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こんにちは、このかです。
 
今回は、和物・古典文学・着物と、私の好きなものが揃ったテーマで、久々にテンション上がったラノベを紹介します。
 
あらすじを、かなり最後のほうまで書いているので、ネタバレありですよ。
 
 

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主人公は着物好き女子高生

 

 
舞台は京都の下鴨。
 
主人公の鹿乃(かの)は高校生で、旧華族の娘です。
両親を早くに亡くして、兄の良鷹(よしたか)とその友人で准教授をしている下宿人の慧(けい)と3人で、古びた洋館で暮らしています。
 
鹿乃と慧は、幼なじみのようなほのぼのした関係で、鹿乃の言葉遣いが柔らかイ関西弁で、ふんわりした彼女のキャラクターと合っていて、可愛らしいです。
 
アンティーク着物を愛する鹿乃は、祖母の遺した着物がたーくさんあるので、休日にそれらを着て過ごしています。鹿乃ちゃんとは、おばあちゃんっこで着物好きという共通点があって、話す京ことばが柔らかくて、とても親しみを感じました。私は、着物を着ることはまずありませんけどね。
 
その鹿乃ちゃんの着物の着こなしが、素晴らしいのですよ。
 
着物を休日に着ている彼女は、その日のコーディネートに「テーマ」を決めているのです。浅葱の縞御召(水色のストライプなので雨)にカエル柄の帯を合わせて『梅雨』とかね。
 
すっごくオシャレじゃないですか?
それを、女子高生がさらりとやっているというのが、素敵すぎます!
 
そして、慧くんも、なかなかかっこいい青年で、文学准教授なので、うんちくをたくさん教えてくれます。こういう内省的な男子、好みだわ。
物語の中の「古典」の説明とか、彼のおかげでよく分かりましたよ。
 
鹿乃ちゃんと慧くんは、コバルト文庫の作品のような、恋愛未満の幼なじみの関係です。(今のところ)
 
リアルな大人の恋愛物とか、ドロドロした少女漫画の恋愛とかが、うっとうしくて苦手な私には、ちょうどよいゆるさなのでした。
 
ミステリーのもととなる着物は、鹿乃の家の「いわくつきの蔵」の中にある持ち主の「想い」を残した不思議な着物たちです。
 
それでは、短編3作、ネタバレありでご紹介します。

 

(1)「アリスと紫式部」

 

 
 第1話は『鏡の国のアリス』『源氏物語』が謎解きの鍵を握ります。
 
アリスと源氏物語、すごい組み合わせですね。おもしろいです。
 
『源氏物語』は、葵上と六条御息所の車争いのエピソードを取り上げています。
この話、「正妻と愛妾の争い」という、ちょっと怖いものですね。
 
この着物の持ち主・敏子さんは、子爵家の令嬢でした。母が亡くなって、すぐに父が後妻を迎えたのを許せず、彼女は女中あがりの継母を、自分がいじめられていると嘘を重ねて、追い出してしまったのでした。
 
当時は、年頃の娘だったので、仕方がないのかもしれませんが、怖いです。
 
『鏡の国のアリス』が、どうやって絡むんだろうと、わからなかったのですが、鏡の中と同じように「あべこべ」にするという見事な発想でしたよ。
 
『源氏物語』の葵祭には、例の二人の他、もう一組の車の話が出てくるんです。
それは、光源氏が源典侍(光源氏と馴染みのおばあちゃん)に車の場所を譲ってもらったという話です。
 
鹿乃は、そちらの源氏車の「源典侍のイメージ」に帯や小物をコーディネートして、見事に明るい話へ変えたのでした。

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「慧ちゃんとわたし、同じもん見とっても、違うもん見とるやろうねえ。おもしろいわ。」
 

(出典元・下鴨アンティーク)

この鹿乃の言葉は、大切だなあと思いました。
 
十人十色、人それぞれいろんな見方があって、いろんな考え方をしています。
自分との違いを否定せずに、受け入れられるように心がけようと思いましたよ。
 

(2)「牡丹と薔薇のソネット」

 

 
牡丹と薔薇といえば、東洋と西洋の美を象徴する花ですね。
それに『ソネット』がどう関係するのかな?と、ワクワクするお話でした。
 
蔵の中にある長襦袢から若い女性のすすり泣きの声が聞こえるという不思議な現象が!
 
長襦袢というのは、着物の中に、もう一枚着るうっすい着物みたいなもんです。表に着るものではないので、遊び心で派手な色柄のを着る人もいたようです。
 
泣き声が聞こえる長襦袢の柄は、なんと『牡丹灯籠』に出てくる女の幽霊でした。怖いです。
 
鹿乃が、よく確かめると、その長襦袢の襟には12枚の紙が縫い込まれていて、そこには謎の数字が書かれていました。
 
実は、その数字(番号)が題名の「ソネット」の番号だったのです。
シェークスピアの十四行詩(ソネット)ですよ。
ソネットは「愛の詩」、こっそり隠されたラブレターだったわけです。
 
この長襦袢には、身分違いの悲恋が隠されていたのです。
 
分かっていながらも、理性で割り切れないのが「初恋」なのでしょう。
 
「牡丹」の別名は「富貴(花)」
持ち主の名前は、富貴子さんといいます。
また、シェークスピアのソネットには「薔薇」が多く使われていることで知られます。
 
他の誰にも知られなかった二人の想いを、富貴子さんはこの長襦袢の中に秘めていたんですね。
 
きっと、宝石のように美しい想い出だったのだと思います。

 
 

(3)「星月夜」

 

 
第3話は、蔵の中にある、鹿乃の祖母・芙二子さんのたった1枚の着物を探すところから始まります。
 
ヒントは、鹿乃のおばあちゃんの17歳のときの日記。
 
それは、おばあちゃんとおじいちゃんのなれそめから結婚、心を通い合わせるまでをつづった日記でした。
 
若い頃のおばあちゃんが、かわいらしいです。
お嬢様育ちで勝気な芙二子さんと、親の決めた結婚相手の健次郎さんは、結局はじめから両想いだったんですよね。
 
でも、芙二子さんは、なかなか素直になれないツンデレ娘。
健次郎さんの対応がお見事でした。素敵な男性です。
 
二人が仲直りしたとき、夜空を眺めた芙二子さんの言葉に返した一言が、さすがです。

「ふしぎや。さっき見たときには、星なんてすこしも目に入らんかったのに。こんなにきれいやったなんて」
 
「星の夜の深きあはれ、ですね」

 
出典元:下鴨アンティーク

返しの言葉は、建礼門院右京太夫という人の詠んだ和歌です。
 
月をこそ ながめなれしか 星の夜の 深きあはれを こよひ知りぬる
 
右京大夫(うきょうのだいぶ)は、夜空を見上げれば、「月の和歌」ばっか詠んでいた平安時代の人の中で、「星」を詠んだ歌人です。
 
ロマンチックな雰囲気の物語でした。

 

おわりに


 
この作品は、ライトノベルにしては、古典や着物のうんちく話が、しっかり出てくるので、それが好きかどうかで、好みが分かれそうですね。
 
ミステリー好きさんには、いまいちかもしれないけれど、私は、久々にとっても面白い作品だなーと思いました。
 
シリーズ化されています。おススメです。(*^^*)

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