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イザナキ・イザナミの夫婦神は、日本の国土を生んだ後、次々に神様を生みだしました。(神生み)
 
 
この夫婦、とても仲がよかったのですが、ある事件を発端にして破局してしまいます。
 
 
今回はそのお話です。

 
 

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「火の神」出産によりイザナミが!

 

 
イザナギとイザナミは、あいかわらず仲の良い夫婦でした。
 
 
2人は日本の国土を生んだ後、石の神、風の神、海の神、山の神・・・・
 
 
次々にこの世界を神々で満たしていきました。
 
 
でも、そんな2人に悲劇が訪れます。
 
 
火の神カグツチを産み落としたとき、イザナミは産道を焼かれ瀕死の重傷を負ってしまったのです。
 
 
そして、イザナキの必死の看病もむなしく、イザナミは亡くなってしまいました。
 
 
イザナキの嘆きはとても激しく、妻の死の原因になった火の神カグツチを殺してしまいました。
 
 
イザナミをあきらめきれないイザナキは、死者の逝く「黄泉の国」に彼女を迎えに行くことに決めました。

 
 

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イザナキの「黄泉の国めぐり」

 

 

◆イザナミとの誓い

 
 
イザナキは、イザナミのいる「黄泉の国」の御殿に着きました。
 
 
暗くて狭い地下洞窟の中を進んでいくと、御殿の入り口である大きな扉が見えるイメージです。
 
 
その扉の向こうからイザナミの声が聞こえました。
 
 
「ああ、来てくださったのですね。でも、もう少し早くおいでくださればよかったのに……。
 
 
私は黄泉の国の食べ物を食べてしまったので、この世界の住人になり戻ることはできないのです。
 
 
でも、この国の神と交渉してみます。あなたはその間、決して私の姿を見ないでください。この扉を開けないと誓ってください」
 
 
そう言って、イザナミは御殿の扉を閉めました。

 
 

◆イザナキ誓いを破る

 
 
イザナキは決して扉を開けないと誓い、イザナミを待ちました。
 
 
でも、いくら待ってもイザナミは戻ってきません。長い長い時が経ち、イザナキは中のイザナミの様子が気になってしかたがありません。
 
 
そうして、ついに扉を少しだけ開けて室内をのぞきこんでしまったのです。
 
 
御殿の中は真っ暗でよく見えなかったので、イザナキは左右に束ねた髪の左側にさしていた湯津津間櫛(ゆつつまぐし)の歯を1本折って、それに火を灯しました。
 
 
すると、中にいる人影がぼんやりと見えました。
 
 
それは、愛しいイザナミのはず・・・
 
 
ところがようやく見る事ができた妻は、おそろしく変わり果てた姿をしていたのです。
 
 
イザナミの美しかった肌は腐敗してウジがわき、体には恐ろしい8種の雷神(いかづちのかみ)が、生え出ていたのです。
 
 
あまりの凄惨さにイザナキは真っ青になりました。

 
 

◆逃げるイザナキと追うイザナミ

 

 
イザナキは怖ろしさのあまり、一目散に逃げ出しました。
 
 
「私に恥をかかせたな!」
 
 
愛しい夫に醜く変わり果てた姿を見られたイザナミは、黄泉の国の予母都志売(よもつしこめ)という醜女に命じてイザナキを追わせました。
 
 
イザナキは必死で逃げに逃げ、髪に巻いていた蔓草を醜女に向かって投げました。すると、蔓草があっという間に成長してブドウの実をつけ、醜女はその実にかぶりつきました。
 
 
イザナキは、そのすきに必死で逃げ去ります。
 
 
でも、醜女は異常に足が速く、すぐにまた追いつかれそうになりました。
 
 
イザナキは今度は髪の右側にさしていた湯津津間櫛(ゆつつまぐし)を投げました。すると、今度はタケノコが生えてきました。醜女はそれを抜いて、むしゃむしゃと食べました。
 
 
またまたそのすきに、イザナキは逃走します。
 
 
ところが、あともう少しで脱出というところで、イザナミの命によりさらに8種の雷神と黄泉の国の1500もの軍勢が追いかけてきました。

 
 

◆千引の石で黄泉比良坂をふさぐイザナキ

 
 
必死で逃げ去るイザナギは、とうとう黄泉の国と現世(うつしよ)との境にある「黄泉比良坂(よもつひらさか)」に差しかかりました。
 
 
あともう少しです。
 
 
そのとき、近くに1本の桃の木が生えているのをイザナキは目にしました。
 
 
イザナキはとっさにその桃の実を3つもぎとって、追っ手に投げつけました。
 
 
すると、黄泉の国の追っ手は急に苦しみだして逃げ帰ったのです。
 
 
そうして、イザナキは千人の力でようやく引けるくらいの「千引きの石(ちびきのいわ)」を持ってきて、黄泉比良坂を塞ぎました。

 
 

イザナキ・イザナミの離別

 

 
千引の石(ちびきのいわ)をはさんで向かい合ったイザナギとイザナミ。
 
 
イザナキは岩の向こうにいるイザナミに別れの事戸(ことど)を述べました。夫から離別を告げられたイザナミは、恐ろしい呪いの言葉をあびせました。
 
 
「ああ、愛しいあなたが、このようなひどい裏切りを……!
私はこれから1日に1,000人の民草を絞め殺しましょう」
 
 
それにイザナキが答えました。
 
 
「それならば、私は1日に1,500人の新しい命を与えよう」
 
 
こうして2人の離婚は成立し、イザナキは現世の大神としてイザナミは黄泉の国の大神として別々の道を歩むことになったのでした。
 
 
結構、怖ろしげな離婚劇でしたね。
 
 
そして、このときから、現世では民草(人間)が毎日1000人死に、1500人生まれるようになったのです。
 
 
つまり、人間に寿命ができて、全体的に人口はプラスになっていったということですね。

 
 

おわりに

 

 
この話はダメだといわれるとやりたくなるという人間心理を投影したストーリーです。ギリシャ神話や旧約聖書にも似たような話があります。
 
 
見るなと言われると見たくなる、ダメといわれるとしたくなる……
 
 
禁止されるとしたくなる=「カリギュラ効果」と呼ばれる人間心理です。
 
 
イザナキはそれに見事にはまりました。神様なのに人間くさすぎ・・・
 
 
黄泉の国の追手を撃退した「桃」は、中国思想由来の最強の魔除けの果物です。
 
 
中国で桃といえば、不老長寿の実。仙境は「桃源郷」と呼ばれ、不老長寿を司る女仙「西王母(せいおうぼ)」がその桃園を管理しています。
 
 
私は、京都の晴明神社にあるでっかい「桃」が印象的です。平安の陰陽師も桃パワーを信じていたんでしょうね。
 
 
さて、イザナミと離婚したイザナキは、それからどうしたんでしょう?
 
 
次回は、イザナキがその後も1人で神様を生み続け、とうとう優秀なアノ三柱(三貴子)が誕生するお話です。
 
 

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