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こんにちは、このかです。
 
今年(2017年)も、「新潮文庫の100冊」が発表されましたー♪
 
また、『魔性の子』が入ってる♡
 
確か去年も思ったんですけど、なんで『魔性の子』なのかなあ。
『十二国記』なら「月の影 影の海」でもいいんじゃないかなと思うのですが、よくこれが選ばれますね。
 
広瀬の孤独感が青春っぽいからかな?
 
『魔性の子』は、『十二国記』の「エピソード0」です。「序章」ですが、時系列的には、『月の影 影の海』(エピソード1)以前の出来事ではなく、だいぶ後半の物語になります。
 
だから、他の作品を読んでからこれを読むほうがよいという意見と、この話から読むほうがよいという意見に分かれるのです。
 
どうなんでしょうね~。
ま、人それぞれだと思いますけど。。。
 
今回は、その辺りの感想も含めた、小野不由美さんの『魔性の子』を、ご紹介します。ネタバレありですよ!

 

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「神隠し」はゾクゾクワクワクの題材なのだ!

 

魔性の子 十二国記 (新潮文庫) [ 小野不由美 ]

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「神隠し」って、すごく魅力的なテーマだと思いませんか?
 
ある日、突然人が消える、そして、そのまま戻らない、または、なぜか数年、数十年後に、ひょっこり戻って来る現象。。。
 
『千と千尋の神隠し』もそうですが、「異世界とつながる」というところが、ちょっと怖くてゾクゾクワクワクするのですよ!
 
「神隠し」と言われる事件のほとんどは、実際には、人さらいです。でも、記録にあるだけでも、不思議な消え方をしている人も、世界中でかなりの数いるのです。
 
トイレに入ったので、戸の外で待っていたら、いつまでたっても出て来なくて、戸を開けるともぬけの殻だった、他に出入り口がないのにどこ行ったー!?というような事件です。
 
「高里(たかさと)」は、本当に異世界に行って戻ってきた子供です。というか、もともと人間ではなく、「異世界の生き物」でした。
その異世界というのが、『十二国記』の世界なのです。
 
この世界と『十二国』とは、「蝕」のときにつながったり、胎果や麒麟は行き来できるルールがあったりして、ぼんやりとつながっています。
 
高里は、もともと異世界の麒麟という生き物なので、この世界で「異質」なのは当然なのでした。

 

簡単なあらすじ

 

 
教育実習のために母校に戻った広瀬は、担当クラスの中で「異質」な生徒の存在に気づきます。彼は、高里という男子生徒でした。
 
彼は周りから孤立していましたが、みんなが彼を虐めているわけではなく、ただ、存在しないものとして扱っていました。
 
その理由は、彼が「祟る」と恐れられているのだということを、広瀬は知ります。
 
それは、彼が子供の頃、「神隠し」に遭ったことに関係するのだと・・・・
 
子供の頃に死にかけて、別の世界を見た体験のある広瀬は、高里に深く共感します。「自分のいる場所はここではない」「何処かへかえりたい」という同じ想いを共有するのです。
 
そしてある事件をきっかけに、高里の周りで次々と人が亡くなり始めます。
また、高里の周りに、ときどき妙な獣の影や白い手が現れるのです。
 
それらは一体何なのか?
 
ストーリーとしては、高里の周りの人たち、家族や学校の生徒たち、最後には一般人もと、どんどん犠牲者が増えるので、ホラー度高めです。
「集団心理」の怖さが、よく表れた作品でもあります。
 
でも、この話は、一方で、哀しい話なのです。
 
なぜかというと、最後に、1人置き去りにされた広瀬の孤独感、自分の居場所はどこなのだろうと哀しむ気持ちを、私たちの多くが共感できるからです。
 
高里が選ばれて自分が選ばれなかったのは、人が持つ醜悪なエゴ、嫉妬心を、自分が持っていたからだと、広瀬が結論付けるところが哀しいです。

 

『魔性の子』は『十二国記』の前に読むべき?

 

 
『魔性の子』は、『十二国記』の世界観を知らなくても楽しめるでしょうか。
 
もちろん、いろんな意見があると思います。
 
この話自体は、『十二国』の世界システムを知らなくても、ほとんど理解できます。ですから、集団心理が絡んだいじめ系ホラー作品として読んでも、十分楽しめると思うのです。
 
私が、初めて読んだときは、もう20年以上前のことなのですが、多分『十二国記』の前に読みました。
 
なんで「多分」なのかというと、それから何度も読み返しているので、どっちが先だったかいまいち記憶が定かでないのです。(汗)
 
でも、初めて読んだときは、「ホラーだーっ!」って感想だったのを覚えているので、これを先に読んだと思うのです。後述しますが、『十二国記』を先に読んでいたら、「延王が来るー♥」という感想になるはずなのですよ、私の場合。。。(≧◇≦)
 
とにかく犠牲者が多い話で、学校が壊滅状態になって、最後には、高波で200人余りが犠牲になります。
 
しかも、最後のほうに、タイカとか麒麟とか延王とか、謎のキーワードが散りばめられ、回収されないまま高里とともに異世界へ~!という終わり方です。
 
最後に、置いてけぼりになった広瀬くんが虚しい・・・。
この作品だけ読むと、広瀬の自分探しはこれからよという青春小説っぽい終わり方です。
 
それも、味わい深いかもしれません。
 
でも、この作品は、
『十二国記』を読んでからもう1回読むと、すごーーーく面白いのですよ!!
 
   「高里=泰麒」
 
というのを知って読むのと知らないで読むのとでは、読後感がぜーんせん違うのです。
 
知らなかったら、本当に、犠牲者多数のホラー作品で、最後なんて、なんだかよくわからない「不思議の国」へ還りましたってなります。
 
 
でも、高里が泰麒だと理解して読むと、彼の存在自体が、なぜ家族や学校で浮きまくっているのか、そこからすごく納得できるのです。
 
泰麒を守ろうとしておかしくなってしまった使令(ゴウランと白汕子)も、怖ろしくはなく哀れです。
 
そして、途中で、泰麒を探しに来たのが、廉麟(レンリン)ー♪
 
そして、そして、最後に連れ戻しにやって来るのが
 
   「延王尚隆~♡」
 
(この話は広瀬目線なので、延王は名前だけの登場ですが、私の押しキャラ。)
 
「延王降臨なら、これぐらいの水の害、アリよねー♪」
っと、感想がエラく変わってくる私なのでした。
 

結論


 
これはあくまで私が思う結論なのですが・・・
 
「新潮の100冊」で選んで『魔性の子』が気になったなら、これから読むのをおススメします。そして、麒麟とか延王とかなんだろうと気になったら『十二国記』を読んでください。そうすると、『黄昏の岸 暁の天』を読んだとき、
 
「うおおお、そうつながるんかい!」と思えて、すごく面白いですよ。
 
『魔性の子』と『黄昏の岸 暁の天』は、同時期の出来事を描いているのです。
『魔性の子』が蓬莱(日本)側の視点から、『黄昏の岸 暁の天』が十二国側の視点から描いた「泰麒の帰還」です。
 
 
『十二国記』は、世界観がしっかり構築されていて、登場人物がそれぞれすごーく魅力的ですし、作品のテーマも複数あって深いです。
 
本当に、おススメ作品なのですよ!!
 
『魔性の子』をサラッと読んで、ああ、ホラーだったなで終わるのはもったいない。是非、『十二国記』のエピソード1『月の影 影の海』に続けてください。
 
ちなみに、「高里=泰麒」が、しっかり登場する戴国が舞台の話は、『風の海 迷宮の岸』(2)と『黄昏の岸 暁の天』(8)です。あと、『華胥の幽夢』(7)の第1話(短編集)に載っています。
 
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