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文豪を取り上げた本は多いですが、最近、親子で抱腹絶倒しているのが、この作品、「文豪失格」シリーズです。
 
漫画で、文豪エピソードをほとんどギャグ化している作品なので、真面目に文豪を崇めている方は、この先は読まないでくださいね。
 
文豪の人間臭いところを知りたい、親近感を持ちたいという方におススメします。でも、ふざけた取り上げ方をしているけれど、結構、史実に忠実な漫画ですよ。
 
もうちょっと真面目な文豪読本がよいというアナタには、こちらの記事をおすすめします。ご一緒にどうぞ♪ ↓
 
【関連記事】「文豪図鑑」日本の文豪を紹介した本は、これが一番面白い!

 

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「文豪失格」~文豪の恥ずかしい手紙

 

文豪失格(文豪の恥ずかしい手紙編) (RuelleCOMICS) [ 千船翔子 ]

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「文豪失格」シリーズは、今2冊出ています。
 
文豪のキャッチフレーズも、なかなか的を得ていて面白いですよ。
 
夏目漱石ー「気苦労の多い常識人」
芥川龍之介ー「天然ボケの貴公子」
志賀直哉ー「リア充アイドル」
谷崎潤一郎「わがままマゾヒスト」
太宰治ー「破滅型ナルシスト」
中原中也ー「乙女チックな酒乱」
 
こんな感じです。
 
この漫画では、文豪たちは亡くなって、天国で再会しているという設定です。
生前、会ったことのない人同士も、顔を合わせたりしています。
 
芥川龍之介を尊敬しまくっていた太宰治が、「芥川賞」がほしくてほしくてたまらなくて、選考委員の川端康成や佐藤春夫にいろいろヤバイ長ーい懇願の手紙を送ったことなど、これは外せないというおもしろエピソード満載です。
 
文豪たちは、生き方も感性もぶっ飛んでいる人が多くて、おもしろいです。
親しみを感じられると、作品にもとっつきやすくなるのではと思うので紹介します。
 
たくさんエピソードがあるので、その中で、今回は、第2巻3話目の「文豪の恥ずかしい手紙」の中から、よりすぐりの3つをお伝えしますね。

 

(1)芥川龍之介の手紙

この頃、ボクは文ちゃんがお菓子なら、頭から食べてしまいたい位、可愛い気がします。
 
文ちゃんがボクを愛してくれるよりか、ニ倍も三倍もボクのほうが愛している様な気がします。
 
今、これを書きながら、小さな声で「文ちゃん」といってみました。

 
 
出典元:「文豪失格」(実業之日本社)

 
最後の一文に「うほっ♥」となった私。
可愛いじゃありませんか、芥川先生。
中学生の日記みたい。
  
この手紙は、後に奥様となられる「文ちゃん」に送ったものです。
根暗作品ばっかり書いている文豪とは思えない。(すみません。)
 
結構、ストレートにでれでれするタイプなのか???
男前だから、全然大丈夫ですよ、先生。
 
奥様は、さぞかし嬉しかったでしょう。

 

(2)谷崎潤一郎の手紙

一生私をおそばに置いて、お茶坊主のように思し召して、お使い遊ばしてくださいまし。お気に召しませぬ時は、どんなにいじめて下すっても結構でございます。
 
先だって、泣いてみろとおっしゃいましたのに、泣かなかったのは私が悪うございました。
 
今度からは泣けとおっしゃいましたら泣きます。
 
今日からご主人様と呼ばして頂きます。

 
 
出典元:「文豪失格」(実業之日本社)

 
もしもアナタがドSな方なら、谷崎氏とは相性バッチリでしょう。
言葉でいじめて、足で踏みつけてほしいそうです。
 
この手紙は、3番目の妻になる松子さんに、たくさんたくさん送った手紙のごく一部です。毛筆で書いています。
谷崎は彼女からインスピレーションを得て、まず『春琴抄』を、その後『細雪』などを執筆しています。
 
『春琴抄』の丁稚の佐助になりきってる感が、半端ないですね。
ちなみに、彼女のことを「御寮人さま」(「奥様」の関西風呼び方)と呼んで、ひざまずいたりしていたらしいです。
 
もう、勝手にやってください~~!
 
ちなみに、彼女と初めて会ったのは、芥川氏と一緒に、料亭で贅沢ごはん(会席)を食べているときでした。(谷崎氏は、グルメです。)
 
芥川さんとは、文学論争もしていますが、論争中にも一緒にお芝居を見に行ったりする仲良しさんでした。
 
彼は、本物の変態エロ作家ですが、ノーベル文学賞候補者で、しっかり文才はあります。『細雪』は、変態を封印して、「はんなりした美しい日本」を描いているので、真面目な文学作品を読みたい人におススメです。太平洋戦争中、軍に止められながらも、こっそり執筆を続けていた名作です。
 
谷崎の日本語は、間違いなく美しいですよ。

 

(3)川端康成の手紙

お前の指を、手を、腕を、胸を、頬を、瞼を、舌を、歯を、脚を、愛着した。
 
僕はいつともなくお前の腕や唇をゆるされていた。
許したお前は純心で親に抱かれるくらいに思っていたかもしれない。
 
僕をあれほど愛してくれたお前は、それより先の交わりを要求しても、僕を信じてくれそうだった。
 
お前が女だったらと切なく思ったのは幾度だったろう。
 
書くのは苦しいけれど、あんなにまでまとわりついていたお前のからだをそのまま残して別れた僕は……

 
 
出典元:「文豪失格」(実業之日本社)

 
「な、なにをやっておるのだ? 川端先生!?」
 
最後を飾るのは、ノーベル文学賞を受賞された川端康成氏です。
どこのBL小説?と思われたあなた、その感想は、多分間違っておりません。
 
この手紙、「恥ずかしい」どころか、彼は堂々と、全寮制の中高一貫校で、高等学校に上がるときの「課題作文」として教師に出しています。
 
ひょおおおっ、もしも、こんな作文を提出されたら・・・
私なら、でっかい「花まる」をつけるでせう。
上の一番始めの文章は、作文の冒頭ですよ。もう、どうしましょう。


まあ、彼にとっては、美しい初恋だったのでしょう。
熱いロマンチストです。
 
相手の少年は、もちろん実在していて、寄宿舎で同室だった1歳年下の清野(小笠原義人)という少年です。
 
そして、彼への想いをつづった日記を『少年』という題名で出版もしています。(川端康成全集第10巻 新潮社)
 
ちなみに、その後は、しっかり女性とも熱い恋愛経験を重ねていますよ。
 
でも、なんなんでしょう、このエロキモさ。(≧▽≦)
「ゆるされていた」とか「まとわりついていたお前のからだ」とか・・・。
 
谷崎作品を絶賛したり、三島由紀夫に尊敬されてた人というのが、なんとなく納得なのでした。

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