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京都の宇治と伏見は、山紫水明の自然美が感じられる、とても素敵な場所です。京都の中心部より混雑していないので、私は大好きなのです。
 
今回は、松尾芭蕉や与謝蕪村などが詠んだ、その「宇治」と「伏見」の俳句を紹介します。

 

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「宇治」を読んだ俳句

 

 
宇治は、平安時代、貴族たちの別荘地でした。
 
源氏物語の「宇治十帖」の舞台でもあり、藤原頼通の作ったこの世の極楽浄土・平等院鳳凰堂で、よく知られています。
 
対岸には、宇治神社宇治上神社など、多くの神社仏閣があって、とっても趣のある所ですよ。
 
淀川の支流の宇治川では、藤原道長が舟遊びをした記録が残っています。
江戸時代なると、舟遊びは一層盛んになり、遊覧船でにぎわいました。
 
平安時代に書かれた「蜻蛉日記」に、宇治川の鵜飼のことが記されています。
このころから、宇治では、鵜飼が行われていたのですね。
 
でも、鵜飼に関する史料は、鎌倉時代以降、見られなくなります。
せっかくの風習だったということで、鵜飼は昭和に入って復活しました。
今でも、7月から9月まで、鵜飼の見物ができますよ。
 
また、のような川魚が生息し、主に巨椋池で漁が行われていましたが、宇治川でもしていたことが、絵葉書に残っています。
 

 山吹や 宇治の焙炉の 匂ふ時

 

 
松尾芭蕉  
 
【季語】 山吹 春
 
この句は、「猿蓑(さるみの)」に集録されています。
(「猿蓑」は、向井去来と野沢凡兆が編集した、蕉門の発句・連句集。)
 
ちょうど、宇治の茶どころで焙炉の匂いがたけなわになる頃、各地では山吹の花が真っ盛りです。
 
山吹は、香りのしない花です。
なので、ほっとするお茶の香りだけが、純粋に漂ってくるのですね。
 
こちらの本は、芭蕉の俳句の解説はもちろんのこと、門人や近親者への手紙も紹介しています。芭蕉の想いが読み取れるので、おススメです。↓↓↓

 

 鮎落て たき火 ゆかしき 宇治の里

 
与謝蕪村
 
【季語】 鮎 夏
 
宇治を流れる宇治川では、夏になるとが釣れました。
釣りの句でもありますね。

 

 宇治山に 残る紅葉や 網代守る

 
高浜虚子
 
【季語】 網代(あじろ) 冬
 
「網代(あじろ)」というのは、湖や川に柴や竹を並べ立てて魚を誘導し、簀(す)にあげて捕る漁法のことです。
 
古くからある漁法で、宇治川の氷魚(ひお・鮎の稚魚)漁が有名です。冬の季語として、よく使われます。
 
宇治を流れる宇治川は、鮎漁で知られていました。
鮎や鮎の稚魚の氷魚(ひお)との組み合わせも多いですよ。

 

「伏見」を詠んだ俳句

 

 
宇治が「お茶」なら、伏見は「お酒」で知られています。
 
今は、伏見稲荷大社で有名ですが、この地の歴史は古く、「日本書記」にも「山城国俯見村」として記されています。
 
「伏見の清酒」の歴史は、とっても古いのです。
なんと、日本に稲作が伝わった弥生時代に始まったそうですよ。
 
その古代からの酒造りの伝統が花開くのは、豊臣秀吉が伏見城を建てた安土桃山時代に入ってからのことです。
 
その後、江戸時代には、水陸交通の要衝として、ますます栄え、酒造家も急増します。そして、明治時代には、「天下の酒どころ」といわれるまでになりました。
 
「月桂冠大倉記念館」「黄桜 伏水蔵(ふしみぐら)」などの蔵元では、「きき酒」や見学ができます。「黄桜」は現代的なビルで、工場見学です。レストランもありますよ。
 
日本酒好きの方は、特に楽しいと思いますので、おススメします。
 
そして、もう一つ。
 
伏見は「桃の名所」です。
伏見を桃山と呼ぶのは、そこからきています。
 
安土桃山時代の「桃山」は、この「伏見」のことなのです。
 
ですから、伏見の俳句には、「桃」を詠んだものが、たくさんあります。

 
 

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 照り返す 伏見のかたや 桃の花

 
 

炭 太祇
 
【季語】 桃 春
 
炭太祇(たんたいぎ)は、京都の祇園島原に住んでいた俳人です。
与謝蕪村と同時代人で、交流があったといわれます。

 

 我が衣に 伏見の桃の 雫せよ

 

 
松尾芭蕉
 
【季語】 桃 春
 
この句は、芭蕉の有名な紀行文「野ざらし紀行」の一句です。
 
松尾芭蕉が西岸寺の住職だった任口(にんこう)上人を訪ねたときに、詠んだ俳句です。
 
久しぶりに上人にあった喜びと上人の人柄を、「桃の雫」と詠む味わいが素晴らしいと思います。
 
この俳句は、伏見でも有名になり、清酒の名前になっています。

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みじか夜や 伏見の戸ぼそ 淀の窓

 

 
与謝蕪村
 
【季語】 みじか夜 夏
 
こちらは、「蕪村全句集」に集録されている俳句です。
 
「戸ぼそ」は、回転させて開け閉めする扉のことです。
 
短い夜が終わり、伏見では戸を開け始め、淀堤まで来ると窓を開け放ち、もう人が往来していると詠んでいます。

 

おわりに


宇治といえば平等院鳳凰堂、伏見といえば伏見稲荷大社という地名が出ます。
 
ですから、俳句を作るとき、あえてそれ以外の地名を入れるのも一興ではないでしょうか。
 
また、宇治は、新茶・桜・つつじ・鮎・紫陽花・紅葉・伏見は桃・桜という、この地らしい季語があります。
 
地名を入れるなら、
 
宇治・宇治川・宇治橋・宇治神社・三室戸寺
平等院・鳳凰堂・茶どころ・伏見・稲荷・醍醐寺・・・

 
宇治にある三室戸寺(みむろとじ)は、「あじさい寺」とも呼ばれるあじさいの名所です。また、つつじの名所でもあります。
 
あじさいは夏の季語、つつじは春(晩春)の季語です。

 
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