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こんにちは、このかです。
 
あなたは、江戸川乱歩の作品を読んだことがありますか。
あったとしたら、何を思い浮かべるでしょう。
 
 
「少年探偵団」? それとも「黒蜥蜴」?
 
 
私は、明智小五郎が素人探偵として登場する初期の作人『D坂の殺人事件』や『屋根裏の散歩者』が好きです。
 
 
あー、でも、『孤島の鬼』は別格だと思います。
 
 
今回ご紹介する『人間椅子』は、明智小五郎は登場しませんが、かなり人気の高い乱歩作品です。
 
 
人気の秘訣は、題名がネタバレになってますが、「人間が椅子の中に入っている」というおぞましい発想、そして、それを読み手にひしひし感じさせる表現力と構成の見事さにあります。
 
 
短編なので読むのに時間もとらず、江戸川乱歩の(初期の)作風がわかる、「始めの一冊」におすすめの作品なのです。

 
 

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もしも椅子の中に人が入っていたら・・・

 

 
江戸川乱歩は、耽美主義作家でもあるので、作品の中に「麗人」と「醜悪な人」を出して対比させるのがうまいです。
 
 
明智探偵(今回は登場しません)は、もちろん麗人ですよ。
 
 
今回の主な登場人物は、2人。
 
 
1人は、有名な女流作家の佳子、もう1人は手紙(原稿)を送ってきた男です。
 
 
佳子は若く美しい女流作家で、外務省書記官の妻です。立派な洋館のお屋敷の奥様なのです。一方、男は、世にも醜い容貌の持ち主の椅子職人でとっても貧乏です。
 
 
この対比を押さえておくのがポイントですよ。
 
 
それでは、あらすじです。

 
 

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始まりは1通のファンレター?

 

 
売れっ子女流作家の佳子の元には、毎日多くの未知の崇拝者達からファンレターが届きます。
 
 
その日、届いた郵便物の中に、原稿用紙らしいかさ高いものがありました。
 
 
自分の書いた小説を読んでほしいと送ってくるファンもいるので、今回もそんな感じかと思い、とりあえず表題だけでも読んでみようと思って、佳子は封を切りました。
 
 
中には、予想通り原稿用紙が入っています。
 
 
でも、その原稿は、表題も名前も書かれていません。ただ「奥様」という呼びかけの言葉から始まっていたのでした。

 
 

原稿・ある男の告白

 

 
その原稿用紙は、ある男の【告白文】でした。
その男が、どんな人物かというと・・・
 
 
「私は生れつき、世にも醜い容貌の持主でございます。これをどうか、はっきりと、お覚えなすっていて下さいませ。」
   ↑
はい、乱歩は、これを読者にはっきり覚えておくように伝えています。
 
 
男は、お化けのような醜い顔をしていて、その上たいへん貧乏な椅子職人です。そして、現実を忘れて、身の程知らずにも、甘美で贅沢な、裕福な麗人がするような「夢」にあこがれていたのです。
 
 
そんな彼は、現実の生活に絶望していましたが、あるとき、ふと頭の中にとんでもない考えが浮かびます。
 
 
夢のように荒唐無稽で、非常に不気味な事柄、それは、大きな肘掛け椅子の中に人間が1人入れるだけの空間を作ることでした。そして、本当にその中に人が2~3日入っていても、不便を感じないような椅子を作ったのです。
 
 
そうして、男は椅子の中で生きる「人間椅子」になったのでした。
 
 
注文を受けていた大きな肘掛け椅子(中に入れるように改良した椅子)は、外国人向けの高級ホテルのローンジ(ラウンジ)に置かれることになりました。
 
 
そして、男は椅子が搬送される前に、底にしつらえた出入口から入り込んだのです。

 
 

原稿・「人間椅子」として暮らす男

 

 
この奇妙な行いの第一の目的は、人のいないときを見計らって、ホテルで「盗み」を働くことでした。
 
 
それは簡単に達成できました。
 
 
やがて、男はそこで「盗み」より十倍も二十倍も、喜びを感じる奇怪極まる快楽を発見したのです。
 
 
それは、自分が肘掛け椅子と一体になった人間(=人間椅子)として、人を抱くことの快感でした。
 
 
へ、変態です。( ̄▽ ̄)
 
 
ここら辺の妄想が、変態耽美表現満載です。
 
 
男は、始めは「盗み」の目的を果たせば終わるはずだったのに、この奇怪な喜びに魅せられてやめられなくなります。
 
 
そうして、数カ月もの間、「人間椅子」としてたくさんの人体の体重と感触を体感し、様々な妄想を続けたのでした。

 
 

原稿・「人間椅子」はホテルからある官吏の手に

 

 
やがてホテルの経営方針が変更したため、肘掛け椅子は道具屋の手に渡ります。それから、ある官吏に買い取られて、立派な洋館の書斎に置かれることになりました。
 
 
その書斎は、官吏よりも「若く美しい夫人」が使うことが多かったので、男はたいへん満足します。食事と就寝の時間を除いて、そのしなやかな身体が、いつも男の体の上にあったからです。
 
 
男は彼女にはじめて「ほんとうの恋」を感じ、ただ秘密の愛撫を楽しむだけでは飽き足らず、どうかして自分の存在を知らせようと、いろいろ苦心したのでした。
 
 
挙句の果てに、近頃は夫人が何となく自分の椅子を愛している様に思われるなどと、ストーカー的妄想をしまくるようになりました。
 
 
そして、たった一目会えたなら、もう死んでもいいと思い詰めるようになったのです。
 
 
乙女か? 変態か? どっち?( ̄▽ ̄)

 
 

衝撃の結末・もう1つの手紙が届く

 

 
「奥様、あなたは、無論、とっくに御悟りでございましょう。その私の恋人と申しますのは、余りの失礼をお許し下さいませ。実は、あなたなのでございます。」
 
 
「ギャーーーーーーーーッ」
ゾワゾワゾワってしますよー!
 
 
佳子は、「オオ、気味が悪い」と悪寒を覚え、身震いがやみませんでした。さすがに麗人、気品ある反応です。
 
 
たった一度お逢いしたいという男の願いを叶えてあげようという場合は、ハンカチで合図してくださいと書かれています。
 
 
「は、犯罪者が何を言うとる!」(怒)
という感じですが、ちょうどそのとき、絶妙なタイミングで、女中が今届いたばかりの手紙を持ってきました。
 
 
 
 
その手紙の宛名は、なんと今まで読んでいた不気味な手紙とまったく同じ筆跡でした。
 
 
戸惑いながらも佳子は、それを開封します。すると、それはもう1つの【告白文】でした。
 
 
そこには、実は男が佳子の小説の愛読者で、先に送った原稿は男の創作した作品だということ、そして、是非読んで批評してほしいのだということが書かれていたのです。
 
 
「原稿には、わざと省いておきましたが、表題は「人間椅子」とつけたいと考えてございます。」

 
 

おわりに


最後の最後が、見事なオチでしたー!
読後感の気持ち悪さが、とんでもないです。
 
 
創作作品だというけれど、ほんとは中に入っていたんじゃないの?と思わせる文章。
 
 
世にも醜い男が、思いあがって麗人に憧れる乱歩お得意の気持ち悪い恋。
 
 
そして、数々の耽美表現・・・
 
 
やっぱり江戸川乱歩は初期の短編だ!と思わせる作品です。(絶賛してるつもり)
 
 
短いのですぐに読めますよ。おすすめです。 
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『人間椅子』江戸川乱歩(青空文庫)
 
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