(ジャカ)」と呼ばれるようになりました。
 
 
ここでは、お釈迦様と呼ぶことにします。
 
 
お釈迦様は紀元前7世紀~紀元前5世紀ごろに、インド北部の「ルンビニー園」という花園で生まれました。
 
 
お釈迦様の母・マーヤは、当時の習慣で、出産のため生家へ向かう途中、この「ルンビニーの園」で休憩しました。
 
 
そして、そこに咲いていた無優樹(ムユージュ)の花びらに触れたとき、急に産気づいてお釈迦様が生まれたという伝説が残っています。

 
 

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天上天下 唯我独尊

 
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お釈迦様は生まれてすぐに立ち上がり、東西南北それぞれに7歩あゆみ、右手をあげて「天」を指し、左手で「地」をさし、「天上天下 唯我独尊(てんじょうてんげ ゆいがどくそん)」と言ったと伝わります。
 
 
スーパーベイビーですね。
 
 
「天上天下 唯我独尊」とは「生きとし生けるものすべてが、尊い命を持っている」という意味です。
 
 
お釈迦様の母・マーヤは、お釈迦様を出産後7日目に他界したと伝わります。産後の肥立ちが悪かったのでしょうか。
 
 
仏教では、自然界には命が命を産み育てるという大原則があると考えられます。
 
 
つまり、すべての生き物は「他」を生かし「他」に生かされているという大原則なのです。すべての命が、お互いを支え合って生きている、それはやさしくあたたかい世界です。
 
 
「天上天下、唯我独尊」という言葉は、命の尊厳とすべての生命が共生していることを讃える言葉でもあるのです。
 
 
お釈迦さまはシャカ国の王子として生まれましたが、29歳のとき出家しました。その後、35歳で悟りを開いて「仏教の開祖」となったのです。
 

 

花祭りの由来

 

 
「花祭り」はインド・西域で行われていた仏教行事が、中国を経由して日本に入って、アレンジされたものと考えられています。
 
 
その起源はインドの仏像や仏塔の周りをまわりながら礼拝する「行道」や、輿に仏像などを乗せ行列を組んで寺の外を練り歩く「行像」という行事だったといわれます。
 
 
日本で最も古い仏生会は、奈良の法隆寺の聖霊会(しょうりょうえ)のものです。

 
 

「甘茶」をかける理由は?

 

 
「花祭り」には、花御堂に誕生仏(釈迦像)をまつり、それに「甘茶(あまちゃ)」をかけてお祝いします。
 
 
その慣習はお釈迦様が誕生したときに9頭の竜(八大竜王)が天からやってきて「香湯」を注ぎ、それを産湯にしたという言い伝えに由来します。
 
 
竜の「香湯」というのは伝説上のものなので、中国ではその代わりに「香味料入りの糖水」を用いるようになりました。
 
 
日本では、江戸後期から産湯にあたるものとして灌仏桶に「甘茶」を入れ、ひしゃくで誕生仏(釈迦像)に「甘茶」をかける風習がうまれました。。

 
 

甘茶(あまちゃ)とはどんなお茶?

 
甘茶はヤマアジサイの変異種「アマチャ」の若葉を煎じて作られるお茶です。
 
 
葉を蒸して揉み乾燥させることで、砂糖の200百倍~1000倍もの甘味成分が生成されるそうです。甘いお茶だから「甘茶」なんですね。そのまんまです。
 
 
甘茶に含まれる甘味成分は、「フィロズルチン」「イソフィロズルチン」というものだそうですよ。
 
 
お茶特有のダイエット・美容効果があり、抗アレルギー作用もあるので、花粉症にも効き目があるそうです。市販されていますよ。
 
 
手軽なティーパックにもなっています。

 

おわりに

 

 
「花祭り」(降誕会)は、「お釈迦様の誕生日をお祝いする」にとどまらず、「生きとし生けるものすべての命の尊さと、共生の大切さを讃える日」なのです。
 
 
素晴らしい思想だと思いますが、残念なことに「花祭り」の風習は、年々失われつつあるようです。
 
 
今ではかろうじて「仏教寺院」で宗教的な行事として行われるぐらいですが、昔はその地方の人々の生活に根差した「年中行事」の1つだったのです。

 

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