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「百人一首」は53~62番まで女流歌人で占められています。
右大将道綱母、和泉式部、紫式部、赤染衛門、清少納言。
綺羅星のごとく女流作家が誕生した時代です。
 
その中で唯一の男性歌人が、55番の藤原公任です。
そのことからも、彼が当時の学問・歌壇の中心人物だったと分かります。
 
藤原道長と同世代の人で、若いころは父の頼忠が権勢を極めていた御曹司でした。権力の座が父の従兄・兼家に移った後、摂政は兼家の息子・道長へと続き、主流から外れます。
 
博識多芸で知られる人物で、「三船の才」(追記参照)に称されました。

 

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55.大納言公任(だいなごんきんとう)


 
藤原実方(51番)藤原道信(52番)と親友でした。
息子は藤原忠頼(62番)です。
 
一条天皇と摂政・藤原道長を支える「四納言」の一人といわれます。
(他は、藤原行成・藤原斉信・源俊賢)
 
大変な博識で、和歌や管絃の才もありました。
彼が選んだ「三十六人撰」の歌人が「三十六歌仙」とよばれるようになります。
また、「和漢朗詠集」の編者です。
 
この歌は、京都の嵐山にある大覚寺に行ったときに詠んだ歌です。
当時はすでに枯れていた大覚寺の滝を見て、自らの境遇と重ねて詠んだと思われます。

 
滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞こえけれ

 
【覚え方】滝の名こそ

滝が枯れてその水音は聞こえなくなって長い年月がたったけれど、すばらしい滝であったという名声は今も人々の間に流れ聞こえているよ。

 
名こそ」の「名」は名声や評判のことで「こそ」は強調の係助詞です。
「流れ」は滝の縁語です。

 
かつては見事な滝だったのが枯れてしまった様子を、天下が手から離れてしまった自らに重ね合わせたのでしょうか。
それとも、「三船の才」と称された自らの名声も、この滝のように枯れてしまうのだろうかと自分の名が後世に残るように願ているのでしょうか。
 
栄枯盛衰を具現した滝を見て切なく感じた心情が、ひしひしと伝わります。
 
お友達のお2人の歌はこちらです。(^o^)/↓

追記

「三船の才」
 
平安時代は、天皇が行幸などで船遊びをするとき、三隻の船にそれぞれ「漢詩に優れた人」「和歌に優れた人」「管絃に優れた人」が分かれて乗り、それぞれの才能を発表し合うことがありました。
 
藤原公任は、どの船にも乗るだけの才能があり、まだ若いころ、円融法王が大井川で遊ばれたときには、三隻すべてに乗って活躍したそうです。
 
『大鏡』の中の「三船の才・公任の誉れ」によると、その後、藤原道長が同じく皆を連れて大井川へ行ったとき、「公任はどの船に乗るのだろうか」と尋ねました。そのとき、公任は「和歌の船」を選び、予想通り素晴らしい和歌を詠みました。
その歌がこちらです。
 
小倉山 あらしの風の 寒ければ もみぢの錦 着ぬ人ぞなき
小倉山や嵐山から吹く風が寒いので、紅葉が散って人々にかかり、錦の着物を着ていないものはいないよ。(みんなが紅葉の錦の着物を着ているように見えるよ)
 
1つのことに優れることさえ難しいのに、3つの分野に渡る才能があるというのは、昔からめったにないことと誉められています。
さすがですね。(*”▽”)

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56・和泉式部


 
夫が和泉守(いずみのもり)だったため、こうよばれます。
藤原道長の娘・一条天皇の中宮・彰子に仕えます。
同僚に紫式部(57番)赤染衛門(59番)などがいます。
 
平安時代の日記文学の代表作、「和泉式部日記」の作者として有名です。
「和泉式部日記」は、恋人だった敦道親王との恋愛を、10カ月に渡って描いた和歌を中心とした日記です。
 
彼女は恋多き女性の代表です。
藤原道貞と結婚しながら(その後に離婚)冷泉天皇の皇子・為尊親王と恋仲になり、為尊親王が1年余りで亡くなったらその弟の敦道親王の妻になります。その後、中宮・彰子に仕えることになり、藤原保昌とも結婚します。( ̄▽ ̄;)
 
藤原道長に「浮かれ女」とあきれられたそうです。(汗)
でも、彼女の才能は認めていたようですよ。
恋愛遍歴も、和歌の才能の肥やしになっていたのしょう。

 

あらざらむ この世のほかの 思ひ出に
今ひとたびの 逢ふこともがな

 

【覚え方】あら今?

私はこの世からいなくなります。だからこの世の思い出として、もう一度あなたに会いたいのよ。

 
この歌は、病気で死の床に就いているときに、愛しい男性に送った歌といわれています。
その後で、回復したともいわれますが・・・。
 
平安時代の代表的歌人であり、和歌の才に恵まれていましたが、この歌は枕詞や掛詞などの技巧を一切使わず、ストレートに心情を表現しています。
言葉のリズムが非常に美しいですね。

 
「百人一首」全首の詳細はこちらから(´▽`)♪↓

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