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秋は、春夏秋冬の中でも、特別な感じがしませんか。
 
私は、日本の四季の中では、断トツで「秋」が好きです。
 
万葉から平安時代の歌詠みたちにも、秋の歌は好まれてたくさん詠まれました。平安時代には、すでに、「秋=物悲しい、寂しい」というイメージが出来上がっていたようです。
 
百人一首の「秋の歌」は16首です。
(1,5,17,22,23,29,32,37,47,69,70,71.79.87,91,94番)
 
そして、「雑歌」など他の歌題で、秋を詠んだ歌が4首あります。
(21,24,26,75番)
 
20首というのは、夏の和歌が少ない(4首)のと対照的ですね。

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秋の方が和歌を詠みたくなるというのは、なんとなく同感ですが、藤原定家が秋の歌が好きだからたくさん選んだのかもしれません。
 
今回は、秋を詠んだ和歌を、百人一首を中心にご紹介します。

 

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秋の和歌

 

 
秋の和歌を作るなら、是非、たくさんたくさん自分の想いを込めた言葉を使ってほしいと思います。
 
テクニックやかっこいい言葉よりも、こんな「秋」を伝えたいという想いが綴られていると素敵だなあと思います。
 
和歌を日常詠みまくっていた時代に、その才能を認められた在原業平ほどの人ならば、かっこいいセンスのよい言葉も、キラキラすると思いますけれど。

 

「紅葉」を詠んだ和歌

 

 
寂しいイメージの「秋」の中でも、「紅葉」は別です。
色鮮やかで美しい明るい雰囲気を、醸し出す題材ですね。
 
美しい自然の美が、目に浮かぶような素晴らしい和歌が多いです。

 

1.ちはやぶる 神代もきかす竜田川 からくれなゐに 水くゝるとは

 
在原業平朝臣・古今集・百人一首17番
 
(訳)遠い昔の神様の時代にも聞いたことがなかったでしょう。このように竜田川の水を唐紅の色にくくり染にする光景なんて
 
非常に有名な在原業平の和歌です。
 
業平が帝の后・二条の后(藤原高子)と以前に恋仲だったのは、これまた有名な話で、「伊勢物語」のエピソードにも取り上げられています。
 
その二条の后に召されて作った屏風歌がこちらの和歌です。
 
紅葉が流れる竜田川を絞り染めの織物になぞらえ、山川の神が水を染色したと見ている奇抜な発想が素敵です。紅葉の色彩が鮮やかに目に浮かぶ業平らしい華麗な和歌ですね。

 

2.あらし吹く み室の山の もみぢばは 竜田の川の 錦なりけり

 
能因法師・後拾遺集・百人一首69番
 
【訳】山風が吹く三室山の美しい紅葉は、龍田川に散ってゆき、川面はまるで豪華な「錦の織物」のようだなあ。
 
「三室」は大和国・現在の奈良県生駒郡にある山のことです。
「嵐」は、今の意味とは少し違って、「山から吹き下ろす強い風」のことを指します。
 
色鮮やかな紅葉が落ち葉となって積もっている様子を、絢爛豪華な「錦の織物」に見立てています。美しい情景描写ですね。

 

3.おく山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の こゑきくときぞ 秋はかなしき

 

 
猿丸大夫・古今集・百人一首5番
 
全く難しい言葉でなく、でも、「恋しさ」と「秋」の季節の哀しさが相まってストレートに心情に響く、すごく好きな歌です。
人ではなく牡鹿というところが、また良いです。
 
和歌の世界では、鹿が鳴く=「牡鹿が妻(雌鹿)を恋しく想って鳴く」と、考えられていました。
 
紅葉と鹿と奥山の自然、美しく儚い情景が想像できますね。

 

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4. 山川に 風のかけたる しがらみは なかれもあへぬ 紅葉なりけり

 
春道列樹・古今集・百人一首32番
 
(訳)山中の小川に風がかけたしがらみは、瀬に溜まって流れることもできない散り紅葉なのだなあ。
 
こちらは、京都から大津への旅の途中、山中で即興で作った歌です。
 
「しがらみ」は人が作る柵のことですが、ここでは「風がかけた」という発想で、美しい紅葉の柵だと表現しているのですね。

 
 

5.このたびは ぬさもとりあへず 手向山 もみぢのにしき 神のまにまに

 
菅家(菅原道真)・古今集・百人一首24番
 
【訳】このたびの旅は、出発の慌ただしさに、御幣の用意もできかねました。代りにこの田向山の錦を織ったような素晴らしい紅葉を、御幣として捧げます。どうぞ神の御心のままにお受けとりください。
 
手向山は、京都から奈良に抜ける奈良山の峠のことです。
当時は旅の途中、峠を通るときに、そこにいる神様(道祖神)に「色とりどりの木綿や錦、紙を細かく切ったもの」=「幣(ぬさ)」をお供えしました。
 
予定外の行程で「幣」を用意していなかったところ、「代わりにこの美しい紅葉の錦を捧げましょう」と機転を利かせて詠んだのです。
 

6.小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば いまひとたびの みゆきまたなむ

 
貞信公(藤原忠平)・拾遺集・百人一首26番
 
【訳】 小倉山の紅葉よ、もしおまえに心があるなら、もう一度行幸があるまで、散るのは待っていてほしいものだなあ。
 
藤原忠平は、菅原道真を陥れた藤原時平の弟です。
でも、穏やかな人柄で、宇多上皇の娘を妻に迎えていたこともあり宇多上皇・菅原道真と懇意でした。左遷され無念の死を遂げた道真公の祟りにあうことなく(時平は狂死しています)、その後、左大臣、関白にまで上り詰めます。
 
この歌は、宇多上皇の大井川行幸にお供したとき、上皇が「天皇(醍醐)の行幸もあってしかるべき所だな」とおっしゃったときに、その心を代弁して詠んだ歌といわれます。
それほど見事な紅葉だったということですね。

 

「菊」を詠んだ和歌

 

 

7.心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花

 
凡河内躬恒・百人一首29番
 
【訳】心のままに折ってみようか、あてずっぽうに。真っ白い初霜にまぎれて見分けがつかくなっている、白い菊の花を・・・。
 
寒い寒い冬の朝、凍てつくような澄んだ空気の中、縁側へでてみると、庭の白菊の上に真っ白の初霜がおりていました。そんな風景を、情感を交えて詠んだ歌です。

 

8.秋の菊 にほふかぎりは かざしてむ 花より先と しらぬわが身を

 
紀貫之・古今集
 
【訳】この菊が美しく咲いている限り(枯れるまで)、冠にして頭に飾ってみようか、花より先に、この世から消えるかもしれない我が身だから。
 
紀貫之の親しい人が急死して、人の運命のはかなさを感じ、詠んだ歌といわれます。

 

「秋の和歌」(No.2)~日本人なら知っておきたい有名な歌
 

「夏の和歌」10首~日本人なら知っておきたい有名な歌
 

「春の和歌」15首~日本人なら知っておきたい有名な歌
 

 

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