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こんにちは、このかです。
 
平安古典の『枕草子』は、学校でも必ず習う知名度抜群の古典作品ですね。
 
でも、その作者、清少納言は、有名なのに情報の少ない人なのでした。
 
清少納言は、お仕えしていた定子が亡くなった後は、宮仕えをやめて夫とともに摂津国に下ったといわれていますが、詳細は分かっていません。
 
彼女は父も兄弟も「歌人」という和歌の家に生まれます。
そんな彼女が、なぜ日本文学史上初の「随筆」を書いたのか、今回はそこに焦点を当ててお伝えします。

 

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清原家は華麗なる和歌の名家

 

 
清少納言は、代々、和歌の名人の多い家に生まれました。
「清原家」は、宮中で和歌詠みの家系として、知られていたのです。
 
彼女の曾祖父の清原深養父は、『古今集』の代表的歌人です。
 
そして、父親の清原元輔は「梨壺の五人」に選ばれ、『後撰集』という勅撰和歌集の編纂をしています。「梨壺」というのは、天皇直属の和歌所のことです。天皇直属の5人の中の1人だったということです。すごいです。
また、平安時代の和歌のうまい人ベスト36「三十六歌仙」の1人にも名を連ねています。
 
ちなみに深養父・元輔・清少納言、3人とも、「百人一首の歌人」です。
(順に「百人一首」36番、42番、62番)
 
さすが、和歌の家系ですね。
 
 
父や曾祖父が和歌の名人で、本人も学識豊かなので、清少納言が宮仕えをしたときには、さぞかし周囲の人々は上手に和歌を詠む人だと思ったでしょう。
 
そして、もしも実際にうまかったら、彼女の性格からすると、自信満々でいろんな和歌を披露したんじゃないかなと思います。
 
 
でも、そうはならなかったのです。
 
 
なぜなら、彼女は実は、和歌にすごい苦手意識を持っていたのでした。
 
とはいえ、「百人一首」にも選ばれているので、得意なものに比べて苦手という感じだったのでしょう。

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日本初の随筆は、劣等感から生まれた!

 

 
清少納言は、和歌の家系に生まれながら、和歌を詠むのが苦手でした。
 
でも、彼女は文才のある女性でした。ただ「31音」という制限された文字で自分の想いを表すよりも、自由にたくさんの文字で、のびのび表現したい人だったのです。
 
そして、随筆家としての才能がありました。
彼女の性格が、すごく随筆に向いていたのだと思います。
 
清少納言は、興味や関心の幅がすごく広くて、かなりのミーハーなのです。
そして、毒舌で言いたい放題だなーと思わせる一方で、自分の恋の記述になると、一気にかわいい女子になったりします。
 
引き込まれるだけでなく、そういう人間臭さが出ている文章に、読み手は共感を持つのでしょう。
 
また、鋭い観察眼で人と違った見方ができたので、読者に「へ~っ!?」と意外性を持たせるのも上手です。
 
千年の時を超えて、同じ女性として共感できるというのは、すごく不思議な感じがします。現代人に近い感覚を持っているところが、面白いのです。
 
例えば、
「素敵な女性は、知性のある人! 働く女性は、素晴らしいと思うわ。」
なんて、言ってます。今どきのキャリア女子みたいですね。
 
 
 
和歌が苦手という劣等感があったからこそ、彼女は「随筆」という新しい分野を開拓できたのです。
 
もしも、清少納言が、和歌が得意な女性だったら、「随筆」ではなく「和歌」であふれる想いを伝えたでしょう。
 
あるとき、定子の兄・伊周(これちか)がサロンにやってきて、女房たちに和歌を詠むよう命じたとき、清少納言は、「亡き父に顔向けできないから勘弁してください。」と、定子に頼んで詠まずに済んだというエピソードがあります。(『枕草子』第95段)
 
そんなにうまくない自分が詠めば、和歌の家名を汚すと思っての事でした。
 
 
随筆『枕草子』は、そんな清少納言の劣等感から生まれた新境地だったのです。


 

おわりに

 

 
ここまでお読くださり、ありがとうございます。
 
清少納言は、同時代の小説家・紫式部と比較されて、ひたすら明るくドライ、賢いけれどギャルっぽくて自分の意見をずけずけ言う女性というイメージがあります。
 
確かに、そういう軽やかさは、彼女の本質の一部だと思います。
 
しかし、一方で、彼女はマナーはきちんと守るべきという考えを持ち、定子とのやりとりの記述から、非常に細やかな心配りのできた女性だとわかります。
 
そして、言葉遣いの乱れにはとても厳しく、省略後や若者言葉などはとんでもない、美しい言葉を使うことはすごく大切と考えていました。
 
『枕草子』の言葉は、軽くても、けっして下品な言葉遣いではないのです。
 
いろんなテーマが書かれているので、一部を読んだだけでは全体を知ることはできません。
 
興味を持たれた方は、「春はあけぼの」意外の段を、是非、読んでみてくださいね。

 

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