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こんにちは、このかです。
 
最近、日本では、子供の数よりペットの数のほうが多いそうですよ。猫や犬は、日本でも千年以上前から、貴族のペットとして飼われていました。
 
清少納言の『枕草子』に登場する一条天皇は、なかなかしっかりした帝ですが、めちゃくちゃ猫好きな人なのでした!
 
今回は、『枕草子』に書かれた平安貴族の猫と犬について、お伝えします。

 
 

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猫が大好きな一条天皇!

 

 
猫は奈良時代に中国から伝わったとされますが、平安時代は、まだまだ「高級品」でした。「ブランド猫」なので、逃げないように美しい高価な紐をつけて、屋内で大事に飼っていたのです。
 
でも、一条天皇の猫愛は、そんなものではありません。ほんとに飼っていた猫が大好きだったようですよ。
 
一条天皇は、清少納言が仕えた定子の夫なのですが、猫を自分の部屋に自由に出入りさせるため、なんと官位を与えたのです。
 
当時は、一定の「位」の貴族でなければ、天皇のすぐそばに仕えることはできませんでした。
 
それで、つけられた名前が、「命婦(みょうぶ)のおとど」
 
「五位」というかなり上位の官位を授かって、専用の高級女官の乳母(世話係)もやとわれ、大切に育てられたのです。
 
一方、犬も宮中で飼われていましたが、こちらの扱いは「番犬」そのものです。自由に庭を行き来できて、ご飯の残り物などを分けてもらっていました。
 
犬のほうが自由でよさそうとも思いますが、犬と猫との待遇の差がはっきり分かるお話があるのです。
 
一条天皇の「猫のえこひいき」が主な原因のお話、『枕草子』第9段です。

 

犬と猫の扱いの差が歴然?

 

 
ある日、一条天皇のお気に入りの愛猫「命婦(みょうぶ)のおとど」が、縁先で日向ぼっこをして寝そべっていました。
 
それを見た世話係の「馬の乳母」は、「なんてお行儀が悪いの! こちらへいらっしゃい。」と呼びましたが、猫は知らんぷりです。(「命婦のおとど」は女の子なので、当時の礼儀では、御簾の中に入っていなければいけません。)
 
乳母は、半分ふざけて、「翁丸、どこにいるの。命婦のおとどを、こらしめておやりなさい。」と言うと、「翁丸」という名の忠実な犬は、それを本気にして猫に飛びかかりました。
 
 
犬に追われた猫は、驚いて室内に逃げ込みます!
 
 
それを、たまたま一条天皇が見てしまったから大変です!
「翁丸を打ちすえて追放してしまえ。乳母も代えよ!」と、プンプン怒ってしまいました。
 
哀れな「翁丸」は、護衛の男たちに、散々棒で打たれ、追放されてしまったのでした。
 
 
その後、この「翁丸」は、帰巣本能のなせるわざか、戻ってきます。家(宮中)が恋しかったんでしょうね。それからまた打たれるというひと悶着がありましたが、最後には、それまでどおり宮中で飼ってもらえるようになったのでした。
 
 
 
この話、許されてよかったけれど、犬に対してひどい仕打ちですよね。
 
翁丸が、かわいそうだ~~!
「馬の命婦」に命じられて、忠実に従っただけなのに。。。
戻ってきてから、またボコボコにされて、瀕死の重傷を負うのですよ。
(みんな死んだと思っていたぐらい。)
 
清少納言も、定子様も哀れに思い同情しています。
 
一条天皇は、猫が好き過ぎて、理由なんてどうでもよかったのでしょう。「私の猫を追いかけまわすなんて、無礼者ー!」って感じです。
 
 
ところで、清少納言は、猫と犬について、どう思っていたと思いますか。
私は、上品で貴族的なものが好きな彼女は、猫のほうが好きだったんじゃないかなと思っています。
 
他に書かれているものから推測してみましょうか。

 
 

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『枕草子』の中の「猫」

 

 
「猫は上のかぎり黒くてことはみな白き」(原文)
 
「猫は背中全体が黒くて、お腹が白いのが可愛いわ!」
 
白ベースで、背中に大きな黒ブチのある猫ちゃんでしょうか。
それとも、お腹の白い黒猫ちゃんでしょうか。
清少納言は、シックな配色の猫が好みのようです。
 
他には、「なまめかしきもの」の段で、
「優美な物。すのこの高欄のあたりに、とってもかわいい猫が、赤い紐で結ばれ、白い札がついていているのが、重りの緒にじゃれついて引っ張っているのが、優美で素敵だわ。」と、出てきます。
 
また、「むつかしげなるもの」では、「猫の耳のうち」とあります。むさくるしく見えるものが、猫の耳の中だと書いています。
 
ということは、清少納言は、猫をかなり身近でじーっと見る機会があったってことですよ。
 
多分、抱っこしたことやお膝にの上に乗せたことがあるんじゃないでしょうか。そうでなければ、じっくり耳の中まで観察できません。
 
 
それにしても、むさくるしいもので、これを思いつくとは、面白い発想ですね。

 

『枕草子』の中の「犬」

 

 
「翁丸」には優しかった清少納言ですが、一般的な「犬」についてはどう思っていたのでしょう。
 
登場するのは、「すさまじきもの」の段です。
興ざめするものは、昼間に吠える犬と書いています。
番犬は、夜、不審人物が現れたときに吠えなさいよっ、うるさいなって感じです。
 
また、「にくきもの」にも出てきます。
「犬が声を合わせて長々と鳴くのは、不吉な感じで、にくたらしいわ。」
どうも、ワンワン騒がしく吠える犬が、お気に召さないようですね。
これは、すごく納得できます。
 
なんだか、やっぱり犬は、庶民的というか下僕扱いのような感じです。

 

あなたは「犬派」?それとも「猫派」?

 

 
平安時代は、中国から伝わったものが「唐物」と呼ばれ、ブランド力がめっちゃ高かったのでした。
 
当時、貴族が飼っていた猫は、「唐猫」と呼ばれ、高級志向、可愛い物好きの貴族に大人気でした。
 
一条天皇は、特に猫が好きで、飼い猫の「命婦のおとど」が出産した際には、赤ちゃんの幸せを祈る「産養い」というお祝いまでしています。それも、女院、左大臣、右大臣にさせているのです。時の「総理大臣」にですよ。アホですよ。
 
このことを記録した藤原実資は、「変なことが起こる前兆かもしれないよ。」と呆れて皮肉っています。
 
ちなみに、猫は、大切に大切に室内で育てられ、地面に足をつけることは、めったになかったそうですよ。
 
 
一方、犬はというと、その辺で放し飼いです。
 
庭を自由に歩き回り、家の中には入れてもらえないようでした。
明らかに「番犬」としての役目を担っていますが、犬にとっては、楽しい暮らしだったのかもしれません。
 
 
今、日本では、「猫ブーム」が起こっていますね。
 
核家族や一人暮らしが多い現代人の生活には、猫のほうが合っているようです。
犬は、群れ生活をする動物ですし、お散歩が必要なので、世話も多いです。
 
もしかしたら、現代人は、室内飼いの猫と暮らす平安貴族のライフスタイルに、近くなっているのでしょうか・・・?
 
あなたは、どうでしょう?
 
私は、実家にいるとき犬を飼っていたので、犬が大好きです。
でも、犬は本当に家族が大好きなので、愛情が重すぎて、今はもう飼う気力がありません。
 
だから、犬よりも猫よりも、お世話の楽ちんな「うさぎ派」なのでした。
 
でも、どんな動物でも、一人暮らしの人は、よくよく考えて飼ってあげてほしいなと思います。犬猫ほどには賢くないうさぎでも、やっぱり独りぼっちは寂しいようですから。