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こんにちは、このかです。
 
ハンサムなプレイボーイを主人公にした漫画や小説って、よくありますよね。
 
勉強(漢詩)はいまいちだけど、スポーツマンで、めっちゃかっこいい人。そして、芸術的なセンスが抜群な人です!
でも、出生にちょっと問題があって、大出世はできません。
 
そして、基本いい人なのに、計画性がなく情熱的、ハチャメチャで危なっかしい。
 
私の在原業平のイメージって、そんな感じなのですが、そんな彼がモデルと言われるゴシップ的古典作品があります。
 
 
それが『伊勢物語』です!
 
この物語の主人公は「男」としか書かれていませんが、「これ、アノ人のことよね~」と、当時の人ならだれもがピンと来る話が多かったのでしょう。きっと平安貴族たちは、この物語を、軽い読み物として楽しんでいたのだと思います。
 
 
なのに現代では、教科書に小難しい解説付きで載っているんですよ。
 
ああ、おもしろくない。。。。
 
今回は、『伊勢物語』を読む前に知っておくと楽しくなる?主人公のモデル・在原業平と、その想い人・二条の后(=藤原高子〔たかいこ〕)の恋の話をご紹介します。

 

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平安の伝説的プレイボーイ

 

 
在原業平は、政治に関心があまりなく、とにかく色恋に生きた遊び人というイメージのある人です。しかし、政界でのしあがることに関しては、出生に問題があるので、あきらめていたようにも思えます。
 
業平の父は「薬子の変」(810年)の当事者に近かった阿保親王で、いろいろあって失脚してしまいます。そのため、業平は皇族の血筋ですが「在原」という氏を与えられ、臣下に下りました。
 
血統は、平城天皇(父方)の孫で桓武天皇(母方)の曽孫という、すごく高貴な血筋なんですよ。
 
政治的な成功の道は断たれても、彼には「歌」というものすごい武器がありました。
 
業平の和歌は、華麗で情熱的、まさに彼の本質そのものという作風です。
六歌仙の筆頭、三十六歌仙の一人でもあり、「古今集」に30首、「勅撰和歌集」に86首もの和歌が選ばれています。
 
そしてなんといっても、彼は顔が良く(?)、スポーツ万能の武人だったので、モッテモテでした。
 
もしも当時、紫式部が宮廷にいたら、気後れして引きそうですが、清少納言なら「このチャラ男が~」とか言いながらも、好きそうですね。和歌がうまくて顔がいいから。。(←「顔よし」が好き)
 
和歌の達人ということは、言葉が巧みなので、相当な口説き上手です。また、お金持ちの平安パーリーピーポーなので、いろんな宴に顔を出しては遊び倒しています。
 
自由奔放でフェロモン満載のイケメンが、これまたイケイケ平安美女に魅かれるのは必然!だったのでしょうか。
 
彼は、次の天皇のお后候補である高貴な女性・藤原高子(のちの二条の后)と恋に落ちます。
 
その恋の結末が、『伊勢物語』の第六段「芥川」なのです。

 

在原業平は『伊勢物語』主人公のモデル

 

 
『伊勢物語』は、作者不詳の歌物語。内容は、男女の様々な交渉(たま~に主従の絆なども)を描いたもので、基本一話完結の短編集です。
 
そして、「昔 男ありけり。」の冒頭の「男」=「在原業平」と思われる話が多いのでした。
 
なんといっても、狭い狭い平安貴族社会です。
「男」と言葉を濁しても、ちょっとしたエピソードが出ると「ああ、アノ人のことかも!」とすぐにわかるわけです。
 
この「男」、すべての段に登場しますが、もう「光源氏」も真っ青な節操のなさです。
 
とにかく、いろんな女性といろんな恋をしており「色恋だけで生きとんのかい!」とツッコミたくなるのですが、実は、当時は「子孫を残す能力が高い=権力のあるイケてる男性」と考えられていた節があるのです。
 
現代の私たちが読んだら、「とんでもないチャラ男だよ、サイテ~!」となりますが、当時の人々の受け取り方は、ちょっと違うのですね。
 
ちなみに伝説では、3733人の女性と関係をもったといわれます。( ゚Д゚)
 
どういう数え方なんだかよくわかりませんが、もうこの際、誤差はどうでもいいです。ここまで突き抜けると、もうどっかの教祖様か?とさえ思えてしまふ。。。
 
『伊勢物語』の話は、全てが業平の実話ではなく、使われている和歌も、全てが彼の作というわけではありません。
 
ただ、最も有名な「芥川」の段は、間違いなく在原業平がモデルなのでした。

 

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『伊勢物語』の「芥川」は駆け落ち物語

 

 

『伊勢物語』「芥川」要約
 
ある男が、ある高貴な姫君を妻にしたいと考えました。何年もの間求婚し続けましたが、想いが遂げられなかったため、あろうことか、ある夜、その姫を盗み出したのです。
 
男が芥川という川のほとりに姫を連れて行ったところ、彼女は草の上におりていた露を見て「(光っている)あれは何。」と、男に尋ねました。
夜も更けてしまい、雷がすごく激しく鳴って、雨もひどく降ったので、男は荒れ果てた蔵の奥に、姫を押し入れました。そして、弓・胡簶を背負って戸口に座り、早く夜も明けてほしいと思いながら座っていたところ、鬼がたちまち姫を一口に食べてしまったのでした! 
 
姫は「あれえ!」と言いましたが、雷が鳴る大きな音でかき消され、その声を男は聞くことができなかったのでした。

 
この話の男は在原業平で、盗み出した姫は藤原高子(のちに清和天皇の女御になる)だと考えられています。
 
業平は、東宮に輿入れ予定の姫サマを盗み出すという、とんでもないことをやらかしたわけで、もちろん、高子の兄がすぐに連れ戻しに来ます。
「鬼の正体」は、その兄たちなのでした。
 
時の最高権力者の娘に手を出したわけですから、業平はしばらく京の都を離れることになり、これが『伊勢物語』の「東下り」のモチーフとなっていきます。
 
「芥川」の事件から約1年後、2人の思い出の場所を訪れて業平が詠んだのが、下の有名な和歌でした。
 
 
月やあらぬ 春や昔の 春ならぬ 我が身一つは もとの身にして
 
この和歌、すごく切ないのです。
業平の歌の中でも、私がとっても好きなものの1つです。
 
意味は、「この月は以前の月ではないのか、春は去年の春と同じ春ではないのか、私一人だけが以前のまま取り残され、あたりのものはみな変わってしまった」というもの。。。
 
じーーんときませんか?(こないかな。。。)
 
古今集に載せられている和歌で、技巧的にはいまいちだとか、難しいことも言われてる歌ですが、そんなことはどうでもいいんです。
 
業平の歌は、それこそ紀貫之が評したとおり「心余りて 言葉たらず」で十分。。。
 
「心情があり余るほど伝わるなら十分!」と思う私なのでした。

その後の2人は、やっぱり仲良し?

 

 
実際の彼らは、その後もなんだかんだでお付き合いがあります。
 
業平は蔵人頭(くろうどのとう)に出世し、高子の生んだ皇子(=陽成帝)の幼少時代の家庭教師に選ばれています。選んだのは、おそらく高子でしょう。高子は、『伊勢物語』の「鬼役」の兄・藤原基経と仲が悪かったようです。
 
彼女は大人しいお姫様ではなくて、自由奔放な恋多き美女です。
私の中で『源氏物語』の「朧月夜」と印象が重なります。
 
でも、元愛人に自分の息子の世話を頼むとは、なかなかやりおる。。。
このゆるさがおもしろいんですよ、平安時代は。
 
 
ちはやぶる 神代(かみよ)もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは
 
古今集(百人一首17番)に選ばれたこの有名な和歌も、高子の前で、屏風絵を見て詠んだものなのでした。
 
彼らのことが、ゆる~くよく分かる作品があります。
 
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コレ、漫画ですよ♪
 
6つの歌物語、恋愛ものが収録されています。
その第1話が「在原業平と藤原高子の恋」なのでした。
 
人間関係、ばっちりわかるよ~♪