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こんにちは、このかです。
 
今回は、不思議な童話作家、宮沢賢治の短編をご紹介します。
 
賢治自身が「花鳥童話」と呼んだ作品群の中に、『まなづるとダァリヤ』という童話があります。
 
名前からして、童話感がすごい出てますよね。
登場するのは、人ではなく「まなづる」(鳥)と「ダリア(ダァリヤ)」(花)です。
 
この作品は、いろいろな解釈ができるので、つくづく感じ方は人によって違うんだなーと思える作品なのです。
 
まず、赤・黄・白の3つのダリアがでてきます。
これは、3つのタイプの女の子をたとえたものと、考えられるのです。
 
宮沢賢治は、妹のトシ(とし子)と仲良しで、女っ気のないイメージがあるので、こんな「女子の心理」を書いた作品もあるんだと思うとおもしろいです。
 
あなたは、どのダリアに感情移入できますか?
 

 

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「まなづるとダァリヤ」のあらすじ

 

 
くだもの畑に、1本の赤いダリア2本の黄色のダリアが、咲いています。
そして、少し離れた沼の岸のほうに、1本の白いダリアが咲いています。
 
赤いダリアは、自分がとても美しいと思っていて、自分の輝きで世界を赤く染めたい(太陽になりたい)と思っています。黄色のダリアは赤いダリアのことを美しいとほめそやし、話を合わせています。
 
女王様タイプの人とその腰ぎんちゃく2人という感じです。
 
一方、少し離れたところに咲く白いダリアは、つつましやかです。
 
赤いダリアは、自分の美しさを自慢にしていて、承認欲求がやたらと強いです。
その日も、黄色いダリアに、自分の美しさを確認していました。
黄色いダリアは、「お立派なこと」と言いました。
 
そこに、空から、1羽のまなづるが近づいてきました。


 

「ピートリリ、ピートリリ。」と鳴いて、その星あかりの下を、まなづるの黒い影がかけて行きました。
「まなづるさん。あたしずゐぶんきれいでせう。」赤いダァリヤが云ひました。
「あゝきれいだよ。赤くってねえ。」
 鳥は向ふの沼の方のくらやみに消えながらそこにつゝましく白く咲いてゐた一本の白いダァリヤに声ひくく叫びました。
「今ばんは。」
 白いダァリヤはつゝましくわらってゐました。
 
出典:『まなづるとダァリヤ』(宮沢賢治)

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赤いダリアは、まなづるにも自分がきれいかどうか確認しますが、まなづるは、飛び去りながら適当に返事をし、白いダリアのもとに行って声をかけます。
 
どうやら、つつましやかな白いダリアに気があるようです。
 
赤いダリアは、次の日もその次の日も、自分の美しさを黄色のダリアに見せつけて、まなづるにも確認します。
 
でも、まなづるは、次の日もその次の日も、適当に相槌をうち、いつもその後で、白いダリアに話しかけて帰っていきます。
 
 
赤いダリアが、「私、きれい?」と魔法の鏡に尋ねる「白雪姫」の継母みたいで、ちょっとうっとおしいです。

 

 
そして、ある日、赤いダリアに「黒いぶちぶち」が出来てしまいます。
赤いダリアは黄色のダリアに、いつもどおり自分の美しさを確認しますが、黄色のダリアはもじもじして、言葉を濁します。
 
赤いダリアは、だんだん不安になっていきます。
 
そこに帽子をかぶった人間が近づいてきて、何かを確認したあと、赤いダリアを摘み取ってしまいました。
 
赤いダリアはぐったりして、黄色のダリアはそれを見て悲しくなって泣き出しました。
 
・・・・・というお話なのですが、なかなか考えさせられます。
「黒いぶちぶち」って老化現象のアレですよね。怖いことを、書いていますよ。

 

あなたは、何色のダリア?

 

 
「赤いダリア」と「白いダリア」が、とても対照的です。
この話の感想で、あなたがどのタイプか、一発でわかりますよ。
 
私は、白いダリアがいいなと思いました。
私がつつましやかだという意味ではありませんよ。
それは、絶対ないです。(←断言!)
 
そうではなくて、大人しく、ひっそり独りで咲いている白いダリアのポジションにいるのが、私は一番心地よいだろうと思うのです。
 
赤いダリアには、絶対になれないし、なりたくありません。
黄色のダリアもです。
 
私は、ちょっと離れたところで、一人ぼんやりマイペースに過ごしている白いダリアがいいのです。

 

白いダリアは腹黒いって???

 

でも、この記事を書くときに、レビューなどをたくさん読んだところ、ある発見をしたのです!
 
それは、一定数の人が、「白いダリアはしたたかで腹黒い」という感想を、持っていたことです。白いダリアのように、普段、清楚っぽく見せている人間は、実は腹黒いのだと断定している人もいました。
 
 
??????
どう深読みしたら、そんな感想になるんだー!?
 
私には理解不能でした。
 
 
それで、考えてみたんですけど、もしかしたら、赤いダリアタイプの人が読むと、白いダリアは、そのように見えるのかもしれません。
 
向上心があり、他者に美しいと認められたい大輪の美しい赤いダリア。
しっかり者の美人タイプで、いつもみんなの中心にいたい華やかな人。
 
赤いダリアは、輝いているのに、なんでまなづるは、なんにもしていない、地味で大人しいだけの白いダリアを気にかけるの?
 
赤いダリアが可哀そう。。。
白いダリアは、かわい子ぶって、いいとこ取りをする腹黒タイプに違いないわ。
 
 
この感想は、かなり怖かったです。
 
白いダリアのあなた。。。
 
普通にひっそりたたずんでいたいだけなのに、何かのはずみでイケメンに気に入られたりすると、妙な攻撃を受けるかもしれませんよ。気をつけましょう。
 
 
私は、白いダリアは、まなづるのことも、そんなに気にしていないと思います。
そりゃあ、話かけられたらちょっとうれしいから、ほほえんだりしますが、自分からアピールしたり、よく見せたいとは思わないでしょう。
 
白いダリアは、ただ、一人でのんびり静かに、咲いていたいだけなんですよ。
多分。。。
 
まなづるは、渡り鳥ですしね。

 
 
 
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