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こんにちは。
宮沢賢治の体表作の1つ「注文の多い料理」店は、賢治の生前に出版された数少ない作品です。不思議で不気味な雰囲気がただよう、魅力的な作品ですね。(*^^)
今回は、そんな不思議な童話「注文の多い料理店」をご紹介します。
目次
『注文の多い料理店』の簡単なあらすじ
★『注文の多い料理店』青空文庫
物語の進行は、簡単に表すとこのような流れになります。
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1.2人の紳士が不思議な西洋料理店を見つけて入店する。
2.山猫の注文どおりに従う紳士たちのようす。
3.自分たちが食べられるのだと気づき、紳士たちは恐怖する。
4.犬に助けられて、料理店は消え、元の世界に戻ることができる。
『注文の多い料理店』の主題
宮沢賢治の作品は、朗読されることが多いです。「音」で聞くと、擬態語の特徴がよくわかります。短編作品なので、25分程度ですよ。(*’▽’)
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この作品の主題は、「自然・命を大切にしない紳士への警告」です。
「紳士」は「人間と人間が発達させている都市文明」の象徴ですね。紳士たちが「西洋かぶれ」であったことからも、欧米から伝わった近代文明の批判と解釈できます。
読書の楽しみ方は、
「2人の紳士と山猫の思惑の相違」
「扉を1枚い1枚開けることの期待感」
「オノマトペ(擬態語)」
「作中に使われる色の意味」
「3度吹く風の意味」
「ラストの暗示」
などがあげられますよ。
いろんな面に焦点を当てて読むと、おもしろいです。
解釈のポイントと感想はこちらです♪(*’▽’)
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詳しいあらすじ
起・2人の紳士が西洋料理店に入る
2人の若い紳士が、すっかり「イギリスの兵隊のかたち」をして、「ぴかぴかする鉄砲」をかついで、「白熊のような犬」を二匹つれていました。
しかし、この本格的な「英国紳士風」の恰好をした彼らの言動は、紳士というには程遠いものでした。
「なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」この言葉から、ゲームのように野生動物の命を奪って楽しむ、下卑た考えがうかがえます。
やがて、2人は山の「だいぶの奥」に入り込み、案内役の猟師は姿をくらまします。すると、突然2匹の犬が、泡を吐いて死んでしまいます。その姿を見て、2人は「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」などと金銭的な損害をなげきます。
そして、もうずいぶん山奥まで来たので、2人は下山しようと思います。そのとき、「風がどうと吹いて」きます。
お腹が空いたと思った2人は、ふと後ろを振り返ると、一軒の立派な西洋風作りの家があり、
RESTAURANT
西洋料理店
WILDCAT HOUSE
山猫軒
と書かれた看板がありました。
2人は喜んで、その西洋レストランの中に入りました。
承・山猫の注文どおりに進行
2人がどんどん店の中に入っていくと、今度は水色の扉がありました。
そして、そこには、黄色の文字で「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」と書かれています。
2人はそれを、「なかなか流行っている店」なのだと解釈し扉を開きました。
次に、赤い扉があり「ここで髪をきちんとして、それからはきもの泥を落してください。」と赤い文字で書かれていました。
よほど偉い人たちが来る店なんだろうと勝手に解釈した2人は、指示通りブラシで靴の汚れを落とします。すると、ブラシがぼおっとかすんで消え、風がどおっと室の中に入ってきます。
それ以降、扉を開くたびに新しい注文があり、2人の紳士はそれに従います。
「金属製の物を外してください。」
「顔にクリームをぬってください。」
「香水を髪にふりかけてください。」・・・。
そして、最後に、「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。もうこれだけです。どうかからだ中に、壷の中の塩をたくさんよくもみ込んでください。」との文字がありました。
転・食べられると気づき恐怖する紳士たち
ここで2人は、どうもおかしいと顔を見合わせます。
この西洋料理店とは、西洋料理を来た人に食べさせるのではなくて、来た人を西洋料理にして食べる店なのだということに気づいたのです。
2人はゾワワワワッと怖くなりすぐに戻ろうと思いましたが、後ろの扉はびくともしません。
そして、その奥の方には大きなかぎ穴が2つついた扉があり、青い眼玉がキョロキョロとかぎ穴からこちらをのぞいていたのです。
2人は恐ろしくて、とうとう泣き出してしまいました。
戸の中では、こそこそと話し声が聞こえ、「早くいらつしやい。親方がもうナフキンをかけて、ナイフをもつて、舌なめずりして、お客さま方を待つてゐられます。」と呼びかけられます。
2人はあんまり心を痛めたために、「顔がまるでくしゃくしゃの紙屑のように」なります。
そして、恐ろしさのあまり、「泣いて泣いて泣いて泣いて泣きました。」
結・犬に助けられて元の世界に戻れる
そのとき、死んだはずの2匹の犬が、後ろの扉を突き破って部屋の中に飛び込んできました。
部屋は煙のように消えて、2人は寒さにぶるぶる震えて、草の中に立っていました。2人の持ち物の上着や靴や財布やネクタイピンが、散乱しています。
「風がどうと吹いて」きました。
専門の猟師(案内人)が来てくれて、猟師の持ってきた団子を食べ、途中で十円だけ山鳥を買って東京に帰れます。
でも、いっぺん「紙屑のようになった2人の顔」だけは、もう元には戻りませんでした。
「注文の多い料理店」はなかなか深い童話です。解釈や感想はこちら♪
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