この記事を読むのに必要な時間は約 11 分です。
今年6月、奈良に遊びに行ったら、商店街にツバメの巣があるのを発見しました。
可愛いひなが3羽、フンが落ちないように麦わら帽子で工夫されているところから、毎年のように来るのかなあと思われます。
幼いころ祖母から聞いた縁起のよいツバメの巣、小学生ころ通学途中のいくつかの家に巣づくりしているのを毎年見ていたのですが、最近は見かけないので懐かしく感じます。
今回は、ツバメの巣が昔から縁起がよいと思われている理由とそのご利益についてお伝えします。
目次
渡り鳥ツバメの不思議な習性
◆意外と知らない?ツバメの1年
ツバメは渡り鳥、夏の時期を日本で過ごす「夏鳥」です。
春になると、フィリピンやベトナム、インドネシアなど遠い南の方からはるばる日本へとやってきます。その飛行距離は5,000kmに及ぶこともあるのだとか!
日本へは沖縄を経て3月ごろに九州に到着します。そこから本州各地へ渡り巣をつくって産卵、子育てをするのです。
ツバメはかならず屋根のある民家や納屋などの人工物に巣をつくります。外敵から身を守るためにあえて人のいる場所に巣づくりをするのだそうです。かしこいです。
親鳥は、田んぼや水辺にあるワラや枯れ草を口にくわえて運びこみ、それを粘着性のある唾液で固めて巣をつくっていきます。
◆ツバメの子育ては餌やりが大変!
ツバメは1回の子育てで3~5個ほど卵を産みます。産卵から孵化まではおよそ2週間でメスの親鳥が温めます。
孵化してから巣立ちまでは3週間ほどで、この間にヒナはたくさん餌を食べどんどん大きくなります。
ツバメの餌はカ、ハエ、ガ、アブなどの小さな虫です。ヒナは1羽で1日100匹以上も虫を食べるそうです。
餌やりは親鳥がオス・メス協力して行います。かなり大変そうですね。
ヒナは巣立ち後もしばらく巣の近くにいて、親鳥から餌をもらいます。だんだん遠くまで飛べるようになって餌をとる力もついてくると、巣から旅立つ日がきます。
でも、巣立ったヒナと親鳥は、巣を離れた後も同じ集団の中で共に暮らします。
その集団は数千羽から数万羽の大集団で、夏の間、水辺のヨシ原などにねぐらを作ってたくさんの餌を食べ、秋の大移動に備えるのです。
そして秋になると、ツバメたちは南へ南へと長い旅に出ます。九州、沖縄から海に出て、暖かい南方へと渡っていくのです。
そこで冬を過ごした後、次の春に、再び日本へとやって来きます。スケールの大きい暮らしをしていますね。
今年見かけたあのツバメの親鳥も、東南アジアから来たのかと思うと「お疲れさま」とねぎらいたくなります。↓
◆ツバメの巣作りの場所や日程
ツバメが巣作りを行うのは、3月の終わりごろから6月の終わりごろまでです。
ツバメたちがつがいになる相手を見つけて巣づくりをし、産卵、孵化、子育てを経て、ヒナが育つまでの全部の期間は1か月半ほどです。
ツバメが巣で暮らすのはこの期間なので、街中で私たちがツバメを見かけるのもこの時期と重なります。
ツバメの巣が縁起がよいといわれる理由
ツバメの巣が縁起が良いとされるのは、 快適な場所を選んで巣を作るというツバメの習性によります。
長旅する渡り鳥のツバメは、住環境のよしあしがよくわかっていて、じめじめした湿った場所や外敵に狙われそうなところ、雨風の強い危険なところには巣を作らないのです。
実際に、ツバメは暗く湿った「鬼門」には絶対に巣を作らないといわれます。
また、外敵に狙われないために人通りの多いところに作る工夫もしています。昔、お店の軒下にツバメが巣をつくると繁盛すると聞いたことがありますが、繁盛している店は人の出入りが多くツバメにとっても明るくて風通しのよい環境だからなのでしょう。
このツバメの巣づくりの場所選びの能力は、風水の吉兆の判断そのものです。風水は気象学ですから、参考になりますね。
ツバメの幸運のご利益は?
ツバメの巣がもたらしてくれる幸運は、どんな種類のものでしょう。昔から言い伝えられているご利益を紹介します。
◆商売繁盛のご利益
私が幼いころ大人からよく聞いたのは、この商売繁盛のご利益です。(関西地方です)
ツバメが巣を作ると商売繁盛のご利益がある、これは先ほど書いたように、ツバメの巣を作る場所は人通りが多く明るく快適な環境だからですね。
ツバメの天敵はカラスや蛇です。カラスや蛇は人間を恐れるので、人の出入りの多いところには近寄りません。近くにいるだけで人間がツバメにとって巣と子供を守る存在になっているというのは、なんだかうれしいです。
お店にとって人の出入りが激しいということは、それだけ商売が繁盛しているということなので、昔のお店の人(私の周りの人)は、ツバメが巣をつくってくれると喜んでいました。
◆子宝に恵まれるご利益
ツバメが日本にやって来るのは産卵、子育ての時期です。1羽で5個くらいの卵を生み、ツバメによってはその春のうちに2回産卵・子育てを繰り返します。
子育てをするためにツバメが軒下を借りにくるというところから、その巣をつくった家の人にも子宝のご利益があるという発想です。
子だくさんの「うさぎ」や「犬」に子宝のご利益があるといわれるのと似ています。
なかなか子宝に恵まれないお家では、わざわざツバメが巣作りをしやすいように環境を整える地方もあったそうです。
◆無病息災のご利益
ツバメが巣づくりをする家は、家族が無病息災で過ごせるという言い伝えがあります。
これはツバメが巣づくりをする家は清潔で環境がよいということに由来します。
ツバメの主食はハエや蚊などの小さな害虫です。衛生状態の悪かった昔は、これらの害虫はツバメが巣づくりをする初夏にたくさんわいて出ました。とくに蚊は怖い伝染病の原因(媒体)になります。
ツバメがこれらの害虫を食べてくれるため、ツバメの巣がたくさんある地域では伝染病が蔓延しにくいといわれたのです。
◆災害に見舞われないご利益
ツバメは危険察知能力が優れているので、不幸のある家には近寄らないといわれてきました。
ツバメの好む環境は明るくて風通しのよい人通りのある雰囲気のよいところです。
そうした家の家族は、明るく健康で人間関係が良好なイメージがありますね。
また、ツバメの巣のある家は火事にならないとも言われますが、それもツバメの優れた観察力からきているようです。
ツバメは巣づくりをする場所が安全かどうか環境をしっかり調査してから選ぶので、ツバメが選ぶ家はきっと火事など出さないきちんとした家だろうという発想です。
言い伝えなので科学的根拠はありませんが、昔から言われ続けていることには意味があると私は思っています。そういうものは、統計的に正しいと思えるのです。
おわりに
昔から日本では、ツバメの巣は幸運の象徴としてありがたいと思われてきました。
ツバメの巣があると、フンを落とされて玄関掃除がたいへんですが、はるか遠くからやって来てまた飛んでいく小さなツバメたちの「仮の住処」だと思うと、ご利益のあるなしにかかわらず見守ってあげたいと思います。
【関連記事】